大切なあの人のメンタルに成長の種をまく「めんたね」 より
無意識コミュニケーションは操作的なのか?
こう言うと、必ず、「暗示を用いて人を動かすなんて操作的で良くないことだ」と感じる人が出ます。
でも、実際はロジャース派カウンセリングの傾聴スタイルの中にも、コーチングの質問の中にも、暗示的な働きかけは潜んでいるのです。
たとえば、ロジャース派の傾聴における暗示的な働きかけは、言葉ではなく微妙な非言語的メッセージを使います。
クライアントが前向きな発言をしたときには、カウンセラーもパッと表情を明るくして、
大きくうなずきます。
一方、クライアントが非建設的なことを言っている時には、取り立ててそこは強調せず、
普通に話を聞き続けます。
クライアントはこのカウンセラーの反応の違いを無意識的に読み取り、カウンセラーの期待に応えようと、
自然と前向きな発言が多くなっていきます。
これは、まさに無意識コミュニケーションの一つです。
コーチングにおける質問でも同じことが言えます。
「あなたは五年以内にどのような目標を達成したいですか?」
コーチがクライアントに対してこのような質問をしたとき、ここには暗示が組み込まれています。
人は質問をされると反射的に質問に対する答えを考えますが、この質問に答えようとするならば、「あなたには達成したい目標がある」という質問の背景にある暗黙の前提を受け入れなければなりません。
もしも達成したい目標など持っていない人であったとしても、質問に答えようとしたときには、自分が目標を持っているという前提を受け入れ、興味の方向は、「目標があるかないか?」ではなく、「どんな目標を持っているか?」にすり替わります。
このように、質問をすれば、たいていはそこに前提が含まれ、その前提は暗示として機能するのです。
コーチングがクライアントにプラスに作用する原理というのはまさにこの暗示的メッセージによるものだと言えるでしょう。
多くのカウンセラーやコーチはもうすでに無意識コミュニケーションを使っていて、クライアントの無意識にしっかりと働きかけて影響を及ぼしています。
ただ、その自覚がないために、「全ての答えはクライアントの中にある」と迷わず言えるわけです。
でも、どうせ、無意識コミュニケーションを使うのであれば、無自覚に垂れ流してしまうよりも、意識的にきちんとコントロールをして、クライアントの役に立つように使ったらどうでしょうか?
よく切れる包丁は美味しい刺身を作り出しますし、その一方で、人を刺すのにも使えてしまいます。
強力な技術ほど、使う人間の倫理が問われます。だからこそ、めんたねの無意識コミュニケーションは人のために使いたいという希望がある人たちにこそ伝えていきたいのです。
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