https://ameblo.jp/cornerstone1289/entry-11924018635.html 【ナンバンギセル】 より
(前略)
跼み見るものに南蛮煙管かな 山崎ひさを
照り翳り南蛮ぎせるありにけり 加藤楸邨
一触即発南蛮煙管咲きました 栗林千津
うむ、なるほどというほどの句はない。
青弓社の『全季俳句歳時記』(2013)には、「思草(おもいぐさ)」を主季語に、「南蛮煙管」を副題にして 思い草胃なし男に返り咲く 佐藤鬼房 この草のその名愛しき思草 辻田克己 潮騒に今日を占う思草 北さとりの3句掲載。
鬼房の句はさすがである。ナンバンギセルが寄生植物であることを踏まえている。
『俳諧歳時記』も「思草」を主季語にしている。例句は挙げていない。
ただし「実作注意」の欄で、「おもひぐさ」の別名を有するものが、桜、芝、紫苑など多数あるので、心すべし」とある。
よって上の句、鬼房の句以外はナンバンギセル以外のものを詠っているかもしれない。
(しかし、「返り花」的現象をナンバンギセルが示すのかどうかまで考慮すると鬼房の句の思い草も原作品公表時期まで詮索せねばならない)
ナンバンギセルはススキ、サトウキビ、茗荷に寄生するということである。
ということは我が家でも見ることが出来るかも。
茗荷は涼しくなる9月になっても若干は芽をだすようである。つい先日、一つ見つけて食卓に登場。菜彩茶屋(美作の道の駅)でもひと袋100円位で売っていた。
(後略)
https://umenoyumiko.hatenablog.com/entry/2018/10/04/232717 【【プレバト】思い草家族に向かう帰路の線】より
第5位 30点 泉谷しげる 思い草家族に向かう帰路の線 【季語】思い草:仲秋
ナンバンギセルという花で、8月頃に咲きます。この花は草むらの様な所のイネやススキの根元に寄生します。キセルは煙管の事で、下を向いた煙管の火皿の様な紫色の花です。
思い草という名を持ち俯いている様に咲く姿に片思いや失恋の感情を託したりしますが、寄生先を枯らす事もあるからか些か不穏な季語として使われたり、コミカルに描かれたりと、ユニークな季語だなと感じます。
ナンバンギセルという花はイネ科の植物の根元に寄生すると書きました。イネ科の植物はすうっと伸びるものか多いです。
その足元に背丈20センチ程度、花は3〜4センチ程でしょうか、ナンバンギセルはひっそりと咲きます。泉谷さんの句の添削に関して、この花の咲いている様子が重要になってきますのでご留意ください。
【添削】
家族に向かう帰路の車窓の秋の草(原句:思い草家族に向かう帰路の線)
この句の『家族に向かう帰路』は詩的な表現で添削対象ではありません。
添削対象となる点は二つで、(帰路の)線という表現が線路であると伝わりきっていない点と、思い草という季語に齟齬がある点です。
線に関しては、車窓とする事で映像にできます。
添削の難しさを感じたのは季語の思い草に関してです。私はこの句が一物仕立てなのかな?取り合わせかな?と迷いました。
放送を見る限り、泉谷さんは取り合わせとして詠んでいる様でした。でもそれはナンバンギセルの姿かたちというよりは思い草という名前のニュアンスを借りたんだと思います。しかし、この花に思い草と名前がついたのは、ひっそりと下を向いている姿からなので、家族を思うという気持ちに似合うのかという違和感が生じます。というのも、和歌の時代から片思いや報われぬ恋と代名詞として使われていたからです。
一例ですが、新古今和歌集に『野辺見れば尾花がもとの思ひ草かれゆく程になりぞしにける』という和歌があります。これは上の句を万葉集から取った歌で、だんだん冬になって行き、恋も枯れて行くと詠んだものです。
ここで夏井先生の添削に戻りますが先生のコメントで、車窓から見ているととったのでという趣旨の台詞がありました。つまり、先生はこの句を一物仕立てとしてとったという事です。そして一物仕立てとして読んだ時にナンバンギセルでは車窓から見えないので、季語として齟齬が生まれてしまいます。そこで秋の草となったのですね。
【まとめ】
俳句を作る時には一物仕立てなのか取り合わせなのかをしっかり決める事が重要です。
取り合わせを二物衝突とも言います。これらの呼ばれ方から、違う二つの事柄なのにピタッとはまる面白みや、逆に二つをぶつけ合わせた時にどんな火花が散るのかという妙味を楽しむという事が感じられます。
なので取り合わせの場合は、二つの事柄が近すぎてはいけません。一物仕立ての場合は齟齬があってはいけません。今回、泉谷さんが選ばれた季語はどっちつかずになってしまっていたので、読み手を迷わせてしまった問題点がありました。
自作の推敲の際は一物か二物かをしっかり決め、一物仕立ての場合は一句に齟齬がないか、二物の場合はマッチなのかクラッシュなのかという視点を持って見てみてください。
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