http://www.biology.kyushu-u.ac.jp/~plantgenomics/nitasaka/index.html
【植物多様性ゲノム学研究室・アサガオグループ...】より
アサガオ(朝顔、英名:Japanese morning glory、学名:Ipomoea nil Rothは他の同属の多くの植物種と同様に、熱帯アメリカ原産の植物だと考えられており、汎世界的に分布していますが、園芸的に利用されたのは日本だけで、日本独自の園芸・実験(モデル)植物だと言うことができます。
日本へは奈良時代、遣唐使によって中国から薬草(下剤)として利用するために渡来したと考えられています。日本に渡来して以降の長い期間、数えるほどの変異はしか記録されていませんが、江戸時代後期の文化文政期には数多くの変異体が見つかり、大坂や江戸でアサガオの栽培ブームが起こりました。その後、幾度かの栽培ブームや系統消失の危機を乗り越えて現在まで保存されてきています。
メンデルの法則の再発見以降、日本においてアサガオが遺伝学の実験材料として利用されるようになり、戦後は鋭敏に日長に反応して花芽を付ける性質から生理学研究の材料にも用いられるようになりました。現在では、花の色素の天然有機物化学、花色の発現、花弁の老化、花の開花機構、花や葉の形態形成機構等、さまざまな生物科学分野での利用も広がっています。当研究室ではアサガオの豊富な突然変異体のコレクションを用いて以下のような研究を進めています。
アサガオの形態形成遺伝子の解析
アサガオに見えないような変異体(変化朝顔の出物系統)は不稔であるにも関わらず、ヘテロ接合株を利用して、江戸期から現在まで保存されています。挿入しているトランスポゾンを指標に形態変異の原因となる遺伝子を解析すると、多くは器官の極性に関わる遺伝子に変異を持っていることが分かってきました。
複雑な形の葉をもち、つる性植物であるアサガオの豊富な変異体コレクションやゲノム情報を利用して原因遺伝子を明らかにすることで、これまで知られていなかった遺伝子の働きが明らかになることが期待されています。
アサガオの突然変異原であるトランスポゾンの構造や転移機構の解析
アサガオのほとんどの変異体は、江戸期に転移が活性化したEn/Spm(CACTA)スーパーファミリーに属するトランスポゾン(Tpnファミリー)によって誘発されています。これらは内部にアサガオの遺伝子を取り込んだ不思議な構造をしていますが、ゲノム中にある数百コピーのほとんどは非自律性トランスポゾンであり、ごく少数の転移酵素をコードする自律性トランスポゾンによって転移しています。また、日本産系統のみで転移が活性化しており、その機構の解明を進めています。
近縁種のマルバアサガオ(Ipomoea purpurea)の変異体コレクションも保有しており、これらの変異は、アサガオとは異なり、Ac/Ds (hAT)、MULE、Helitronスーパーファミリーに属するトランスポゾンで誘発されており、多様なトランスポゾンの転移機構を解析するためにも優れた系です。
アサガオの系統保存および研究環境の整備
日本医療研究開発機構(AMED)のナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)の代表機関に指定されており、アサガオ系統の収集・保存・提供(種子・DNA)およびゲノム関連情報を含めた研究環境の整備をおこなっています。世界最大のアサガオ類のストックセンターとして機能しており、保有系統数は2000系統を超えます。
詳細につきましては、ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)のウェブサイト「アサガオホームページ」をご覧ください)
文化文政期、嘉永安政期、明治〜昭和初期の記録に残るアサガオの形態形成変異体(変化朝顔)。
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