体(呼吸)と祈り

http://sadhana.jp/karada/1100.html  より

【4】聖イグナチオの祈りの第三の方法

 呼吸を活かして、定型の祈祷文を祈る方法です。 4呼吸が1セットになります。

 ここでは、「主の祈り(注1)」を祈ることにしましょう。

 内的に、一つの文節を1呼吸に乗せて、ゆっくり唱えたあと、続く3呼吸の間は、「天に」の内容について、じっくり味わい続けます。

 ・・・・そこは、しみも汚れもなく輝いて、私たちのまことの父でおられる神様が、おられるところ。聖人方が招かれて、幸せに満ちて睦みあっておられる・・・・

 次は「おられる」と唱えたあと、3呼吸で、「おられる」の内容を味わいます。

 ・・・・私が行き着くことを待っていてくださる。たしかにそこにおられて、私のことを、しっかり配慮してくださっている・・・・

 このように、一つの文節ごとに、4呼吸を充てて祈りを進めてゆきます。

 

 実際に祈るときには、「天使祝詞(注2)」「アニマ・クリスティ(注3)」「愛の賛歌(注4)」(コリントの信徒への手紙Ⅰ)、「平和の祈り(注5)」(アシジの聖フランシスコ)などを用いると良いでしょう。

(注1) 主の祈り

 天におられるわたしたちの父よ、み名が聖とされますように。

 み国が来ますように。みこころが天に行われるとおり地にも行われますように。

 わたしたちの日ごとの糧を今日も お与えください。

 わたしたちの罪をおゆるしください。わたしたちも人をゆるします。

 わたしたちを誘惑におちいらせず、悪からお救いください。

(注2) 天使祝詞(聖母マリアへの祈り)

 恵みあふれる聖マリア、主はあなたとともにおられます。

 主はあなたを選び、祝福し、あなたの子イエスも祝福されました。

 神の母聖マリア、罪深いわたしたちのために、

 今も、死を迎えるときも祈ってください。

(注3) アニマ・クリスティ(キリストの魂)・・・ロヨラの聖イグナチオの祈り

 キリストの魂、わたしを聖化し

 キリストの聖体、わたしを救い

 キリストの御血、わたしを酔わせ、

 キリストの脇腹から流れ出た水、わたしを清め

 キリストの受難、わたしを強めてください

 いつくしみ深いイエスよ

 わたしの祈りを聴き入れてください

 あなたの傷のうちにわたしをつつみ

 あなたから離れることのないようにしてください

 悪魔のわなからわたしを守り、臨終の時にわたしを招き

 みもとに引き寄せてください

 すべての聖人とともに、いつまでもあなたを

 ほめたたえることができますように

(注4) 愛の賛歌(コリントの信徒への手紙Ⅰ13章4~6節)

 愛は忍耐強い。愛は情け深い。ねたまない。愛は自慢せず、高ぶらない。

 礼を失せず、自分の利益を求めず、いらだたず、恨みを抱かない。

 不義を喜ばず、真実を喜ぶ。

 すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてに耐える。・・・・

(注5) 平和の祈り -アシジの聖フランシスコの祈り

 主よ、私をあなたの平和の道具として お使いください

 憎しみのあるところに 愛を

 いさかいのあるところに ゆるしを

 分裂のあるところに 一致を

 疑惑のあるところに 信仰を

 誤っているところに 真理を

 絶望のあるところに 希望を

 闇のあるところに 光を

 悲しみのあるところに 喜びを もたらすものとしてください

 慰められるよりは 慰めることを

 理解されるよりは 理解することを

 愛されるよりは 愛することを

 わたしが、求めますように

 私たちは与えるから受け

 ゆるすから ゆるされ

 自分を捨てて死に、永遠の命を いただくのですから

【5】イエスの御名(みな)の祈り(その1)

  「イエスの御名(みな)の祈り」は、イエス様のお名前を一呼吸(ひとこきゅう)で一回唱える単純な祈り方です。

 まず、「イエス」「イエズス」「主イエス」のいずれかの呼称を選びます。一つだけに限定し、呼び方が途中で変らないようにします。 

 次に、その御名前を呼吸にどのように乗せるかを、決めます。3つのパターンがありますので、実際に試してから決めるとよいでしょう。

(A)吸うときに、お名前を一度唱え、吐くときは空白にします。

(B)吸うときは空白にし、吐くときにお名前を一度唱えます。

(C)吸うときにお名前の前半を、吐くときに後半を唱えます。

 決めたパターンで何度も何度も繰り返します。あたかも「自分の息吹を神の息吹と混ぜ合わせ」『その呼吸にイエスの御名をはりつける』ように(注1引用)。

 無味乾燥な感じに負けないように、復活されたイエス様が自分の脇にいてくださることを想像しながら唱えると良いでしょう。イエス様の記憶がすべてを包んでくれることをめざします。すべてです。祈りの中も、日常出会う場面も、そして自分の行いも、すべて。

 「イエスの御名(みな)の祈り」について、考察が行われ邦訳されている書籍を紹介します。

『イエズスのみ名の祈り――その歴史と実践――』

(東方無名の修道者著・古谷功訳 1983年 あかし書房)

『イエスの祈り』(注1)

(東方キリスト教叢書3 オリヴィエ・クレマン、ジャック・セール著・宮本久雄、大森正樹訳 1995年 新世社 )

【6】イエスの御名の祈りの応用形――お姿を思い描きながら、感謝の心などを届ける――

 前の項目の「イエスの御名の祈り」は、自分の命の営みにイエス様の臨在が溶け合うようにと、静かさのうちに微妙な奥深さへと向かうものです。

 その祈り方よりも、ずっと入り易い仕方で、それを応用することができます。

 それは、想像力を借りながら、次のように、具体的な信心の思いを込めてする方法です。

 つまり、まず、自分の前に今イエス様がおられるお姿を想像します。明瞭にくっきりと思い描けなくても構いません。漠然と思い描く程度でも結構です。

 このイエス様に向かって、次のように具体的な信心の思いをお届けします。(どのような信心の思いをお届けすることもできるわけですが、)次のひとまとまりの組み合わせは、お勧めです。つまり、(1)感謝の心(2)謝罪の心(3)要望の心(4)信頼の心、です。「感謝の心」は、いうまでもなく、ふだんイエス様から私たちが受けたお恵み・ご好意への感謝です。「謝罪の心」は、私の至らなさや罪深さを詫びる心、「要望の心」は、イエス様にお助けいただきたいと願っているその願いの心です。そして、「信頼の心」は、イエス様にお委ねしようという心です。

 さあ、祈りに入りましょう。まず、感謝の心になってしばらく、イエスのお名前を、想像しているイエス様に向けて届けます。しばらくそれを続けると、次には、謝罪の心になってお届けしましょう。そして、引き続き、要望の心でも、また信頼の心でも、イエス様のお名前をお届けしましょう。それぞれの思いについて、2分間ずつを充てましょう。

 以上のプロセスは、さらに、次のような素敵な結び方につなげることができます。それは、次のようです。つまり、信頼の心で唱えることが終わったら、次の2分間は、唱えることを止め、何もせず、ただ安らぎの中に身を置くことをします。そして、最後に、今度は自分を呼んでくださるイエス様の声を聴くことに努めます。イエス様はたしかに私に呼びかけてくださっていますが、そもそも、どのような呼び方で呼んでくださっているでしょうか? イエス様が呼んでくださる声に耳を傾けて、祈りを結びましょう。

コズミックホリステック医療・教育企画