http://www.brain-studymeeting.com/str/nokan/ より
人間の脳は大脳と小脳で構成されており、各部位がそれぞれ重要な役割を担っています。この脳で処理された情報は、脊髄を通って体の各部位に伝達され、実際の行動に反映されるのですが、この脳と脊髄の間を取り持っているのが脳幹です。
しかし、脳幹はただの脳の連絡口ではありません。
脳幹の構造
脳幹は大きく分けて、以下の4つに分類されています。
間脳(かんのう):diencephalon「大脳半球と中脳の間にある自律神経の中枢」
間脳は脳幹の中でも最も脳に近い部分のことです。大脳全体に覆われています。
間脳は視床と視床下部に分けられています。
視床は嗅覚以外の全ての感覚の中継点となっており、また、大脳を覚醒させておこうとします。
視床下部は人間が生きていくうえで非常に重要な自律神経の最高中枢となっていて、内臓の制御、血圧の制御、体温調整、ホルモン分泌などを行っています。
中脳(ちゅうのう):midbrain, mesencephalon「脳の一部」
間脳の内側に位置しています。大脳皮質と小脳、脊髄などを結び付けている重要な中継点です。
中脳自体も、高度な運動の制御、聴覚の中継所、眼球運動などを制御しています。
橋(きょう):pons「脳の部位の一つ」
小脳との連絡路です。この橋により、小脳と大脳・脊髄などの連絡ができるようになっています。
これがなくなると小脳との情報のやり取りが行われなくなりますから、体で覚えることが不可能になりますね。
延髄:medulla oblongata「脳の一部」
言葉は有名であろうあの「延髄蹴り」の延髄です。呼吸と循環器(心臓)の制御を行っています。
つまり、例の延髄蹴りというのは、人間の後頭部に位置する延髄にショックを与えることで呼吸と循環器の機能を阻害し、気を失っているところをフォールして…という技だったわけですね。
http://www.brain-studymeeting.com/str/daino/ より
大脳の機能と構造ほか「頭頂葉」「側頭葉」「後頭葉」「前頭葉」
脳は大きく「大脳」「小脳」「脳幹」の3つに分けられます。その中でも、人間が物事を考えたり、感じたり、言葉を話したり、記憶したりと特に大きな役割を持っているのが大脳です。
勿論、小脳や脳幹もそれぞれ重要な役割を持っていますが、他の動物と比較しても人間において特に発達しているのが大脳です。
人間は生物の中でも知能が特に発達した生物ですが、それは大脳が発達しているからです。
大脳の構造
まずは、大脳の構造そのものから見ていきましょう。
大脳皮質(だいのうひしつ)
▲濃いグレーの部分
大脳の表面部分を大脳皮質といいます。大脳皮質はしわしわになっています。
脳のしわが多いと頭がいいなんて世間ではよく言われていますが、医学的には脳のしわと知能との関連性はないことがわかっています。
このしわは、深さや曲がり方に関しては多少個人差はあるものの、しわの位置に関しては個人差はなく完全に決まっています。この大きなしわによって「前頭葉」「頭頂葉」「側頭葉」「後頭葉」の部位に分けられているわけですね。
大脳皮質は複雑な神経結合が構成されていて、人間の思考などの中枢になっています。大脳皮質の内側は白質と呼ばれ、大脳皮質の神経と他の神経をつないでいます。
大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)
大脳の内側に位置している部分の総称です。また、大脳皮質を含んで大脳辺縁系ということもあります。
大脳皮質で物事を考えているのに対し、内側は、わかりやすく言うと本能の役割を担っています。
大脳の内側で発信される本能的な情報が、大脳皮質で処理され、理性的な行動につながっていると考えられています。
大脳基底核(だいのうきていかく)
大脳と脳幹を結び付けている神経の総称です。
大脳基底核の役割は多彩で、運動の調整、学習など様々な機能を持っています。
大脳の部分わけとその働き
大脳はしわによって各パーツに分けられます。
その各パーツがどのような役割を担っているのかを見ていきましょう。
前頭葉(ぜんとうよう)
大脳の前にある部分です。
前頭葉は、人間の思考や理性を制御しています。また、言葉を話したり、体を動かしたりする機能も担っています。人が人であるために最も関与している部分といえるでしょう。
人間が感情を抑え理性的に行動できるのも、前頭葉の働きがあるからです。
前頭葉の機能に問題が生ずると、
我慢が必要なときに我慢できなくなる
己の感情のまま行動する
言葉がしゃべれなくなる
運動機能に問題がおこる
など、大きな問題になってしまいます。
http://www.brain-studymeeting.com/str/shono/ より
小脳の位置は脳の後ろで重要な役割を担っている
人間の脳の中で最も重要なのは大脳ですが、では他の部分は重要ではないのかというとそんなことはありません。
大脳は先ほど見たように、人間であるために重要なものなのであって、他の部分は生物が生きていくために重要なのです。ここで説明する小脳も、当然生きていくために重要な役割を持っています。しかもそれだけではなく、人間の行動にも深いかかわりがあるようなのです。
小脳の位置と構造
小脳は、脳の後ろ側にぶら下がるような感じでくっついています。小脳の構造も大脳のそれと似ていて、小脳皮質と白質からなります。
小脳はその名が示すとおり大脳よりも小さいですが、大脳同様表面がしわしわになっており、その量は大脳よりも多く、細かいです。どれくらい細かいかというと、しわをそれぞれ伸ばして広げたら小脳の方が大脳の2倍もの大きさになるくらいです。しかも、脳の神経細胞は約140億個ですが、それは大脳の神経細胞の数のことを言っているのであって、小脳の神経細胞は約1000億個あります。
大きさは大脳よりも全然小さいですが、中のポテンシャルは大脳をはるかに凌駕しているのです。
小脳の役割
これだけの大きなポテンシャルをもっている小脳ですが、大脳と比べるとその役割は地味なものだと思われていました。
昔はある特定の役割しか担っていないといわれていたくらいです。しかし、最近では新たな研究成果がどんどん発表され、それに伴って小脳の働きも多くのことに関与しているらしいことがわかってきました。
運動機能の調整
昔から言われている小脳の役割です。
普通の人が立ったときに倒れずにまっすぐ立てるのは、小脳の働きによってバランスが保たれているからです。また、指先を使った作業など細かな作業を行うのも小脳の働きによってです。
かつては、小脳の役割といえばこれだけだと思われていました。
体で覚える
近年の研究により、いわゆる「体で覚える」というのは「小脳が記憶する」ということだというのがわかってきました。
我々が何も考えずにできる行動は全て小脳が覚えているからこそできるのです。
例えば、「自転車に乗る」という行動。これは生まれながらにして人間ができる行為ではありません。もし人間が生まれつき自転車に乗れる能力を持っているのなら、自転車に乗れない人がいるはずありませんよね。
「自転車に乗る」という行動を小脳が記憶してはじめて自転車に乗れるようになるわけです。逆に、一旦自転車に乗ることを覚えてしまえば、何も考えなくても乗れるようになりますよね。それは小脳が自転車に乗る方法を記憶したからです。こういうことが近年判明してきたのです。
こうして考えると、大脳が「有意識」を担っているのに対し、小脳は「無意識」を担っているといってもいいのかもしれません。
大脳の思考をコピーして保持する
例えば、同じ事を何度も何度も繰り返し行っていると、やがて何も考えなくてもできるようになることってありますよね。同じ漢字を何千回も書いていると、やがて思い出そうとしなくても書けてしまうとか…。それは、本来大脳が記憶しているべきものを、小脳がコピーして記憶しているからだと考えられています。
こうなると、大脳でじっくり考えて結論を導き出すような事柄を、小脳の記憶から結論を導き出したりするようになるのです。
人間がとっさの判断が下せるようになるのも、このコピー能力があるからだといわれているのです。
脊髄小脳変性症
このように、大きな機能を持っていることがわかってきた小脳ですから、当然何らかの問題が起こると通常生活に支障をきたすようになります。この辺は大脳に 問題が起こったときと同様ですね。
小脳に起こる問題は、脳の一部である以上、脳梗塞や脳出血など脳の一般的な病気もありますが、特に最近話題に上がってい るのが脊髄小脳変性症です。これは、何らかの理由のよって、小脳やそこにつながる部分の脊髄が壊されてしまう病気のことです。
この病気になると、体は正常 なのにまっすぐ歩けないとか、箸や鉛筆をうまく使えなくなるとか、そういう症状がでます。
この病気が日本で正式に認定されたのが1976年のことなので、実はまだ提唱されてから30年ほどしかたっていません。原因は半分弱は遺伝性のものですが、残りの原因は未だもってよくわかっていません。残念ながら、原因がはっきりしていない以上、根本的な治療法は見つかっていません。
ただし、対症療法のほうは研究が進んでおり、症状を改善することは可能になっているようです。
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