将門記

https://blog.goo.ne.jp/shuban258/e/f229978af8880f1f5c85845c1795b0d3?fm=entry_awc_sleep  【『将門記(しょうもんき)』について】  より

昨日は、大手町の友人と夕方会いました。一杯の後、帰り際に、「将門首塚」に寄ってみました。薄暗い中、誰もいないので不気味でした。私を見ていた人も、おかしいと思ったかもしれません。

さて、本題です。先日来、平将門の一代記『将門記』について調べてみました。

●平将門の乱とは

平安時代中期、日本から「独立」を果たそうとした男がいました。平将門です。将門の地盤である東国では、民衆が朝廷から派遣される国司の暴政に苦しんでいました。地方の豪族をまとめ武装した将門は、各地の国司を次々と追放、ついに朝廷に対して、歴史上例をみない方法で東国独立政権樹立を宣言します。天皇に対抗し、自らが「新皇」に即位したのです。武力だけでなく、将門は象徴権力として、八幡大菩薩を主神にして天皇霊に対抗。さらに、当時朝廷が「祟り」として最も恐れていました「菅原道真の怨霊」を即位の儀式に召還し、朝廷を牽制します。東国の民衆も新しい王としての将門が、天皇に匹敵する権威を持つことに結束を高めていきます。単なる反乱を超えた将門の、新国家樹立による挑戦に朝廷は追いつめられます。朝廷は、全国の寺社に将門調伏の祈祷を命令。さらに前代未聞の秘策をだし、将門政権をつぶそうと、なりふり構わない攻勢をしかけます。この平将門の反乱こそ、律令体制を揺るがし、貴族社会から武家社会へ移行する大きな歴史的転換点となりました。

●真福寺本『将門記』のこと

『将門記』は「将門の乱」の詳細を知るためのほぼ唯一の史料です。乱の経緯や情景など詳しく描写されていますが、故事や比喩を多用する「軍記文学・軍記物」のさきがけとしても位置づけられています。もちろん「将門の乱」以後に書かれたようですが、成立年代には諸説があります。また、作者は不明です。現存する写本は数点ありますが、真福寺本(大須観音宝生院蔵・重要文化財)は最も古い写本の一つで、承徳3年(1099)書写の奥書があります。なお、常設展示はされておらず、実物の閲覧は難しいようです。

●真福寺本『将門記』を所有する「大須観音宝生院」

正式名を北野山真福寺宝生院といい、南北朝時代に今の岐阜県羽島市に創建されましたが、慶長17年(1612)に現在の場所(名古屋市中区大須2-21-47)に移転しました。地元の人たちからは「大須の観音さん」として親しまれています。日本最古の古事記写本(国宝)や将門記(重要文化財)をはじめ、和漢の古文書約15,000点を収蔵する真福寺文庫(大須文庫)もあります。

http://domestic.travel.yahoo.co.jp/bin/tifdetail?no=jtba3300540

●著書『真福寺本楊守敬本将門記新解』

村上春樹著  出版 : 汲古書院  税込価格 : 10,500

サイズ : A5判 / 362p  発行年月 : 2004.5

(内容)平将門の一代記「将門記」の真福寺本及び楊守敬本を底本とした注釈書。訓読文、注解、口語訳、解説から構成。各地に伝わる将門伝説の源を知る上でも地域の歴史を知る上でも貴重な一冊です。

http://books.yahoo.co.jp/book_detail/31382276/review

http://webcat.nii.ac.jp/cgi-bin/shsproc?id=BA67259330

●真福寺本「将門記」に記された人物評など

○ 将門の人柄を評した言葉

「侘人(わびびと)を済(たすけ)て気を述(の)ぶ。たよりなきものを顧みて力を託(つ) く。」

○常陸国を占領したあと将門が腹心に語った言葉(意訳)

「今すぐ東国諸国の国の印と倉の鍵をすべて奪い、 国司を都に追い返そう。そして東国を我らの手で治め、民を味方につけるのだ。」

○将門の軍勢の勢いを表す言葉(意訳)

「それぞれ竜のような駿馬にまたがり、雲霞のごときおびただしい従兵を従え、万里の山をおもこえ、十万の軍にも打ち勝とうという勢いであった。」

○朱雀天皇が将門の反乱に対し祈った言葉(意訳)

「今、平将門なる者が兵を挙げ、悪行をほしいままにし、国主の位を奪おうと企んでいます。どうかこの難儀をお払い下さい。」

○ 朝廷側が将門の反乱に対し加持祈祷で対応した時の様子を示した言葉(意訳)

「山々の阿闍梨(あじゃり)は、悪魔を祓い邪悪を滅ぼす法を修め、諸社の神官達は、悪鬼(あっき)を直ちに滅ぼすための式神を祭った。」

○将門が朝廷に向けて出した書状の内容(意訳)

「昔から武芸に優れた者が天下を征する例は、多くの歴史書に見られるところであります。日本の半分を領有する天運がないとはいえますまい。」

○平貞盛が兵を集めた時の様子を示す言葉(意訳)

「群衆を甘言でもってさそい、その配下の兵は倍になった。」

○将門の最期を描いた言葉(意訳)

「馬が、風の様に飛ぶ歩みを忘れた時、新皇に、神の射放った鏑矢(かぶらや)が突き刺さった。この時、新皇は、一人惨めに滅び去ったのである。」

○将門の悲劇を評した言葉(意訳)

「その悲しみは、開かんとするめでたき花がその直前に萎(しお)るるがごとく、今にも光り輝かんする月が思いがけず雲間に隠るるが如し」

 原文は、以下の通りです。

「哀哉新皇敗徳之悲滅身之歎譬 若欲開之嘉禾早萎将耀之桂月兼隠」


https://newikis.com/ja/%E5%B0%86%E9%96%80%E8%A8%98  【将門記】より

『将門記』(しょうもんき)は、10世紀半ばに関東地方でおこった平将門の乱の顛末を描いた、初期の軍記物語。

概略

平将門が一族の私闘(承平5年(935年)2月)から国家への反逆に走って最後に討ち取られるまで(天慶3年(940年)2月)と、乱の始末、死後に地獄から伝えたという「冥界消息」が記されている。 将門記の原本とされるものは残っておらず、『真福寺本』と『楊守敬旧蔵本』の二つの写本と11種類の抄本が伝わる。 和化漢文(漢文様式で表記された日本語文)で記載されるが、随所に駢儷体(べんれんたい)による修辞や中国の故事を取り込んでいる。 独特の文体ゆえ今日でも解釈が定まっていない箇所も少なくない。 『陸奥話記』や『奥州後三年記』とともに初期軍記とされている。

題名について

二つの写本は、いずれも冒頭部分が失われており、本来の題名はわからない。 鎌倉時代に成立した扶桑略記には「合戦章」という名称で将門記を引用し、歴代皇紀では「将門合戦状」という名称で引用している。 また、寛元三年(1245年)に作成された絵巻(吾妻鑑)には「平将門合戦状」と記されており、「平将門合戦状(章)」が本来の名称だったようである。 寛政11年(1799年)に植松有信が『将門記』の名称で真福寺本の木版本を発行し、以降この名称が一般的となった。

写本

真福寺本

『真福寺本』は名古屋市の真福寺に伝わるもので、大須本、真本ともいう。 承徳三年(1099年)に書き写したという意味の奥書がある。 巻首を除いてほぼ全文が残る唯一の写本。 返り点や振り仮名、声点なども加筆されていて、国語学上の重要な資料とされる。 明治30年に旧国宝に指定され、現在は国指定重要文化財に指定されている。

楊守敬旧蔵本

『楊守敬旧蔵本』は、明治時代初期に来日した清国人の楊守敬が所持していたとされるもので、楊本ともいう。 真福寺本に比べて欠落部分が多い残欠本である。 現在は日本の民間人が所有するが、楊守敬に渡った経緯も日本に戻った経緯も不明である。 『弁中辺論』という経典の紙背に書写されている。 昭和18年に旧国宝に指定され、現在は国指定重要文化財に指定されている。

山田忠雄は両写本を比較研究し

としている。

成立年代

成立年代は不明で、諸説入り乱れている。 星野恒は巻末に「天慶3(940年)年6月記文」とあることで、将門死去(同年2月)の直後に書かれたとする説を唱えたが、早くから疑問が上がっていて現在では否定されている。 真福寺本には菅原道真の官位が左大臣正二位(楊守敬旧蔵本では右大臣正二位)と記されていることより、道真の死後、923年に右大臣正二位に復され、993年に正一位左大臣(同年に正一位太政大臣)を追贈されるまでの間とする説や、冥界消息にある『闘争堅固』が末法を示す語であることより11世紀中頃とする説などがあるが、おおよそ11世紀前期から11世紀末期と考えられる。

作者

作者についても諸説があり見解の一致を見ないが、川尻は大きく3つの説に分けられるとしている。第一の説は東国で作成されたとする説で、将門の動向が詳細に記載されている事から中央で作成されたとは考えにくいとしている。第二の説は中央で作成されたとする説で、将門が藤原忠平に宛てた書状について詳細に記載されていることから、忠平に近い人物とする。第三の説はその折衷案で、東国で書かれた原文が中央で加筆されたとする説である。

八幡神と武家政権

平将門は『将門記』では939年に上野の国庁で八幡大菩薩よりの神託をうけて「新皇」を自称した。このように八幡神は武家を王朝的秩序から解放し、天照大神とは異なる世界を創る大きな役割があり、武家が守護神として八幡神を奉ずる理由であった 。

参考文献

梶原正昭(訳注)『将門記』1、平凡社〈東洋文庫〉、1975年。ISBN 458280280X。

梶原正昭(訳注)『将門記』2、平凡社〈東洋文庫〉、1976年。ISBN 4582802915。

川尻秋生「将門記とその時代」『将門記を読む』川尻秋生編、吉川弘文館、2009a。ISBN 978-4-642-07159-8。

佐倉由泰「文学からみた将門記」『将門記を読む』川尻秋生編、吉川弘文館、2009年。ISBN 978-4-642-07159-8。

林陸朗校注、「将門記」 <古典文庫67>現代思潮新社

福田豊彦「『将門記』への手引き」『平将門資料集 付藤原純友資料』岩井市史編さん委員会、新人物往来社、1996年。ISBN 4-404-02384-7。

松林靖明、矢代和夫ほか校注・訳 『日本古典文学全集41 将門記』小学館

村上春樹『物語の舞台を歩く 将門記』山川出版社、2008年。ISBN 978-4-634-22410-0。