正4面体から正6面体と正8面体へ

http://metalogue.jugem.jp/?eid=1821 より

■正4面体も含む5つのプラトン立体にはみな3種類の接球がある。この3接球を正4面体を例に見ていこう。図左の球体は正4面体の全ての頂点とだけで接する外接球であり、中央の球体は正4面体の全ての線心(線の中央)と接する中接球であり、右の球体がこの正4面体の全ての面心(面の中央)と接する内接球である。これら3接球の半径比率は、外接球:中接球:内接球=√3:1:√3/3である。

■平方根で表現すると感覚的に分かり難い人のために表現を変えると、外接球と内接球の半径比は3:1であるということだ。したがってこの2つの接球の表面積比は9:1、体積比は27:1となる。もしくはルービックキューブの全体と1ピースの関係と考えれば分かりやすいだろう。なお中接球半径を1とした時、外接球と内接球の半径比は逆数の関係になっているので、掛け合わせると中接球の1になる。

■ところで正4面体そのものを内側に面点変換すると、小さな逆向きの正4面体ができるが、この小さな正4面体の外接球は最初の正4面体の内接球と同じである。また逆に外側に面点変換すれば、変換後の大きい正4面体の内接球は最初の正4面体の外接球と重なる。このミクロ・マクロ双方向に繰り返す面点変換のそれぞれの間に中接球が入り込むのだが、連続する中接球の半径比は…9:3:1…である。

■3つの接球の1つである中接球を共有させて、2つの正4面体を対称的な位置で相貫させてみよう。するとこの2つの正4面体の6辺同士がすべて直交して、ケプラーの星型8面体と呼ばれる図の中央の形になる。この図からも正4面体の6本の線は、外接球を共有する正6面体のすべての面の対角線となっていること、そして元の正4面体の中接球がこの正6面体の内接球になっているが分かるだろう。

■図の中央は同じくケプラーの星型8面体だが、この8つの頂点を結んでできる正6面体を強調したのが左図であり、相貫した2つの正4面体の重畳する部分が正8面体であることを強調したのが右図である。左側の正6面体は中央の星型正8面体の外接球を共有し、右側の正8面体は外接球を星型正8面体の中接球と共有している。またこの中央の図を取り去れば、正6面体と正8面体の面点変換の図になる。

正6面体-正8面体の系の体積比

■プラトン立体やアルキメデス立体などには、その面・点・線や角度や比率などの関係性はあるが、本来固定した大きさや体積というものはない。1辺が1ナノメートルでも1天文単位に設定しても正4面体は正4面体であり、その2面角や中心角や回転対称軸は変わらない。それでも1つの立体の辺長や接球半径を固定することで、立体同士の間の整然とした空間占有比(体積比)を見て取ることができる。

■私たちが最も馴染み深い空間の3軸直交を体現している正6面体を、体積6の基本フレームとして見ていこう。まずこの正6面体に内接する正8面体を想定すると、その体積比は基本単位の1となる。次に正6面体にはまり込んでいる正4面体を考えると、その体積比は2となる。またこの正4面体の自己相貫体であるケプラーの星形8面体の体積比は3となる。正8面体は2つの正4面体の重畳部である。

最初に基本フレームとした正6面体の各線心(線の中心)を結んでできるベクトル平衡体の体積比は5である。また正6面体と12個の線心同士で直交する正8面体の体積は8となる。そしてこの体積比が6:8=3:4の正6面体と正8面体の相貫体は体積比が9である。最後にこの正8・6相貫体の頂点を結んでできる立体は菱形12面体と言い、体積比は12である。なんとも整然とした体積比の関係である。

■正4面体の双対立体は自分自身だから、正4面体を自己相貫させた形のケプラーの星型8面体の重畳部分に正8面体があり、頂点を結んでできる立体が正6面体で、体積比は1:3:6である。また双対立体である正6面体と正8面体の相貫体は正8・6相貫体で、その重畳部分がベクトル平衡体であり、頂点を結んでできる立体が菱形12面体である。こちらの体積比は5:9:12となっている。

プラトン立体には外・中・内の3接球がある。これらの体積比を3接球を介して見ることもできる。体積比が1:6の正8面体と正6面体の関係は、正8面体の外接球が正6面体の内接球と等しい。このように双対立体の面点変換とは、互いの内接球と外接球を介してミクロ・マクロ双方向にも無限連結させられることが分かる。つまり双対立体とは2つで1つのトーラス体のようなものとも解せられよう。

■体積比1の小さい正8面体の外接球は正4面体の中接球でもあるので、正4面体の中にはまり込んでいるようにも見える。正4面体と正6面体は外接球を共有しているが、正4面体の中接球は小さい正8面体の外接球であり、正6面体の中接球はベクトル平衡体の外接球である。また正6面体と中接球を共有させた正8面体の体積は8であり、中接球を共有させて相貫させた正8・6相貫体の体積は9である。


■10進法もしくは12進法を用いている私たちの目には、そしてこの正6面体を基本の体積6としたこの系もまた、ちょうどその2倍の体積12である菱形12面体をもって1つの臨界を迎えている。なおこの自然数で見て取れる体積比の関係には、4と7に相当する美しい立体は見当たらない。このことは電子の配置や空間の対称性と共に、直接ではないが音楽で言うところの「ヨナ抜き音階」を連想させられる。

■音楽関係者には釈迦に説法だが、ヨナ抜き音階とは五音音階の1つである。明治時代に洋楽の7音階をドレミファ…ではなく、ヒ・フ・ミ・ヨ・イ・ム・ナと称したが、この第4音(ファ)と第7音(シ)を抜いたド・レ・ミ・ソ・ラの音階のことだ。西洋中心の便宜的な俗称であり、詳細は避けるがいくつかのタイプがあり、アジア各地,ヨーロッパ周辺部,米インディアン等の音楽の特徴となっている。

■アルキメデス立体には正4面体の各辺の1/3部分から各頂点部を切り取った切頭4面体という立体があり、その双対立体に三方4面体という立体がある。正6面体の重心から各面を介して内部を外側に反転させた形でもある菱形12面体のように、正4面体の重心から各面を介して内部を外側に反転させて体積が2倍になった立体は体積比4である。この立体は三方4面体に実によく似ているが微妙に異なる。

■遥か昔に、半田kohsen氏と基本の立体は何かという話をしたことがある。彼はヌーソロジーの流れから、基本の中心核となる立体は正8面体になると言い、私はバックミンスター・フラーの多面体構造に対する考え方を元に正4面体ではないかと話した。以来長いこと多面体や幾何学的な話をしていないが、今ではどちらも正しいことが分かる。そして数は1でも2でもなく3から始まるのだということも。

■バックミンスター・フラーは多面体の基本単位を、直交3軸の正6面体の1辺ではなく正4面体の1辺にすべきだと主張している。確かに正4面体の1辺を基本の1として辺長が等しい正4面体と正8面体を考えれば体積比が1:4であることや、同じく正4面体とベクトル平衡体の体積比が1:20であることは複雑計算をしなくても見て取れる。どちらの考え方も自在に使えれば自由度はさらに増すだろう。