上咽頭がん(じょういんとうがん)

https://ganjoho.jp/public/cancer/nasopharynx/index.html  【上咽頭がん(じょういんとうがん)】より

1.上咽頭について

咽頭は、鼻の奥から食道までの飲食物と空気が通る部位であり、筋肉と粘膜でできた、約13cmの長さの管(くだ)です。咽頭は上からそれぞれ、上咽頭、中咽頭、下咽頭の3つの部位に分かれています(図1)。

上咽頭のある場所は、鼻腔(びくう)の奥で、口蓋垂(こうがいすい)と口蓋扁桃(こうがいへんとう)の後ろの上のほうです。脳を支えている頭蓋骨(ずがいこつ)の底にあたる頭蓋底(とうがいてい)のすぐ下で、左右には耳につながる穴があります。

上咽頭は、鼻からの呼吸で空気の通り道になります。

なお、鼻、口、あご、のど、耳などからなる部位を頭頸部(とうけいぶ)といいます。

図1 頭頸部の構造図

2.上咽頭がんとは

上咽頭にできたがんを上咽頭がんといい、上咽頭がんは頭頸部がんの1つです。

咽頭の周りには多くのリンパ節があるため、頸部(首)のリンパ節に転移しやすいという特徴があります。がんの発見時に頸部リンパ節への転移が見つかることも珍しくありません。

3.症状

上咽頭がんは、初期のうちは自覚症状がみられないことがあります。上咽頭がんの発見時に最も多くみられる症状は、頸部リンパ節に転移したことによる首のしこりです。

その他には、鼻の症状(鼻づまり、鼻血、鼻水に血が混ざるなど)、耳の症状(耳がつまった感じ、聞こえにくいなど)、脳神経の症状(目が見えにくくなる、二重に見えるなど)があります。

これらのような気になる症状がある場合には、早めに耳鼻咽喉科を受診し、早期発見につなげましょう。

4.患者数(がん統計)

上咽頭がんは、日本全国で1年間に約800人が診断されます。上咽頭がんと診断される人は男性に多い傾向にあります1)。

5.発生要因

上咽頭がんの発生する要因として、EBウイルス(エプスタインバールウイルス)が関連するといわれています。また、上咽頭がんの発生頻度は日本ではまれですが、中国南部や東南アジアでは高く、これらの地域で伝統的に食べられている塩蔵魚の摂取のほか、飲酒や喫煙が、上咽頭がんになる可能性を高めると考えられています。

6.予防と検診

1)予防

日本人を対象とした研究結果では、がん予防には禁煙、節度のある飲酒、バランスの良い食事、身体活動、適正な体形、感染予防が効果的といわれています。

2)検診

がん検診の目的は、がんを早期発見し、適切な治療を行うことで、がんによる死亡を減少させることです。わが国では、厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年一部改正)」で検診方法が定められています。

しかし、上咽頭がんについては、現在、指針として定められている検診はありません。気になる症状がある場合には、耳鼻咽喉科を早期に受診することをお勧めします。人間ドックなど任意で検診を受ける場合には、検診のメリットとデメリットを理解した上で受けましょう。

なお、検診は、症状がない健康な人を対象に行われるものです。がんの診断や治療が終わった後の検査は、ここで言う検診とは違います。