http://fc3884.blog35.fc2.com/blog-entry-139.html 【おそばのくきはなぜあかい 石井桃子】より
石井 桃子作 初山滋絵 岩波書店 刊 「おそばのくきはなぜあかい」
お蕎麦と麦が、白い髭のお爺さんに出会います。
川に橋がないので、お爺さんは、向こう岸へ渡ることが出来ません。
麦は冷たいから断わりましたが、親切な蕎麦は、冷たい真冬の水の中をお爺さんを、おぶって川を渡ります。
蕎麦の脚は、冷たさで真っ赤になりました。そのため、蕎麦の茎は今も紅いのだということです。
ところが・・・この老人は、実は・・・穀物の神様だったのです。
「おししのくびはなぜあかい」
あるところに元気な猿がおりました。退屈な猿は、お獅子と遊ぶ事にしました。
お獅子に勝負を挑まれた猿は、負けない様に智恵を使い、何度もお獅子に勝ちます。
その結果、お獅子の首は、真っ赤になってしまったのですが・・・
「うみのみずはなぜからい」
貧しかった弟は、白い髭の老人から不思議な事を教えてもらいます。
教わった通り、小人に魔法の石臼をもらって、大金持ちになってしまいますが、
うらやましくなった金持ちの兄がやってきて、その石臼を盗んでしまいます。
兄は、船に石臼を乗せて行くうちに塩が舐めたくなり、魔法の石臼から塩を出しますが、
止め方を知らなかったので、どんどん塩は出続け船もろとも沈んでしまったと言う事です。
海の底では、今も、あの石臼が塩を出し続けているので海の水は塩辛いのです。
「おそばのくきはなぜあかい」「おししのくびはなぜあかい」「うみのみずはなぜからい」
の3作品が収録されております。
初山滋氏の美しい幻想的なイラストは、地味なのですが、忘れられない印象を残しますね。
「むかし むかし おおむかし くさや木がまだ口をきいていた頃のお話です」
の語り口で始まる、典型的な日本の昔話ですが、グリム童話にも、共通する残酷性も備えており、幼年期には、ややショッキングな場面もございます。
https://lifeskills.amebaownd.com/posts/10893127 【『おそばのくきはなぜあかい』 石井桃子・初山滋 岩波の子どもの本】 より
岩波の子どもの本で、石井桃子さんのオリジナル作品があります。祖父から聞いた話を再話したという昔話です。
おそばのくきはなぜあかい―にほんむかしばなし (岩波の子どもの本)
おそばのくきはなぜあかい おししのくびはなぜあかい うみのみずはなぜからい
おそばのくきはなぜ赤いのか。それは身分を隠した穀物の神さま(見た目はおじいさん)が川の向こうに行きたいと言い、麦はその願いを断りますが、おそばはおじいさんをおぶって冷たい川の中を歩いて渡ったからなんです。
ソバの茎の下はなぜ赤いのか、という由来話は『房総の民話』の中にもありました。
房総の民話 ([新版]日本の民話 26)
千葉県山武郡で採集した「お月さまのたすけの綱」という話の中です。その赤はなんと…人食い鬼の血なんです。
おししのくびが赤い理由は、おししがさるとの知恵合戦に負けたから。森の王様だと自負しているおしし。さるが遊ぼうと誘いにきたとき、さるのようなちびと遊ぶのはおかしいと笑います。さるは負けていません。ちいさくたってりこうだと、おししとのかけっこを知恵を使って引き分けに持ち込みます。翌日、おししの方からさるの元にやってきて言うことには「わがはいが どのくらい えらいか みせてあげよう」。そうして大きな声で吠えようとします。一度吠えると地面が揺れ出す。二度吠えると木が倒れる。三度吠えると首が飛んでしまう。それを聞いたさるは、おししが三度吠える前に、こっそり両方の耳にこけをつめたのです。おししは真っ赤になって唸り、吠えます。すると飛んでしまったのはおししの方の首でした…さるはその首を唐草模様のふろしきに包み、お友達に見せようとしますが、ふろしきは首にくっついて、もう取れなくなっていました。獅子舞がかぶる獅子頭は、そのときのおししの首だということです。
海の水はなぜからいか。それは、海の底に沈んでいる石うすが、ずっと塩を出し続けているから。その石うすは、貧乏な弟がこびとから得たものでした。金持ちでいじわるなにいさんが、お米を借りに来た弟を追い返した道すがら、弟はおじいさんに出会います。困っている弟におまんじゅうをあげ、こびとたちがこれを欲しがるだろうから、石うすと交換しなさいと言ったのです。
その石うすはこびとたちの大事な宝で、右に回すと欲しいものが何でも出る。左にまわすとそれが止まる。貧乏な弟は、そのおかげで立派な家で、たくさんのごちそうでお正月を迎えることができました。村の人たちを大勢呼んで、お祝いしていたところ、いじわるなにいさんもやってきて石うすの秘密を知り、持ち去ってしまうのです。舟に乗って、石うすといっしょに盗んできたごちそうを食べたら口の中が甘くてたまらなくなり、塩を出そうと石うすを回し、どんどん出てきますが、止め方がわからない。よくばりにいさんは舟と石うすもろとも、海の底に沈んでしまうのです。
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あらすじをわたしのことばでまとめてみましたが…
読めば読むほど、石井桃子さんの文章は、やさしいことばで過不足なく、おはなしが語られていることに気づかされます。
すでに63年も前に発行された本ですが、これからも残っていくことでしょう。ぜひ、これからの若い世代の親子にも読んでもらいたいおはなしです。
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