アマラーヴァティー(Amaravati)の美術

http://web.flet.keio.ac.jp/~bibiken/04conference/program/pdf/0523shimada.pdf 【アマラーヴァティー大塔の初期造営】 ロンドン大学 島田 明  より

本発表では南インドを代表する古代仏教遺構アマラーヴァティー大塔の初期(紀元前2世

紀~紀元前1世紀前半)の造営活動について、欄楯部材を中心に復元的に考察する。従来同

塔についてはサータヴァーハナ朝支配時代(紀元後1~3世紀)の造営活動が専ら注目され

てきた。しかし20世紀後半の発掘では、紀元前に遡るとみられる古様な花崗岩製欄楯柱や、石灰岩製の無装飾の欄楯が発見されており、花崗岩製欄楯柱についてはマウリヤ時代とする意見が有力視されている。しかし発掘データおよび部材の大きさから判断して、花崗岩製欄楯柱は無装飾の石灰岩製欄楯と共に一具の欄楯(初期欄楯)を構成していた可能性が高い。

また、欄楯に刻まれた銘文の書体は、ポスト・マウリヤ時代(紀元前2世紀)頃を遡りえな

い。すなわち花崗岩製欄楯柱を含め、初期欄楯はポスト・マウリヤ時代を遡り得ないと発表

者は考える。

一方、高さ2メートルを越える初期欄楯の大きさは、同欄楯および仏塔本体が小規模なも

のではなかったことを示す。注目されるのは後期の造営活動(私見では紀元前1世紀後半~

紀元後3世紀末)に増広された同仏塔の基壇外壁が、その内壁の半分の厚さしかないことで、これは最近桑山正進氏が指摘した、アーンドラの仏塔は内部の車輪状構造を構築する際、基壇外壁を常に最も厚く作るという原則と矛盾している。このことは基壇の増広時に何らかの理由で外壁を厚くできなかったことを示しており、その原因として初期欄楯の存在が想定される。つまり基壇の増広が行われた際、初期欄楯はそのすぐ外側に位置していたのであろう。

このことは前回の美術史学会全国大会で述べた、後期欄楯の造営が3期にわたる段階的、長

期的な造営と考えられることとも符合する。つまり後期欄楯の建造は、初期欄楯の段階的な

改修活動と理解すべきである。この初期欄楯の位置は、仏塔本体が増広前から既に大規模な

ものであったことを示唆しており、増広壁の内側で確認された分厚い内壁は、初期仏塔の基

壇外壁であった可能性が高い。このような厚い外壁を伴う車輪状構造の仏塔がアーンドラ地

方に出現した原因として、桑山氏の論考は紀元後1世紀の古代ローマ霊廟建築からの影響を

指摘する。しかしアマラーヴァティー近郊で最近発掘されたヴァッダマヌ仏塔(紀元前2世

紀)の例で知られるように、車輪状構造は紀元後1世紀以前より当地に存在し、仏教時代以

前より南インドで盛んにつくられた巨石墳墓は、車輪状構造と形態上類似する環状列石を伴

う。すなわちローマの影響を考えずとも、アマラーヴァティ-大塔の車輪状構造を説明する

ことは可能であろう。

つまり大塔のポスト・マウリヤ期の造営活動は、従来考えられてきた以上に大規模なもの

で、仏塔の大きさも後期のそれに近いものであった。このことは従来サータヴァーハナ朝時

代に集中しがちであった同塔の造営に関する議論に再考を促すものといえる。


http://kawai3.sakura.ne.jp/i-amaravati.html  【アマラーヴァティー(Amaravati)の美術】


https://saray.co.jp/busseki/3387/  【〔3〕南インドのアマラバティー仏教彫刻と仏教遺跡の旅】 より

 南インドの仏教遺跡を巡り、仏教美術を鑑賞するコースです。

 アマラヴァティーは紀元前2世紀から14世紀にかけて南インド最大というストゥーパと約20の僧院(学僧約1000人)があったといわれています。現在のアマラヴァティーは小さな町となり、遺跡もストゥーパの基壇が残っているのみです。しかし、間近に立つと往時のストゥーパの大きさがよくわかり、隣接する博物館にはストゥーパを縮小再現した模型の他、出土した仏像やレリーフが展示されています。

 タミル・ナードゥ州の州都チェンナイにある博物館には、アマラヴァティー様式の仏教彫刻が多く展示されています。

 ナーガールジュナ・コンダは大規模ダム建設に伴い、水没してしまう場所にあった複数の遺跡をナーガールジュナコンダ島に移設した遺跡コンプレックスとなっています。僧堂、僧院、仏塔といった遺跡の他にも、仏像、仏教彫刻が多数展示されている博物館は見ごたえがあります。特にこの遺跡で注目されるのは、上座部仏教と大乗仏教の教学センターであり、分かれ目であったことから、僧院の入口の左側にストゥーパ、右側に仏像を奉り、それぞれに礼拝したという僧院の建築様式で、他の遺跡には見られない様式です。

旅のポイント!

①南インドの著名な仏教遺跡(アマラヴァティー、ナーガールジュナ・コンダ)を訪ねます。

②チェンナイ、アマラヴァティー、ナーガールジュナ・コンダ、ハイデラバード、ムンバイの5ヶ所の博物館にて仏教関連の展示品を見学します。

③南インドの仏教美術を堪能できるコースです。(略)





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