ブルームーンと月うさぎ伝説

https://www.hanafubuki.co.jp/magazine/2020-10/ 【ブルームーンと月うさぎ伝説】より

今年の秋はまるで駆け足のよう。酷暑の夏が過ぎたと思ったら、朝夕めっきり涼しくなったこの頃。鰯雲に燃えるような夕焼けが刻々と時を刻んでいく。ため息が出るほど美しい。

春先からステイホームや生活の変化で疲れた心と身体を癒したいと思うと、居ても立ってもいられなくなる。そう言えば、踊り子号がリニューアルしてより快適になったと聞く。今からでも飛び乗って常宿で秋の夜長を満喫するのがいいかも。

10月のお月さま

今年の中秋の名月は10月1日。十五夜と呼んで昔から月を楽しむ習慣があるけれど、ブルームーン(Blue Moon)と呼ばれる満月をご存じでしょうか。魅惑的なイメージがするこの月は、直訳の「青い月」ということではなく、「ありえない・滅多にない」という意味から来ていて、今では「ひとつきに満月が2回ある場合の、2回目の満月」を指すことが多いとされます

2020年の10月は満月が2回。10月2日朝6時05分と、10月31日夜23時49分頃だそうなので、ブルームーンにお目にかかることができるかもしれませんね。

月うさぎの伝説

御伽噺では「月にうさぎが住んでいる」と。月うさぎ伝説にも諸説あるよう。一般的に言われているのは次のようなお話。

『昔、あるところに兎と狐と猿がいました。ある日、疲れ果て飢えた旅の老人に出会い、3匹は老人のために食べ物を探します。猿は木の実を、狐は魚を獲ってきましたが、兎は頑張っても、何も持ってくることができませんでした。そこで悩んだうさぎは、「私を食べてください」と火の中にとびこみ、自分の身を老人に捧げたのでした。その老人とは、3匹の行いを試そうとした帝釈天(タイシャクテン)という神様でした。帝釈天は、そんな兎を哀れんで、月の中に甦らせて、皆の手本にした。』というお話。

では、どうしてうさぎは餅をついているのか。というと「満月」のことを「望月(もちづき)」とも言っていたことから、それが転じて「餅つき」になったという説も。

月の呼び方いろいろ

「十五夜」の月見が盛んになったのは、平安時代なのだそう。

月見は800年代中頃に中国から伝わって貴族の間に広まった催し。月を見ながら酒を酌み交わし、船の上で詩歌や管弦に親しむ風流な習慣だったようです。 貴族たちは空を見上げて月を眺めるのではなく、水面や盃の酒に映った月を愛でたのだとか。平安の貴族の方々は、なんとも豊かな感性。

「十三夜」

中秋の名月の次の名月のこと。旧暦の9月13日から14日の夜にあたる。大豆や枝豆、栗を供えることから「豆名月」、「栗名月」と呼ぶことも。十五夜より少しかけのある十三夜は秋晴れの日が多く、十五夜と同じように月が美しいと言われます。2020年の十三夜は10月29日。

「十日夜」(とおかんや)

半月よりすこしふくらんだお月さまの呼び名、「十日夜」は、旧暦10月10日。月齢が十日目にあたるので「十日夜」と呼ばれる月なのだそう。2020年は11月24日。

「十六夜」(いざよい)

中秋の名月の翌日の月。2020年の十六夜は10月2日です。(十五夜の翌日)

十六夜と書いて「いざよい」と呼ぶその由来は、「猶予う(いざよう)」という言葉に由来するそう。「いざよう」とは、躊躇するという意味の古語です。十六夜の月は、満月の十五夜の日より、周期の関係で50分遅くれで現れます。その遅れている様を、「躊躇しながら出てきている」と「猶予いざよいの月」と呼んだのだそう。日本語って美しいですね。

他にも、「立待月」(たちまちづき)十六夜(いざよい)の月よりも遅く、夕方、立って待っている間に出る月のこと。

「居待月」(いまちづき)18日目は、待ちくたびれて座ってしまうので居待月。

「寝待月」(ねまちづき)19日目は、もう床に入って待つから「寝待月」。

「更待月」(さらまちづき)20日目は、夜も更ける頃なので「更待月」。

「有明月」(ありあけづき)26日目は、夜明け(有明)の空に昇るから「有明月」。

月の名前を知って月を眺めると、その美しさもまた、ひときわ冴えて見えてくるよう。夜空の月を見上げていると、去りゆく夏と訪れる秋の風に心が癒される気がしてきます。

さてさて、今夜は月の美しさを堪能しながら、花吹雪自慢の献立「長七」を美酒と一緒に楽しむとしましょうか。作物への感謝の気持ちも込めながら。