Facebook・印南洋造さん投稿記事·
11日里芋の写真を撮った帰り道、清原中の蓮は紅白が開花していました。
今日の昼には雷雨となり、明日は4日目、1輪は散り、1輪は3日目だ。
https://news.goo.ne.jp/article/tenkijp/trend/tenkijp-24241.html 【ハスの大量消滅とは何だったのか!? 七十二候「蓮始開(はすはじめてひらく)」】 より
7月13日より、小暑の次候「蓮始開(はすはじめてひらく/宣明暦では蟋蟀居壁)となります。梅雨寒などどこへやら、今年は全国的に7月初旬より気温の高い日が続いていますが、そんな湿気と暑気で朦朧とする気候の中、水辺では今年も涼しげな水草、ハスの花の時期となりました。早朝、真夏でもひんやりとした空気の中で夢のような花を開く蓮。しかし昨年、そのハスの花が大量絶滅するという現象が全国で相次ぎました。その原因は何だったのでしょうか。
レンコンの穴っていくつ?穴の数にまつわる俗説
ハス消滅事件に言及する前に、ハスの地下茎、つまりレンコンについて触れておきたいと思います。
レンコンはハスの根っこ。世界でもレンコンを食べるごくわずかな国の一つである日本人ならご存知の事と思います。ただ、漢字で書けば「蓮根」と書くため蓮の根と思われがちですが、正確には地下茎、つまり地中にもぐった茎で(野菜類では他にもジャガイモやサトイモ、クズなどが地下茎になります)、泥の中に横たわるように横に伸び、そこから根を張っています。
これを掘り出したものが、あの穴の開いたレンコンです。日本在来種の「天王」「上総」などの品種はより深く泥にもぐり収穫しにくいのですが、粘りが強くコクがあり、独特の味わいがあり煮物などにするととても美味しいものです。明治-大正期に日本に輸入された中国原種の「支那」「備中」などの品種は病気に強く、地下茎が浅く収穫しやすいのが特徴。在来種と比べて歯ざわりがしゃきしゃきとしており、さっぱりしていて、散らし寿司などに最適。
そして、レンコンというと輪切りにするとボコボコといくつも楕円の穴が開いているのが特徴ですが、中央部に一つか三つの小穴、周囲に時計の文字盤のように大きな穴がいくつも開いていて、ところどころに小さな穴もあったりするのが一般的。目立つ大きな穴は、真ん中の穴をあわせて約10個前後というのが一般的です。
もっとよく観察してみますと、輪を描く穴にも大小があり、必ずちょっと小さめの穴が二つ隣接して並んでいる箇所があります。この二つ穴があるのが地中では上になって埋まっているのです。
レンコンの産地の一つとして有名な山口県の岩国で採取される「岩国レンコン」は「普通のレンコンの穴は8つだが、岩国のレンコンは9つなので明確に区別できる」といわれていますが、これはまったくの俗説。穴の数が8つというレンコンはむしろあまりなく、9〜11個がもっとも一般的です。この俗説は、岩国藩を治めていた吉川家の家紋が九曜紋であったことから、この九曜紋にあやかったのかもしれませんね。
ハスは大きな空気循環システムを備えている
このレンコンの穴とは何の役割があるものなのでしょう。
何と、レンコンの穴は地上に伸び出ている大きな葉の中央部の茎の付け根までつながっていて、葉にあいた穴から、葉柄の中に開いた空気管を通り、レンコンの穴に通じています。
光合成により生成された酸素を地下茎に送り込み、地下茎は穴の中に入った空気で呼吸をして二酸化炭素を排出、また穴を通して葉柄に送り込んで、外に排出しているのです。
この仕組みは絶妙で、若い葉の葉柄からは新鮮な酸素が入り、古く朽ちた葉の葉柄を通って、根の呼吸で出たCO2が多い空気が地上に出る通気孔の役割を果たして循環しているのです。
若い葉の細胞に蓄えられた酸素は、夏の太陽に熱せられて気圧が増して地下茎に流れ込むという仕組みです。葉の取れた葉柄だけの茎は、風が吹くと流体の法則で、空気が吸い出されて地下茎に溜まった二酸化炭素を吸い上げます。また呼吸で生じたCO2は水によく溶けるため、その分レンコンの穴の空気圧は地上より低くなっているので、地上から空気が入りやすくもなっています。なんとも絶妙な仕組みですよね。
こうした仕組みで、水の中の泥の中で、大きな地下茎を発達させられる、というわけです。
全国各地で発生!2016ハスの大量消滅事件の謎
これをふまえ「ハスの自生地名所」が次々とハスの謎の大量消滅にせまります。
日本でも最大級のハスの自生地として名をはせていた、滋賀県草津市の烏丸半島の琵琶湖岸。岸辺一体の水面およそ13haが6月ごろから一面ハスの葉に覆われ、花の時期には涅槃境もかくあるだろうかと思わせるハスの花の大群落が見られ、熱気球による空からの観光フライト、ボートによる「ハスクルージング」などで観光客を集めていました。
ところが2016年夏、突然この大群落が消滅してしまいました。ハスの葉がいっせいに枯死してしまったのです。その年はハスの花は見られず、滋賀県や草津市は直後から大規模な調査を始めました。
当初、同じように群生地が絶滅しかけた佐賀県の佐賀城公園のお堀端のハスが、大規模な食害をもたらしていた外来種のミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)を駆除することで再生した経緯や、青森県弘前公園では大発生していたアメリカザリガニを駆除したことでハスの群生が再生したことなどの前例から、琵琶湖の場合もカメやザリガニの食害ではないか、などの予想がありましたが、食害はほとんど見られず、地下茎は泥の中で腐敗していました。
詳しく調査した小林圭介・滋賀県立大名誉教授らによると、約20年前と比べて、
・烏丸半島一帯の湖底の土壌が、ハスの生育に適した粘土質の泥土から、砂地に変化していた。粘土層が、波などの浸食を受け、15〜39センチほど消失していた。
・湖底のメタンガス(CH4/炭化水素)濃度が、20年前と比較して5〜8倍増えていた。
といった変化が見られ、これらがハスを消滅させた原因としました。先述したとおり、ハスの地下茎は水上部の葉から酸素をもらい呼吸しています。しかし土中がメタンガス湧出で満たされると、酸素の希釈で酸素欠乏状態となり、地下茎内の酸素の欠乏にもつながります。こうして、地下茎が呼吸困難で枯死してしまうことは充分考えられます。
琵琶湖だけではありません。岐阜県海津市のアクアワールド水郷パークセンター内の義呂(ぎろ)池も、琵琶湖と同様、2016年に突如忽然とハスの群落が消えてしまったのです。また、埼玉県蓮田市の黒浜沼も同様に2016年、突如ハスの群落が消滅しました。これらはどうも、佐賀や青森の例とは異なるようです。
滋賀、岐阜、埼玉の事例は大群落が一定期間持続していたために、湖底に枯死体が堆積してメタンガスを発生させるという、いわゆる「嫌地(いやち)」(同じ植物が継続して同じ土地で繁殖を繰りかえすと、ある時期から生育が悪くなり絶滅する)に似た現象が起きたものとも考えられます。
…ではあるのですが、徐々にではなく、ある年に突然消滅するという現象の理由も説明できませんし、またこれらが2016年を軌を一にして発生したことも謎過ぎます。一体どういうことなのか。単なる偶然なのでしょうか。今後同じようなことが起きるのか。何かとんでもないことが自然環境に起きていて、私たちが見逃しているのか。注視していきたい出来事です。
ともあれ2017年は昨年のような絶滅の報告は今のところ聞かれません。うだるような夏の一服の清涼剤ともいえるハスの花。今後も華麗に咲き続け、楽しませてほしいですよね。
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