いろいろな月

https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/B7EEA4CECBFEA4C1B7E7A4B12FA4A4A4EDA4A4A4EDA4CAB7EEA4BFA4C1.html 【いろいろな月】 より

 

古くから月は満ち欠けに応じてさまざまな呼ばれ方をしていました。

万葉集・源氏物語など、日本でもさまざまな和歌や文学に登場しています*1 

さく・新月 (New Moon) †

太陽と月の黄経差が0°になること、あるいはその時刻が朔です。

新月といった場合には、朔の瞬間だけでなくその日に出る月のことを指していたり、イスラム教のように初めて見える細い月を指していたりするので注意が必要です。

朔の瞬間には月は太陽と同じ方向にあり、暗い側が地球を向いているので基本的には月は見えません。

このため、三日月のような細い月から遡って定めます。ここから「朔」という名前になりました。

月と太陽が近づくと日食が起こります。ただし、わずかとはいえ月の公転軌道面は傾いていますので、朔のたびに日食になるわけではありません。

正朔とは暦法のことを指します。

三日月 (Crescent Moon) †

もとは陰暦3日の月。月が出ると書いて朏みかづき、あるいは哉生明さいせいめい、若月と呼ぶこともあります。フランス語ではご存知クロワッサンです。

夕方西の空に見えます。

実際の三日月はかなり細い形をしていますが、日常用語としてはもう少し太いものも含めて三日月形と呼ぶことが多いです。

イスラム暦では三日月状の細い月を見たところからひと月が始まりますし、三日月のシンボルはイスラム教国の国旗にもよく使われています。

春の三日月と秋の三日月

宵月 †

宵(日暮から夜中までの時間帯)に見える月。

秋の季語で、太陰太陽暦8月の2日から上弦ごろまでの月を指す場合が多いようです。

秋の夕方では黄道は寝ているので、三日月は立っていて、上弦の月は低いところにいます。

上弦じょうげん・下弦かげん (First Quarter / Last Quarter / Quadrature) †

太陽と月の黄経差が90°・270°になること、あるいはその時刻が上弦・下弦です。半月はんげつ、弦月げんげつ、弓張月ゆみはりづきとも呼ばれます。

月の半分が明るく輝くように見えます。

上弦・下弦の区別は沈むときに弦 (まっすぐな部分) が上にあるか下にあるかによる、という人もいますが、単に陰暦で上旬の弦月、下旬の弦月程度の区別という人もいます。

十三夜 †

陰暦13日の月。

陰暦9月13日の月を指す場合が多いです。

望ぼう・もち・満月 (Full Moon) †

太陽と月の黄経差が180°になること、あるいはその時刻が望です。

満月・望月といった場合は、望の瞬間だけでなくその日に見える月のことを指していたり、十五夜の月を指していたりするので注意が必要です。

月は太陽と反対方向にあり、明るい側が地球を向いているので基本的には丸い月が見えます。

月が黄道面に近いと月食が起こります。ただし、わずかとはいえ月の公転軌道面は傾いていますので、満月のたびに月食になるわけではありません。

Syzygy = New Moon + Full Moon

十五夜 †

陰暦15日の月。

陰暦8月15日=中秋の名月を指す場合が多いです。

ストロベリームーンなど (Strawberry Moon, Harvest Moon, Pink Moon, Worm Moon, ...) †

アメリカの農事暦では満月にさまざまな名前がつけられています (Farmer's Almanac [外部サイト])。

これはアメリカ先住民が満月に名前をつけて季節を捉えていたことにちなんでいます。さらに、その満月を含む1か月の呼称にも用いられていたようです。

たとえば、イチゴの実る季節である6月はストロベリームーン、とうもろこし収穫の季節である9月はコーンムーンまたはハーベストムーンのような名前がついています。

なお、高度が低くて赤みがかって見えるから、ストロベリームーンと呼ぶわけではありません。高緯度地方でなければそこまで低くはなりませんし、どの季節のどの月も地平線近くでは赤みがかかって見えます。

また、ピンクムーンというのは4月の満月のことで、このころに咲くシバザクラ (ハナツメクサ、moss pink/phlox) に由来します。

ブルームーン (Blue Moon) †

ブルームーンは直訳すれば青い月ということになりますが、

実際に青い月が見られるわけではありません。

#ごくまれに本当に青く見えるケースもあるようですが。

ありえない・滅多にないという意味で"once in a blue moon"のように使われたり、エルビス・プレスリーの"Blue Moon"のように孤独の象徴として使われたりします。

現在では「ひと月に満月が2回ある場合の、2回目の満月」を指すことが多くなっています。

厳密にはSKY&TELESCOPEという雑誌の記事から広まった誤解なのだそうですが、こちらのほうがポピュラーとなりました (詳しくは、SKY&TELESCOPE [外部サイト])。

もともとはアメリカの農事暦"Maine Farmers' Almanac"で使われていた名称で、「ひとつの季節に満月が4回ある場合の、3回目の満月」を指していたそうです。

ブルームーンの頻度

もとの定義ではうるう月と同様に2-3年に1回、より正確には19年で7回という頻度で現れます。

現在の定義では1月と3月に満月が2回で2月には満月がないケースもあるため、より多く現れます。

十六夜いざよい †

陰暦16日の月。既望きぼう、哉生魄さいせいはくとも呼ばれます。

「いざよう」はためらう・躊躇するの意で、十五夜よりも少し遅い時間に、ためらいがちに出てくる月。

ALMA望遠鏡の、日本が担当した16台の電波望遠鏡群の愛称にもなっています。

立待月、居待月、寝待月・臥待月、更待月ふけまちづき †

それぞれ、陰暦十七夜、十八夜、十九夜、二十夜の月です。

月の出を待ちわびる習慣で、最初は立って待ちますが、翌日は座って、翌々日は寝て、更に翌日は夜も更けるころまで待ちます。

中秋の名月のころは月待ちしやすい時期になります。

江戸時代には二十六夜待ちといった行事もあったそうです (国立国会図書館 [外部サイト])。

民間信仰に由来する行事のようですが、二十六夜の月が出るのは日付が変わってからと遅く、単に飲み食いして騒ぐ機会になっていたようです。

有明月 †

夜明けになっても沈まずに残っている月です。十六夜以降の月。

月の色 †

月の表面には白っぽい部分と黒っぽい部分があり、古くからうさぎやカニなどの形になぞらえられています。

白っぽい部分は高地と呼ばれ、斜長岩などからなっています。

黒っぽい部分は海と呼ばれ、玄武岩などからなっています。

大気による散乱の影響で、月はその高度に応じて色が変化していきます。