http://www.ganshodo.co.jp/mag/moon/files/m_a101.html 【月の潮汐力(潮の満ち干と潮流)】より
月が及ぼす力として最も直接的なものが潮汐力で「潮の干満(潮の満ち干)」を引き起こします。
潮汐力は、主に月の引力と遠心力によって引き起こされるので、ちょうど月が南中にきている場所とその反対側にもっとも大きく働きます。もちろん潮汐力は太陽の影響も受けますが、距離が遠いため月の半分程度しかありません(図下)。
地球の自転は6時間ごとに90度回転するので、干潮と満潮はほぼ6時間ごとに繰り返し、満月や新月の時、太陽と月の潮汐力が重なり、普段よりも干満の差が大きくなり大潮となります。上弦や下弦(半月)の時は太陽と月の潮汐力が相殺され干満差の少ない小潮となります。
しかし、実際の潮の満ち干は海水と海底の摩擦や海水の慣性、地形的な要素も加わり南中から数時間程度遅れるようです(図2)。従って大雑把ですが、月の出時刻前後1~2時間頃が満潮になり、南中時刻の前後が干潮と考えることもできます。
干満差は地形によって大きな影響を受け、日本最大の干満差を持つ有明海で約4.5mにもなり、瀬戸内海も有名で場所によっては3.5mを越えます。東京湾では約1.8m、特に春分・秋分ころ、干満差はさらに大きくなり東京湾で2mを、有明海では6mを超えるほどになります。
日本海や地中海では干満差が小さく、大潮の時でもせいぜい十数cm程度です。これは日本海も地中海も内湾的で海水が閉じこめられた状態にあるため水位変化がおきにくいためといわれています。
また、潮汐力はその潮の満ち干に伴って海水の流れにも大きな影響を及ぼします。これを潮流といい、潮汐に合わせて周期的に変化します。特に湾口や水道などでは複雑な流れが起き急流となります。
一方向に徐々に速度が増し、最強流に達した後、今度は徐々に速度が落ちてきて、流れが停止する時間(潮止まり)があります。次に潮流は逆の方向に流れ始め(転流)、流速を増して最強流に達した後、流速を減少して再び流れが停止し、これを12時間かけて周期的に繰り返します。潮の干満や潮流は同じ原理で働きますから、当然潮流の激しさは大潮の時期に最大となります。特に鳴門海峡の渦潮は有名です。
(図1)
(図2)
潮汐力の神秘(潮流編)
■鳴門海峡の渦潮(うずしお)
潮汐力は潮流を発生させます。潮流が織りなす自然の神秘といえば鳴門海峡の渦潮にが有名です。潮流が最も激しくなる大潮の時をねらっていけば、普段より大きな渦潮を観ることができます。
■来島海峡
日本三大潮流といわれ、船舶の曳航の難所といえば、「一に来島。二に鳴門、三と下って馬関瀬戸」と唄われるように来島海峡は時にはその流れは10ノットにもおよび、潮の流れを読まなければ難破もしかねません。来島海峡で思い出すのが、来島海峡を征し戦国時代に覇を誇った村上水軍です。いずれにしても潮汐力の神秘はつきません。
※ノットとは1時間に1海里進む速さのことをいいます。メートル法に直せば約1.85km/hです。
1海里とは緯度1分(フン)の長さでメートル法では1,852m。
●鳴門の渦潮を調べるなら・・・
・鳴門観光汽船 http://www.uzusio.com/
鳴門観光汽船が運営するサイトで潮見表や渦潮がなぜ起こるのかなど情報満載
・渦の道 http://www.uzunomichi.jp/index.php
渦潮の見どころなど写真満載
●来島海峡を調べるなら・・・
・瀬戸内しまなみ海道振興協議会 http://www.go-shimanami.jp/
潮汐力の神秘(潮の満ち干)
■各地の干満差
●世界最大といわれるカナダのファンディー湾の干満差はなんと15mを超えることもあるというから驚きです。
その他にも西オーストラリアのブルーム、朝鮮半島の仁川の10mも有名です。
●西オーストラリアのブルームでは、月の道ならぬ「月への階段」が見られることで有名です。この幻想的な月への階段はなぜ見られるかというと、その潮汐力の大きさです。満月が昇る頃から、徐々に引き潮となり遠浅の沖深く潮が引いていく際のさざ波が月の反射光となって階段状になって見えるのだそうです。
●モン・サン=ミシェル(Mont Saint-Michel)のサン・マロ湾はヨーロッパでも潮の干満の差が最も激しい所として有名です。モン・サン=ミシェルとはフランス西海岸、サン・マロ湾上に浮かぶ小島に築かれた修道院で、カトリックの巡礼地のひとつで、「西洋の驚異」と称され、1979年「モンサンミシェルとその湾」としてユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されました。ノルマンディー地方南部・ブルターニュとの境に近いここでは、潮の干満差は15メートル以上あったため、湾の南東部に位置する、修道院が建てられた、岩でできた小島はかつては満ち潮の時には海に浮かび、干き潮の時には自然に現れる陸橋で陸と繋ったそうです。島の入口には潮の干満時刻を示した表示があり、満潮時には浜に降りないようにと記されているそうです。最も大きい潮が押し寄せるのはもちろん大潮の時期で、干き潮により沖合い18kmまで引いた潮が、猛烈な速度で押し寄せていたといいます。このため多くの巡礼者が潮に飲まれて命を落としたといい、「モン・サン=ミシェルに行くなら、遺書を置いて行け」という言い伝えがあったといわれています。
しかし、1877年に対岸との間に地続きの道路が作られ、潮の干満に関係なく島へと渡れるようになったが、これによって潮流がせき止められ、100年間で2mもの砂が堆積し、急速な陸地化が島の周囲で進行し、島の間際まで潮がくることは滅多になくなりました。かつての姿を取り戻すべく2009年には地続きの道路が取り壊され、2010年には代替となる新たな橋がかけられることが計画されています。
●厳島神社は潮の満ち干で風景ががらりと変わってしまいますが(左写真)、もちろん大潮の時期を選んでいけばその変化の著しさをさらに楽しむことができるでしょう。
●♪海が割れるのよ~♪ で始まる天童よしみの「珍島物語」で日本でも有名になった珍島では、特に旧暦三月~四月の大潮の頃、引き潮の時、本島と沖の小島、芽島(モド)との間の海上に道が出現するという韓国版「モーゼの奇跡」で有名な現象が起こります。
●有明海の干満差 日本でも有明海は、潮の干満差が最も大きいことで有名ですが、諫早湾の河口堰によって、干満差が小さくなったといわれています。潮流が弱くなり、干潟が消滅し、多くの生き物が死滅しました。その他にも赤潮の発生などで、かつて「宝の海」といわれた有明海の漁獲量は激減しました。しかし、御用学者は「科学的に根拠がない」として、これらは切り捨てられ、諫早湾の河口堰の計画は進行していますが、科学的に証明されていないということは逆も真で、「諫早湾の河口堰が潮の流れや生態系に影響がない」ということも証明されたとは言い難いと言うこともできるでしょう。自然の強さ・弱さに対して、私たちはもっと謙虚になるべきでしょう。
潮汐力の神秘(タイダル・ボア)
月の潮汐力による潮の満ち干は、時として川の逆流を引き起こします。これをタイダル・ボア(潮汐波)と呼ばれています。
タイダル・ボアとは、大潮の日、満潮時に向かって潮が河川に進入し、逆流することです。
これは津波と同じ原理で、波の進行速度が深さの平方根に比例するために、浅い河川に上げ潮が入ると前がつかえ、上げ潮が持っている圧倒的な水量が押し寄せ高い波となって逆流していくのです。
特に潮汐力が最大となる春分や秋分前後の大潮の頃、河口がラッパ上になっていて、河にはいると水深が浅く川幅が狭くなるような河では大きなタイダル・ボアが発生します。アマゾン川のポロロッカ、中国の銭塘江(せんとうこう)の海嘯(かいしょう)が有名です。銭塘江のボアは高さ3m以上に達っし、河口から100km以上も遡上するといわれています。
この他にも、干満差世界一位のカナダ・ファンディー湾の河川やイギリスのセバーン川でも観られます。
中国の浙江省・銭塘江(せんとうこう)の海嘯(かいしょう)は仲秋節(仲秋の名月=旧暦八月十五日)と絡めて観潮するツアーがあります。その光景はまさに奇観。
写真は銭塘江の海嘯:中国杭州市旅游委員会(政府観光局)より
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