「キレる」、「ムカつく」は脳の栄養不足 新型栄養失調が招く社会現象

https://anti-agingfood.com/403/   より

いつもは静かでニコニコしているのに、些細なことで突然大声を出したり、暴れたりする子どもの行動が問題になっています。

かなり以前から「キレる子ども」には共通して「きちんとした食事ができていない」という問題があると、指摘されてきました。ただし、親の生活態度や貧困といった「環境」によるものと考えられていました。しかし近年、環境だけでなく「食べものそのもの」が脳に直接的に影響を与えていることが科学的なメカニズムとして分かってきました。つまり、たとえ食以外の家庭環境に恵まれていても、「何を食べるか」によって、キレやすい子どもになってしまう可能性があるということです。ショッキングな研究結果の一部を紹介します。

キレる子どもたちの暴走は「劣悪な食」と相関関係に

子どもの情動をつかさどる「脳」に、どんな変化が生じているのか。最新の研究の1つとして、福山私立女子短期大学教授の鈴木雅子氏による公開講演「子どもの心と体の健康を考える」でのお話に非常に興味深い調査があったので紹介しましょう。

調査は1986年に行われ、広島県福山市、尾道市の中学1年~3年生の男子615人、女子554人の計1169を対象に、男女をそれぞれ5つのグループに分け、 「食生活」、「健康」、「生活」、「いじめ」の4項目についてアンケートを取り、「食生活」については、1)最も良い、2)良い、3)普通、4)悪い、 5)最も悪い、という5段階の採点をしました。

その結果、「食生活」について、野菜や海藻の摂取が少なく、ジュース類やスナック菓子、インスタント食品を多く摂り、朝食を食べていないという「4」悪い」「5」最も悪い」という状況にあった子どもは、情動が不安定で、根気がなく、常にイライラして、カッとしやすいという傾向も見られたとのこと。中でも、5)の男子については、「腹が立つ」が96%、「イライラする」が92%、「すぐにカッとする」が88%という比率で、「食」内容が劣悪になるほど、「キレる」、「ムカつく」傾向にあることが明らかであったと報告されています。

「脳の栄養失調状態」招く2つの悪習慣

こうした相関関係から、鈴木氏は「劣悪な食で“脳”が栄養不良状態になり、その結果、理性や判断力など情動が不安定になっているのでは?」と仮説を立てました。身体はたんぱく質も糖質も全てエネルギーにすることができるが、脳のエネルギーはブドウ糖だけ。つまり、朝食抜きなどでブドウ糖が長時間補給されない状況になることで、脳が一時的な飢餓状態になるのではないかというわけです。実際、1919年の戦時中(第一次世界大戦)に、食べ物が十分でなかった5歳半〜14歳までの6,500人の子ども達を対象に行った調査では、普通の食事を摂った子どもに比べ、栄養不良児は伸長や体重が劣り、集中力、記憶力、注意力など知力が低いことが明らかになっているといいます。

しかし、飽食の時代にあって、そんな「ブドウ糖不足」だけでキレやすくなるのでしょうか。加えて他にも様々な理由がありそうです。

1)朝食抜き&急激な高血糖

朝食を抜いて脳がブドウ糖に対する飢餓状態にある段階で、菓子パンなどの高糖質のものを食べると急激に血糖値が上がり、インシュリンが大量に分泌され、結果として逆に血糖値が一気に下がり過ぎ、頭がぼーっとしたり、イライラしたり、不安な気持ちになります。これを何度も繰り返すといわゆる「糖質中毒」の状態になってしまうというわけです。また、糖質代謝酵素の補酵素として使われるビタミンB1不足が進み、それによってもイライラや意気消沈、集中力の低下など情動障害が生じてきます。

2)コンビニ食などの新型栄養失調

特に遅い時間まで塾に行っていたり、学校の帰りに買い食いしたり。そんな時に利用されるコンビニ食やファーストフード、加工食品などは、ビタミン・ミネラルがほぼ失われ、糖質や脂質が多くハイカロリーなことがほとんど。ビタミン・ミネラルの不足により、糖質や脂質をエネルギーに変えたり、体の調子を整えたりする働きが低下し、体はもちろん脳にも大きな影響をもたらすと考えられています。

3)食品添加物など化学物質

コンビニ食やファーストフード、加工食品などは、有用な栄養素が少ないだけでなく、化学添加物などの化学物質も多く含まれています。中でも、保存料「安息香酸」、発色剤「亜硝酸塩」、酸化防止剤「BHA」、化学調味料「MSG」の子どもの情動(脳)に対する影響は高いといわれています。できるだけ避けるのが賢明と言えるでしょう。(それぞれの添加物の危険性については、別のページにてご紹介していますので、こちらをぜひご覧ください。

なお、「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」については、米国では1965年という早い時期から、食品添加物との関係性が指摘されています。その代表的なものが、小児科医ベンジャミン・F・ファインゴールド博士によるサリチル酸のADHDへの関与です。実際に子どもたちの食生活から食品添加物を完全に除去するという実験により、ADHDの5〜7割に回復が見られたと報告しています。つまり、ADHDの約4割以上が「食品中の化学物質によるもの」かもしれないのです。

サリチル酸以外にも、化学物質の関与を指摘する声は多くあります。一説には、化学物質が過剰に取り込まれると活性酸素が異常発生し、脳機能に損傷、変調を来たすというものも。また、基本的に脳は血液脳関門によって異物を排除するなど、身体の他の部分に比べて損傷を受けにくくなっていると言われていますが、化学物質には、たとえばグルタミンなど、通過したり、脳関門を開いたりするものも多くあります。グルタミン自体は決して害のあるものではありませんが、大量であったり、他の化学物質が複合的に関与したりすることで、脳や神経に何らかの悪影響を及ぼすと考えられています。こうした因果関係は必ずしも科学的に証明されていないものもあります。しかしながら相関関係を見れば、「少量なら問題ない」とされているものが、結果的に食生活によっては大量摂取しており、影響を与えていることは明らかです。無意識では知らず知らずのうちに影響を受けていることを鑑み、排除することを意識しながら食生活を組み立てることが大切です。