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原因がわからない身体の不調や女性特有の症状、これらは幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが不足することと関係が深いことがわかっています。逆に神経伝達物質であるセロトニンが十分に活性している状態は充足感や幸福感を得られているのだとか。私たちの身体や心に安定をもたらすセロトニンとは何か?そして増やす方法を解説します。
原因がわからない体調不良や気分がのらない、不安定な気持ちが続く心の不調は誰にでもありますが、それが慢性化しているとなると注意が必要です。こうした原因不明の症状がある時に私たちの身体に何が起こっているのでしょうか?
そんな方に知っておいて欲しいのが、脳内神経伝達物質、「セロトニン」。セロトニンは自律神経とも深い関わりがあり、私たちの気分や気持ちの安定に作用します。セロトニンが活性し増えることで心が安定し何事にも充実感を感じることから幸せホルモンとも言われています。
逆にセロトニンが不足することで冒頭で話したような様々な身体や心の不調が現れてきます。
セロトニン不足が引き起こす身体の不調と原因
1. うつ病や自律神経失調症などの精神疾患
うつ病や自律神経失調症の原因は、人間関係や職場でのトラブル、幼児期の虐待などが要因となったり、薬物・アルコール依存症が発症の原因となったりと、その人の境遇や社会的な要因がきっかけであると言われています。
過度なストレスや緊張状態が継続するとコルチゾールというストレスホルモンが慢性的に放出されます。するとノルアドレナリンの不足とセロトニンの不足が起こり、うつ病になるという説があります。最近ではこのようにうつ病は、これら脳内神経伝達物質と深い関係があると考えられています。
また、セロトニンはうつ病と関係があるだけでなく、自律神経失調症や統合失調症、パニック障害などの精神疾患との関係もあるとされているのです。
2. 不眠症や過眠症といった睡眠障害
睡眠障害は、眠れないといった不眠症の他、逆に寝ても昼間に激しい眠気を感じてしまう過眠症といった症状もあります。これらの睡眠障害は、夜になると寝る・朝になると起きる、といった私たちの体内時計に狂いが生じることが原因です。私たちは夜になれば眠くなりますが、眠りにつく前に分泌されるのが、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンです。そして、メラトニンの分泌に関係しているのが、セロトニンなのです。
セロトニンは起床時、自律神経を通じて交感神経に働きかけることで、私たちは日中、活発に活動することができます。そして時間が経過し、夕方に近づくとセロトニンは働きを弱めます。セロトニンが弱まることで今度は副交感神経を刺激し、体を沈静化させ眠りの準備をするのです。
しかし、セロトニンが不足すると自律神経の交換神経・副交感神経への働きかけがスムースに行われないことから、メラトニンの分泌に影響し体内時計に狂いが生じてしまうというわけです。
参考記事:睡眠不足がもたらす6つの健康リスク – 肥満から肌老化、生活習慣病まで
3. イライラ、情緒不安定
普段であれば気にしない、何気ないことにイライラしたり、時にはキレたり。または些細なことに対してクヨクヨしたり、泣いてしまったり。日常や今後の生活に対するネガティブな感情、抑うつ、マイナス思考など…。こうした感情をコントロールできない状態が続くとしたら、これもセロトニンの不足が関係しているかもしれません。
これらの感情を左右するのは、以下の二つ神経伝達物質です。
ノルアドレナリン(興奮、意欲、恐怖、不安など)
ドーパミン(意欲、モチベーション、学習、快感など)
ノルアドレナリンとドーパミンは、相対する感情を制御していますが、これらの神経伝達物質の分泌を制御しているのが、セロトニンなのです。セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンは、三大神経伝達物質とも言われ、理想的な状態は3つの神経伝達物質が過不足なく分泌されている状態です。セロトニンが不足するとノルアドレナリンまたはドーパミンの分泌がバランスを崩し、情緒不安定になると考えられているのです。
4. お腹の痛みや不快感、過敏性腸症候群
腹痛やお腹の不快感、下痢や便秘といった不調で医者にかかっても原因不明と言われたことはありますか?これらの原因不明の症状が続くようでしたら、過敏性腸症候群を疑ったほうがいいかもしれません。この過敏性腸症候群も、ストレスや不規則な生活などの様々な要因からセロトニンが不足し発症すると言われています。
これまで説明してきたとおりセロトニンは脳内で分泌される神経伝達物質です。脳内で利用されるセロトニンは脳内でつくられますが、それは全体の2%ほど。実はセロトニンの多くは腸内でつくられ(90%)、便の排出など消化器官の正常な働きを保っています。
そのため、過度なストレス、ダイエットや偏食などにより腸内環境が悪化するとセロトニンが不足し便秘や下痢、腹痛などを引き起こすと言われています。
5. PMS(月経前症候群)や冷え性など女性特有の症状
脳内でセロトニンをつくる能力は、男性に対して女性は52%ほどしかないと言われています※1 。また、月経など女性ホルモンが増えるとセロトニンが減少するため、女性はセロトニンが不足しやすいのです。
過剰成長症候群の患者数は男性よりも女性のほうが多いと言われていたり、女性は感情の起伏が激しいなどとも言われます。冷え性や便秘、PMS(月経前症候群)なども同様に、女性特有の身体の不調は実に多いもの。これらの症状がなぜ女性に多いのか、最近ではセロトニンが不足しやすい女性の特性が関係していると考えられており、女性は特に注意が必要と言えるでしょう。
セロトニンを増やす大切な3つの生活習慣
セロトニンが私たちの健康や、幸福感に密接に関わりがあると理解したところで、セロトニンを増やす方法を知りましょう。セロトニンを増やす方法は次の3つの習慣を築くことで増加し活性します。
1. セロトニンを増やす生活リズム
1-1. 太陽光を浴びる
不眠症や過眠症などの睡眠障害で説明しましたが、太陽光を浴びることはセロトニンを活性させ、増やすことにつながります。
朝起床したらカーテンを開け、朝陽を部屋に取り入れたり、余裕を持って起床し外を散歩しながら太陽光をしっかりと浴びることも良いでしょう。日光に当たることでセロトニンが増え、交感神経が徐々に刺激されることで、一日の始まりを気持ち良く迎えることができ、日中も活発に活動できます。
1-2. 規則正しい生活
太陽光を浴びることは、規則正しい生活リズムを整えていくことにつながります。日中にセロトニンを活性させることは、夜のメラトニンの活性につながり、自然と副交感神経が刺激され、スムースに睡眠が取れるようになっていきます。
このように昼夜のリズムと生活のリズムを適切にあわせていくことで、自然とセロトニンは増えていくはずなのです。
参考記事: 睡眠の質を高める5つの習慣で心と身体に真の休息を
2. セロトニンを増やす食事のルール
2-1. 適切で健康的な食事(トリプトファンの摂取)
セロトニンが生成されるには、トリプトファンと言う必須アミノ酸をはじめ、その他ビタミンB6やミネラルなども必要です。トリプトファンは対外から食べ物として摂り入れる必要があるため、トリプトファンを多く含む食品を選びましょう。
トリプトファンを多く含む食べ物は、スーパーフードのチアシード、キヌア、肉類や赤身魚、チーズ、ヨーグルト、牛乳といった乳製品。また、ひまわりの種やナッツ類、そして納豆や豆乳といった大豆製品などにも多く含まれています。基本的には動物性、植物性に限らずタンパク質系の食材に多く含まれていますので、バランス良く摂取することでトリプトファンを取り込むことができます。
また、ビタミンB6はレバーなどの肉類、魚類、ピスタチオといったナッツ類に含まれていますので、こちらも意識して摂るようにしましょう。
2-2. 腸内環境を整える
セロトニンの90%が腸内で生成されることについては説明しました。腸内でのセロトニン生成は、乳酸菌などの腸内細菌(腸内フローラ)が密接に関わっており、腸内フローラが正しく機能することで、セロトニンの量が保たれることもわかっています。
また、トリプトファンはアミノ酸ですがアミノ酸はタンパク質として食事から体内に取り込まれ分解されてはじめて利用されます。このタンパク質の分解にはビタミンが酵素として使われており、そのためビタミンB6やCなどビタミン類が多く含まれる野菜や果物もあわせてとることが大切です。
尚、スーパーフードのキヌアはトリプトファンとともに、豊富な食物繊維、ビタミンB類が多く含まれていますので腸内環境を整える上でオススメです。
ビタミン類はサプリメントなどに頼りがちですが、野菜や果物には他の栄養素も含まていますので、なるべくこうした食材を摂るよう心がけましょう。
2-3. よく噛んで食事をする
食べ方にも少し気を配ることでセロトニンを効果的に増やすことができます。セロトニンは一定のリズムで行う反復運動で活性すると言われているため、上述した食材をゆっくりと噛み、咀嚼することを意識すると良いでしょう。※2
ゆっくりと意識を集中し、味わいながら食事をすることはセロトニンを増やす他にも、様々な恩恵を与えてくれます。ゆっくりとマインドフルに食事をすることで得られる効果については以下の記事も役立ちますので参考にしてみてください。
参考記事:ダイエットが失敗する理由とマインドフル・イーティングのススメ
3. セロトニンを増やす効果的な運動
3-1. ウォーキングやサイクリングなどのリズム運動
セロトニンを増やすためには、反復するリズム運動が効果的であるため ※2、ウォーキングやサイクリングなど一定のリズムで長時間継続する運動も有効でしょう。また、よく噛んで食事することにも共通していますが、これらの運動は集中しなければ効果は期待できないとも言われています。
そのため、反復を繰り返す運動でも気が散るような環境ではなく、しっかりと意識を集中して行うことも大切です。またリズム運動としては、次で紹介するヨガの呼吸法も効果的です。
3-2. ヨガ呼吸法で自律神経を整える
自分の呼吸に意識を傾け、ゆっくりと深い呼吸を続けることもセロトニンを増やすことにつながります。※2
丹田呼吸法などヨガの呼吸法は、腹式呼吸で副交感神経を高め、意識的にリラックス状態をつくるができます。すなわちドーパミンとノルアドレリンのバランスが整うことで、セロトニンの欠乏を防ぐことができるのです。ヨガの呼吸法が自律神経にどのように作用するかについては次の記事で詳細を取り上げていますのでご参考ください。
参考記事:
自律神経の乱れをリセット – 8つのヨガ呼吸法とポーズでセルフケア
ヨガの呼吸法で自律神経をコントロールできる、その秘密。
ヨガの呼吸法というと難しく感じるかもしれません。しかし、ご自宅やオフィスのデスクでも実践可能な様々な呼吸法がありますので、以下の記事を参考に是非とも実践してみてください。
参考記事:マインドのノイズを軽減する5つのヨガ呼吸法
3-3. ヨガで姿勢を正す
うつ病や自律神経失調症など、セロトニンの不足が見られる精神疾患において、自律神経との関係が深いことはこれまで読んでいただければわかると思います。このように自律神経は心の安定に作用しているのですが、自律神経は脊柱に沿って私たちの身体全体に張り巡らされ、私たちの内臓も制御しています。
強いストレスや緊張が自律神経のバランスを崩すのは多くの指摘がありますが、実は骨盤の歪みが筋肉に緊張をもたらし、脊柱に沿って張り巡らされた自律神経を圧迫。この圧迫が神経伝達を阻害し自律神経に乱れを生じさ、ひいては様々な内臓疾患をもたらすといった見方もあります。※3
うつ病や自律神経失調症で処方される薬に効き目がみられない、といった方はこうした骨盤や身体の歪みを疑ってみてもいいかもしれません。アンチエイジングや美容では姿勢を正すことが大切だとよく言われますが、その理由がここにあるのです。
ヨガには産後に歪んだ骨盤を整える骨盤調整ヨガなどがありますが、もともと、ヨガポーズの目的そのものが、身体の姿勢を整えることと言っても過言ではありません。またヨガのアーサナは姿勢を意識しながら、同時に呼吸も整えていきますので、私たちの身体に対して様々な角度から良い影響をもたらすといって良いでしょう。
参考記事:姿勢を正してマインドをポジティブに – 姿勢改善に効くヨガポーズ
幸せは規則正しい生活から!
いかがでしたでしょうか?前回、幸せな人が持つ習慣について取り上げましたが、セロトニンと無関係ではないでしょう。おそらく幸せな人が充足感や満足感を得ている状態はセロトニンが活性しているはずで、幸せな人の体内で何が起こっているのか?が今回の記事にあたるのではないでしょうか。
また、太陽光を浴びる、十分な睡眠をとるといった内容は以前紹介した、「人は野生に帰れば幸福と健康を取り戻せる – 食事と健康の11のルール」においても重なる部分が多いです。
私たちは、こうした別々で語られる幸福の条件から、ぼんやりと共通点を見出せます。それは早寝・早起きといった就寝のリズムと十分な睡眠、適度にアウトドアで過ごす(日光を浴びる)、運動、食事であり、これらは現代人が忘れた規則正しい生活習慣を取り戻すことに他なりません。外的な環境は当然私たちの心理と関係しており、どちらが先かというよりも、全てが良いバランスを保った状態こそが、真の健康であり、幸せな状態と言えるのでしょう。
サプリメントや薬などの対処療法に依存しても効果は限定的。人間本来の生活リズムを取り戻すことが一番肝心なのです。
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