干ばつにも炎暑にも負けない根性者、サルスベリ(Crape Myrtle)

http://nankamikan.blogspot.com/2014/07/crape-myrtle.html【干ばつにも炎暑にも負けない根性者、サルスベリ(Crape Myrtle)】より

夏に、長期間多彩な色の花が咲き続ける落葉樹、サルスベリ(Crape Myrtle)です。

サルスベリというと、趣のある枝ぶりで和風の庭の定番樹木というイメージを持っていました。でも、カリフォルニアに来たら、サルスベリは街路樹になっていました。

日本で見たよりも花の色が多彩で、そして何より、木の形が “すなお” なのが意外でした。真っ直ぐの幹の上に丸い樹冠。絵に画いたような木の形をしていて、ずいぶん違うなと思ったものです。(今ちょっと調べてみたら、日本でもサルスベリの街路樹は普通にあるようです。)

それから25年も経って、やっと、この木をもうちょっとよく見て、よく調べてみようという気になりました。そうしたら、本当にびっくりするくらい沢山植えてあることが見えてきました。今ちょうど花の盛りの季節なので、私の素人目にも存在が見えるのですけどね。

種類と名前

総称で Crape Myrtle (クレープ マートル)。多くの園芸品種があり、その元になっている種が二種類あります。

それら多彩な園芸品種と、原種が取り混ぜて植えられているようですが、ここでは特に区別する場合以外はサルスベリ 又は Crape Myrtle の名前を使うことにします。実際、植えた人にしか品種名は分からないと思います。いや、植えた人でも分からないかも。

科名: Lythraceae(ミソハギ科)

属名: Lagerstroemia(サルスベリ属)

以下は、元になっている二種類のサルスベリの名前です。

その1

学名: Lagerstroemia indica(ラジェルストロミア インディカ)

英語名: Crape Myrtle, Crepe Myrtle, Crapemyrtle

日本語名: サルスベリ、百日紅(ヒャクジツコウ)

原産地: 中国

その2

学名: Lagerstroemia fauriei(ラジェルストロミア ファウリエイ)

英語名: Japanese Crape Myrtle

日本語名: ヤクシマサルスベリ(たぶん)

原産地: 日本

実は、日本語のサイトには、L. fauriei という名は見つからないのです。代わりに、L. subcostata var. fauriei がヤクシマサルスベリになっています。でも、これ以上は追及しないことにします。学名は、結構変遷するものなので。

私が見た範囲でも花の色では、白、薄いピンク、濃いピンク、赤、赤紫、紫と多彩です。また、木の大きさも様々で、高さが1メートルにもならないものから、10メートルくらいになるものまであるのだそうです。

状況に応じて種類を選んで植えれば、ほとんど剪定の必要もなくその場にフィットした姿を保つことができるのだそうです。見かけによらず、世話いらずの木らしいです。

私にとっては珍しいと感じる紫色の花。本当は、写真よりもっと青みが強いのですが。


ネット上で、Los Angeles Times のサルスベリの記事がありましたので、かいつまんでご紹介します(いつもお世話になります、L.A. Times 様)。

タイトルは、“サルスベリ: 炎暑にも負けない美しさ” 。

“サルスベリの新世代” とも呼ぶべき現在の園芸品種の先鞭をつけた人物、Donald Roy Egolf が紹介されています。

Egolf(エゴルフ) は、ワシントン D.C. にある国立植物園(U.S. National Arboretum)で、1958年から1990年に亡くなるまでの間plant breeder (植物の交配家?)だった人です。

18世紀終盤にアメリカに最初に導入されたサルスベリ、L. indica は、多彩な花の色、美しい幹、固くてなめらかな木材といったすぐれた特徴があるにもかかわらず、うどん粉病(Mildew)に罹り易いという難点があったせいで、せっかくの美質が評価されていませんでした。

そんな期間が続いた後1960年代になって、Egolf が L. indica に日本産の L. fauriei を交配するというプログラムをスタートさせました。L. fauriei は、何より、うどん粉病に耐性があるのです。そして、複雑な過程を経て、最終的に23品種が作り出されたのだそうです。

これらの園芸品種は 比較的湿気の多い東海岸で生まれたのですが、意外なことに、抜群の干ばつ耐性を備えていて、乾燥した気候の地域で大変評価されることになりました。

実際、カリフォルニアでは、夏は降水がほぼゼロですし、時として摂氏40°にもなる日が続いたりします。そんな気候のなかでサルスベリは、散水設備が無くて通常の街路樹が植えられないような悪条件の場所で萎れることなく花を咲かせ続けるのだそうです。

(ただし、若木のうちは 植えてから根付くまでは、ちゃんとした水やりが必要と書いてあります。)

ところで、Egolf はそれら全ての新品種に、アメリカ先住民族の名前を付けました。例えば、Hopi, Arapaho, Muskogee 等。品種名を見ると国立植物園生まれということが分かるのだそうです。

記事の著者は、乾燥した気候で強く生きる性質と、先住民とを重ね合わせて感慨にひたっています。

以上、L.A. Times の記事でした。

下の写真は、記事にあった “うどん粉病” だと思います。

大抵、水のやり過ぎが原因だそうで、スプリンクラーの設置が悪いのかも。


花のほかにも、紅葉、そして裸の幹が美しいらしい。

全く気が付きませんでしたが、紅葉が美しい品種が多いようです。9月に花が終わったあと、オレンジ色やワインレッドの葉の色を 4か月余りにわたって楽しめるとのこと。本当かしら、楽しみだわ。

そして、その長い紅葉の季節が過ぎると、幹を楽しむ季節が来るのだそうです。落葉した後の幹の色や姿を、花以上に愛でるのが “通” らしいです。

実際、新しい若葉が出始めるのがとても遅い木です。

今まで見た中で、プラタナス や アメリカン スイート ガム は4月にやっと若葉が付きましたが、その頃でもサルスベリはまだ葉が出ていませんでした。多分5月になってからだったと思います。なので、裸の幹を楽しむ期間は長いことになります。

ただ、私は今年の冬から春にかけてサルスベリを見ていたのですが、枝に枯れた葉や乾燥した果実の殻がびっしりくっついたままで、美しいとは程遠い有様でした。

下の写真は、ちょっと見にくいですが、前年の果実の殻がまだついているところです。どの木もこうなっています。

昨冬は、いつもの冬の嵐が来なかったせいで振り落とされなかったのかも知れません。あるいは、幹を楽しむためには枯れた殻を手で除いてやらなくてはいけないのかもしれません。次の冬にどうなるか見てみましょう。

それにしても、良いことづくめの木ですね。花を長く楽しみ、そして紅葉を長く楽しみ、さらに葉のない幹を長く楽しむ。手入れがあまり要らず、水やりもいらない。

水不足が常のこの地で、あまり水の要らない植物の庭が奨励されています。地元原産の草木に交じって、サルスベリもおすすめのリストにきっちり入っているようです。

ちなみに、サルスベリの英語名Crape Myrtle の元になっている植物 Myrtle(マートル、ギンバイカ) は、サルスベリとは種類の異なる植物の名前です。私が今つまづいているフトモモ科に属する常緑低木とのこと。Myrtaceae(フトモモ科)の名のもとになっている植物でもあります。

サルスベリでこんなに長い記事を書くとは思ってもみませんでした。これから、もうちょっと軽く書きたいです。

以上です。