https://gardenstory.jp/plants/45986 【サルスベリ(百日紅)に注目しているあなたへ! これを読んで栽培に挑戦しよう】 より
開花期間が長く、初夏から秋まで咲き続けるサルスベリは、夏の庭のシンボルツリーにぴったりです。花色にはピンク、赤、白などがあり、花弁にやや縮れが入った可愛らしい花が集まり、房状になって華やかに咲き誇ります。そんな魅力あふれるサルスベリとは、どんな花木なのか、どのように育てればいいのか、ピンとこない方も多いのではないでしょうか。この記事では、サルスベリの魅力や特性、品種群、育て方について、詳しく解説していきます。
サルスベリは、ミソハギ科サルスベリ属の落葉高木で、原産地は中国南部。自然樹高で7mに達しますが、剪定によって樹高をコントロールできます。シンボルツリーにするなら3〜4mでキープするとよいでしょう。成長の速度はやや遅いほうです。
サルスベリの名前の由来は、幹肌の特徴からつけられました。成長するとツルツルとしたなめらかな質感で、サルが登ろうとしても手や足がかからずにすべってしまいそう、という理由から。「サルがすべる木」というわけで、「サルスベリ」なのです。漢字で書く「百日紅」は、開花期が長いことからつけられた名前です。初夏から秋までほぼ3カ月間、つまり100日間も咲き続けることにちなんでいます。
サルスベリの一年のライフサイクルは、以下の通りです。
ほかの樹種に比べて芽吹くのが遅く、4月下旬頃から新芽が動き出します。新芽が出揃ったら6月頃から花芽を形成し始め、7〜9月に開花。11月頃から葉を落とし始め、12〜4月中旬は休眠期となります。
近年の日本の酷暑の中にあっても、サルスベリは暑さに負けずに長期間、次から次へと開花し続けます。暑さを嫌って花数が少なくなる時期に、華やかにガーデンを彩ってくれるので、重宝する樹種です。花は、一つひとつは小さくて縮れていますが、これらがまとまって房状になり、豪華な咲き姿を見せてくれます。花色は赤、ピンク、白、ミックス咲きなどがあり、大変華やか。白花を選べば、夏の庭に涼しい雰囲気をもたらす効果がありそうです。
サルスベリの花言葉
サルスベリの花言葉は、「雄弁」「愛嬌」「不用意」など。真夏も暑さに弱ることなく、枝先に花を密生させて堂々とした咲き姿を見せることから、「雄弁」という言葉が与えられたそうです。「愛嬌」や「不用意」は、「猿が滑るほどツルツルした幹肌だから」という名前の由来から生まれた花言葉とされています。
一般に出回っているサルスベリの多くの品種は中高木性ですが、中には樹高を低く抑えた矮性品種もありいます。中高木性の品種は庭植えに、矮性種は鉢植えに利用するとよいでしょう。矮性の品種には、枝が細かく分かれてこんもりとした樹形になり、ピンクの花を咲かせる‘ポコモック’、赤い花を咲かせる‘チカレッド’などがあります。矮性種は、樹形や性質が個性的なので、「サルスベリなのに、こんなに小さいの⁉」と目新しい驚きをもたらすポイントになりそうです。
中高木性でよく出回っているのは、濃い赤花をダイナミックに咲かせる‘カントリーレッド’、濃いピンクの花がたっぷり咲く‘タスカローラ’、愛らしいピンクの‘マスコギー’、白い花が涼しげに咲く‘ナチェ’、白と赤がミックスして咲く‘ペパーミントレース’などです。かつてのサルスベリはうどんこ病にかかりやすい特性がありましたが、近年は病気に強い品種も多く生まれ、育てやすくなっています。特に前述の‘タスカローラ’はうどんこ病に耐性のある品種。成長が早すぎず、やや細長い樹形になるので、庭に植えた時のバランスがいいのも長所です。
そして、最近ガーデナーの間で注目を集めているのが、アメリカで生まれた新品種、‘ブラックパール’です。なんと黒葉で、花が咲かない時期でもカラーリーフとして楽しめるんです! 花色は赤、ピンク、白から選べます。特に白花と黒葉のコントラストは美しく、ガーデンにインパクトを与える存在になりそう。樹高はやや低めで、コンパクトに維持しやすい特性があります。
サルスベリの育て方
サルスベリは夏の暑さに強く、放任してもよく育つので初心者でも育てやすい樹種です。ポイントは乾燥が苦手なので、真夏の乾燥期に水やりをして補うことと、毎年剪定をして樹形が乱れないようにコントロールすることです。ここでは、植え付けから管理のポイントまで、詳しく解説していきます。
日当たり、風通しのよい環境を好みます。乾燥がやや苦手で、適度に水はけ・水もちのよい土壌づくりをすることが大切です。極端に乾燥する場所では、枝が伸び切らずに花が小さくなってしまうことがあります。乾燥対策として、根元をバークチップなどで覆うマルンチグを施しておくとよいでしょう。
耐寒性は弱いほうで、地植えして冬越しができるのは、おおよそ関東北部まで。東北以北では地植えして育成するのは難しいので、矮性種(樹高が低く抑えられた改良品種)を鉢栽培にして夏に開花を楽しみ、冬は室内で管理するのも一案です。
サルスベリの土作り
【庭植え】
まず一年を通して日当たり、風通しのよい場所を選びましょう。植え付けの2〜3週間前に直径、深さともに50cm程度の穴を掘ります。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきましょう。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
樹木用にブレンドされた培養土を利用すると手軽です。
植え付け
サルスベリの植え付け
サルスベリの植え付け適期は4〜5月か9月頃です。
【庭植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘って植え付けます。しっかりと根づくまでは、支柱を立てて誘引し、倒伏を防ぐとよいでしょう。最後にたっぷりと水を与えます。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、樹高が高くならない矮性品種を選び、8〜10号鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから樹木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗をポットから取り出して鉢に仮置きし、高さを決めます。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
サルスベリの水やり
【庭植え】
植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、水切れしないように管理しましょう。根づいた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、真夏に晴天が続いて乾燥しすぎる場合は、水やりをして補いましょう。真夏は昼間に水やりすると水の温度が上がってすぐお湯になってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。
【鉢植え】
日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉が、ややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、水やりを欠かさないように注意します。気温が上がっている昼間に水やりすると、水がすぐにぬるま湯になって株が弱ってしまうので、朝夕2回、涼しい時間帯に行うことが大切です。
サルスベリの肥料
庭植え、鉢植えともに、2月に寒肥として、堆肥や腐葉土などの有機質肥料を施します。鉢植えの場合、生育期に木に勢いがなく成長が止まっているようなら、速効性のある液体肥料を水やり代わりに与えるとよいでしょう。
サルスベリの剪定
サルスベリは、春から伸びた枝先に花芽をつくる「新枝咲き」です。剪定の適期は3月頃で、花芽分化はそれから先の6〜8月なので、「花芽を切ってしまわないだろうか」という心配がありません。
剪定の際は、まず不要な枝からカットしていきます。株元に目を向けてみましょう。地際から枝が出ているものを「ひこばえ」といいます。このひこばえは、成長に不要な枝なので、元から切り取ります。次に、骨格となっている幹や主要な枝の途中から伸びている、樹形を乱すような不要な前年枝を、元から切ります。ヒゲのような細い枝も一緒に元からカットしましょう。
ここからが、樹高をキープする剪定です。一般に、新枝咲きの樹種は強く伸びた枝の先に大きな花を咲かせる傾向にあるため、すべての枝を切り戻す強剪定が基本となります。前年の枝を2、3節残して、深く切り戻しましょう。この強剪定を数年繰り返すと、だんだんこぶ状になってくるので、数年に1度はこぶの下まで切り戻して更新するとよいでしょう。ゴツゴツしていた木の姿がスッキリします。
もしくは、強剪定にせずに枝の間引きを中心とした、弱剪定にしてもかまいません。するとこぶのある幹肌ができず、自然な木姿を楽しめます。
強剪定にすると大きな花がたくさん咲いて、ダイナミックに咲き誇る姿を楽しめ、弱剪定にすると小さめの花ながら自然で趣のある樹形を保てる、と覚えておいてください。どちらの剪定法を選ぶかは、庭のスタイルや樹形の好みによって分かれるところです。
サルスベリの植え替え
【庭植え】
しっかり根付いて順調に生育していれば、植え替えの必要はありません。
【鉢植え】
鉢植えで楽しんでいる場合は、放置していると根詰まりしてくるので、2〜3年に1度を目安に植え替えましょう。植え替えの適期は3〜4月か9〜10月です。
植え替えの前に、水やりを控えて鉢内の土を乾燥させておきましょう。鉢から株を取り出し、根鉢を少しずつ崩していきます。不要な根を切り取り、1/3くらいまでを目安に根鉢を小さくしましょう。これ以上大きくしたくない場合は同じ鉢を用い、もう少し大きくしたい場合は2回りくらい大きな鉢を用意し、植え替えます。手順は「植え付け」の項目を参考にしてください。
サルスベリの増やし方
サルスベリは、挿し木や根伏せ・根ざし、種まきの方法で増やすことができます。
挿し木の適期は6〜8月頃です。春に伸びた若くて勢いのある枝を選んで切り取ります。市販の園芸用の培養土を育苗用トレイなどに入れて、採取した枝葉を挿しておきます。直射日光の当たらない明るい場所で、水切れしないように管理を。発根したら黒ポットなどに植え替えて育成します。大きく育ったら、植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、採取した株のクローンになることです。
根伏せ・根ざしの適期は4〜8月頃です。株元に穴を掘って根を切り出し、10〜20cm切り取ります。培養土を黒ポットに入れて、採取した根を植え付けます。根伏せ・根ざしの場合も、採取した根のクローンになります。ただし、台木に品種を接いで育成した接木苗を入手した場合は、台木のクローンをつくることになるので、確認しておきましょう。
種まきの適期は5月頃です。前年の11月頃に実から種子を採取し、冷暗所などで保存しておいたものを用います。よく水洗いをしたのち、園芸用培養土にタネを播きます。発芽まで乾燥しないように管理し、成長とともに鉢増ししながら育成します。
サルスベリの病害虫
サルスベリは、うどんこ病が発生しやすい特性がありますが、近年はうどん粉病に強い品種も増えています。うどん粉病の発生しやすい時期は成長期の春から秋で、発症すると葉に白い粉が吹いたような状態になり、生育が阻害されて樹勢が弱ります。風通しが悪いと発生しやすくなるので、枝が込み合っている部分は不要な枝を選んで元から切り取る間引き剪定をするとよいでしょう。うどんこ病の症状が現れたら、早めに適応する薬剤を散布して対処します。
害虫については、カイガラムシがつきやすいので注意を。枝の付け根などによくつくので、見つけやすい害虫です。カイガラムシの排泄物に菌が繁殖すると、すす病を発症する原因になるので、見つけ次第対処しましょう。やわらかめのブラシでこすってカイガラムシを取り除きます。
夏の花を代表するサルスベリについて、これまで幅広くご紹介してきました。その特性や品種群、育て方など、ご理解いただけたでしょうか。サルスベリは寒さに弱い特性などがありますが、基本的にそれほど手がかからず、ビギナーでも育てやすい樹木です。シンボルツリーとして取り入れ、夏の庭を華やかに彩ってはいかがでしょうか。
0コメント