https://amanokakeru.hatenablog.jp/entry/2020/04/13/071510 【蕪村俳句と比喩―声喩(オノマトペ)】 より
声喩(オノマトペ)は、物の音や様子をそのままに、擬音語・擬態語を使って表現する。
[擬音]物や動物が出す音を描写する。
ばらばらとあられ降(ふり)過(すぐ)る椿哉
出代や春さめざめと古葛籠(つづら)
雨ほろほろ曾我中村の田植哉
朝霧や杭打(くひぜうつ)音丁々(たうたう)たり
錦(にしき)する野にことこととかがし哉
遠近(をちこち)おちこちと打(うつ)きぬた哉
ぽきぽきとふたもと手折(たを)る黄ぎく哉
あなたうと茶もだぶだぶと十夜哉
地車(ぢぐるま)のとどろとひびくぼたんかな
[擬態]心情や状態を表す。
ひよろひよろとなをつゆけしやおとこへし
てらてらと石に日の照(てる)枯野かな
宿替(やどがへ)にすぽりとはまる火燵(こたつ)哉
沙(しや)弥(み)律師(りつし)ころりころりと衾哉
入道のよよとまゐりぬ納豆汁
春の海終日(ひねもす)のたりのたり哉
https://amanokakeru.hatenablog.jp/entry/2020/04/12/071623 【蕪村俳句と比喩―提喩】より
提喩は、全体を部分で代表させる喩法で、換喩の一種とも見える。象徴・暗示とも。
梅折(をり)て皺手(しわで)にかこつかほり哉
*皺手で老人を象徴、代表させている。
養父入(やぶいり)や鉄漿(かね)もらひ来る傘の下
*傘の下で人がいることを暗示。
春雨の雫(しづく)うれしき烏帽子(えぼし)哉
足よはのわたりて濁るはるの水
ふどしせぬ尻吹(ふか)れ行(ゆく)や春の風
出代や春さめざめと古葛籠(つづら)
*出代(でがはり): 奉公人が交代すること。句は、長年仕えた下女が古葛籠を持って名残惜しさに泣いている情景。春さめ、降る が掛けられている。
花ちりて身の下やみやひの木笠
*芭蕉句「吉野にて桜見せうぞ檜木笠」を背景に、吉野へも行かず終いで、桜の花は散り木下闇になった。この笠は自分の身の闇をなすのみだ、と詠む。
麦刈(かり)ぬ近道来ませ法(のり)の杖
鮓の石かろき袂の力かな
佐保(さほ)川のほたるに遊ぶ上草履(うはざうり)
秋の野や鳥うたんとてゆく袂(たもと)
足よわのわたりて濁るはるの水
痩脛(やせずね)の毛に微風有(あり)更衣
雨後の月誰(た)そや夜ぶりの脛(はぎ)白き
https://amanokakeru.hatenablog.jp/entry/2020/04/11/072409 【蕪村俳句と比喩―換喩】より
換喩は、ふたつのものごとの隣接性・縁故にもとづく比喩。アンリ・モリエ『詩学とレトリックの辞典』によれば、「あるひとつの現実Xをあらわす語のかわりに、別の現実Yをあらわす語で代用する言葉のあやであり、その代用法は、事実上または思考内でYとXを結び付けている近隣性、共存性、相互依存性のきずなにもとづくものである。」(例)赤頭巾ちゃん
夕立や足のはへたる明俵(あきだはら)
*夕立に遭い、明俵を被って駆けだしている人の姿を詠んでいる。
月の友石(いし)山寺(やまでら)の傘(かさ)二本
*石山寺に傘をもって月を見に来ている友達ふたりを暗示している。
初雪や草の戸を訪(と)ふわら草履(ざうり)
風呂入(ふろいり)に谷へ下るや雪の笠(かさ)
春雨やものがたりゆく簑と傘
水鳥や枯木の中に駕(かご)二挺(にちよう)
こがらしや何に世わたる家五軒
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