『ミルトン・エリクソンの心理療法セミナー

大切なあの人のメンタルに成長の種をまく「めんたね」 より

エリクソンの心理療法学習用書籍3:『ミルトン・エリクソンの心理療法セミナー』

『ミルトン・エリクソンの心理療法セミナー』星和書店

ジェフリー・K. ゼイク (編集), 成瀬 悟策 (翻訳), 宮田 敬一 (翻訳)

この本は大変に貴重な本です。

どのように貴重かというと、

エリクソン本人が行った心理療法セミナーを

書き起こしてまとめたものだからです。

他のエリクソン関連書籍は主にエリクソンの弟子たち、

ザイク、ヘイリー、オハンロンなどがエリクソンの症例を語ったり、

自分なりの視点から技法を抜き出してまとめたりしたものですが、

この本は「エリクソンの生の声」がそのまま収録されています。

ですから、この本を読むということは、

エリクソンの心理療法セミナーに

擬似的に参加するということなのです。

では、肝心の内容の方はと言いますと、

『アンコモンセラピー』同様に、難しいです。

エリクソンの言葉遣い自体は柔らかくわかりやすいのですが、

エリクソンが何を言おうとしているのかよくわからない場面がたくさんあります。

それは、彼がエピソードやメタファーを用いて、

セミナー参加者の無意識に様々なことを学習させようとしていたからであり、

そのためにわざと混乱を巻き起こすような話し方をしている部分も多いからです。

この本は二通りの読み方をすることができます。

まず最初は、本の中に出てくる他の生徒たち同様、

セミナー参加者の気分でただひたすらのんびり読んでいく。

それを何回か繰り返すことで、

エリクソンのセミナーに実際に出たのと近いような効果が得られます。

無意識でエリクソンの言葉を受け取り、

良い影響を受けたり、新たな理解を手に入れたりするのです。

それが十分に済んだなと思ったら、

次に、分析的に読みます。

今度はセミナー講師エリクソンに焦点を当て、

エリクソンの言動の意図を一つ一つ丁寧に探ります。

特にエリクソンの言動には

「なぜこの場面で、こんな意味不明なことを言うんだろう?」

と感じるものが多いはずです。

そこを流さずに、きちんとその理由を推測してみるのです。

その作業を通じて、エリクソンが二重にも三重にも仕掛けた罠(?)を

見抜けるようになってきたとき、

あなたもエリクソンを理解し始めたと言えるでしょう。