https://yakusoutohana.shop-pro.jp/?pid=127578507 【シャリンバイ(車輪梅)】より
シャリンバイ(車輪梅)Rhaphiolepis indica(L)Lindl ex Ker var umbellata (Thunb.) H.Ohashi
真正双子葉植物Eudicots>中核真正双子葉植物Core Eudicots>バラ類Rosids>マメ群Fabids
バラ目Rosales バラ科 Rosaceae シャリンバイ属Rhaphiolepis
和名 :車輪梅 利用部位 :樹皮、材 利用 :染料(大島紬)
名前の由来 :枝葉のつき方が車輪状につくことと花がウメに似ることから。
本邦南部、九州などの暖地の海岸に自生する常緑の潅木。葉は厚く、鋸歯があるものからないものまである。花は春に咲き、厚ぼったいものの、バラ科の特徴をよく示している。果実は直径1cmほど、黒紫色で秋から冬にかけて熟す。元々海岸の植物であり、乾燥に強いことに着目され、近年は街路樹や路側帯に植栽されることが多い。
樹皮や材にタンニン4~5%をふくみ奄美大島の特産品である大島紬の褐色染色に使用されることでも有名。大島紬は絹糸をシャリンバイの浸出液と鉄分の多い泥土で染め手織りしたもの。シャリンバイの樹皮、材や根を鉄釜で少量の木灰とともに煮出して浸出液を作り使用する。地上部より根が良く、古木や、やせ地に生育したものほど良いとされる。浸出液に絹糸を浸しよく液をしみこませ乾燥させ、また浸す。この操作を何度も繰り返す。ついで鉄分の多い泥田に染色糸を浸し水洗、乾燥という操作を繰り返し、染色の状態を見て仕上げるなど、手間暇かけた行程を繰り返す。
タンニン酸色素と泥田の中の鉄分(酸化第2鉄)等が化学結合し味わい深く堅牢な色彩が生み出される。奄美の風土が無ければ決して生み出されなかった染色方法といえる。
http://dorozome.com/dorozome/ 【肥後染色と泥染め】 より
フランス・ゴブラン織、ペルシャ絨毯と並ぶ、世界三大織物の一つといわれている大島紬。
自然に敬意を表し柄を織り込む。世界でも類いまれな技術でおられる「大島紬」
その美しさの裏には、機会では不可能といわれている繊細な技術がある。染められた縦糸とよこ糸を組み合わせ、まるで小さな点を集めて絵を描くかのように仕上げるという見事な柄。糸一本分のずれも許されない・・・・。
染料をつくる
泥染めの工程は、島に自生する方言でテーチ木(シャリンバイ)をチップ状にすることから始まります。
海岸近くに自生する常緑樹。名前の由来は、葉が車輪のように輪生状につき、花が梅の花に似ることから。4-6月に枝先に円錐花序をだし、1-2cmの白色の5弁花を多数つける。葉は革質で光沢があり、互生し、葉身は4-8cmの楕円形。10-11月に果実は黒紫色に熟す。樹皮から大島紬の染料を採取する。大気汚染に強く道路脇に植栽される。
直径が7~8cm以上で、島の土壌で育ったテーチ木を細かくチップ状 (約600kg)にし、千斤釜で約二日間煎じ、成分(タンニン、ポリフェノール等) を抽出します。沸騰させては水を足し・・・を何度も繰り返します。煮出した染料は1週間ほど自然に冷まします。冷ます過程で空気中の微生物が糖分を食べに混入することで、自然に醗酵していきます。すると茶褐色の少しトロミを帯びた状態になり、同時に独特のにおいを 発します。一回で約2000Lの染料が出来ます。
温かい段階では「アルカリ性」ですが、冷めて常温になることで「酸性」へと変わっていくのです。
また、染料を煮出す燃料は、前回煮出し終えたテーチ木のチップを使用するため、無駄がありません。まさに先人の知恵。
泥染めは、奄美大島紬組合の規定にシャリンバイを煮出した染料で染め、泥でバイセンすることと決まっているのです。
切り出されたテーチ木は、1mほど残し切り出されるため、10年後にはまた染料として使えます。
テーチ木染め
染めるべき絹糸は長い糸で1本16000m(16km)もある。重さにして4~5kgもある
その時々の気候、時間、糸の状態をみながらテーチ木の煮汁で染め、染めては絞り、染料を入れ替えしてはまた染める。 するとテーチ木の色、茶色の褐色になります。空気に触れさすように染めるのがコツ。漬けているだけでは染まりません。また、糸を切らないよう素手で行ないます。
途中、石灰水に中和します。テーチ木の染料は酸性ですので、石灰のアルカリ性と中和することで濃度が増します。いわば、テーチ木に含まれる「タンニン」をひつける為の役割です。
①石灰水に浸す→②テーチ木の染料で染める(7~8分)→③染料を半分捨て、新しい染料を足して染める(7~8分)→④また染料を半分捨て、新しい染料を足して染める(7~8分) そして色を安定させるため完全に乾燥させます。
この4つのサイクルで染めていきます。この流れを3回することで12回染め 泥に入れるためにはこのサイクルを3回ほど繰り返します。36回染め
泥に入れてはまた染めていきますので、大島の糸を仕上げるには80~90回も染めるのです。染めの良し悪しは職人の長年の経験と感が頼り。
テーチ木染めしたものを次は泥田で染めます。 染めるというよりは、泥に含まれる鉄分(Fe)をタンニンと反応 させる 、泥でコーティングするといったほうがいいでしょう!。「鉄媒染」といいます。媒染することにより、茶褐色の糸が黒い褐色へと変化していきます。
そうすることで、色が安定し糸はしなやかになるのです・・・・・・・。
泥染めの田んぼは、切り立った山裾にあります。雨水が山の栄養分を泥田に運びます。
田に住む微生物が泥を分解することで下記のような特徴になります。
奄美の泥の特徴
・きめが細かく粒子が丸い。(糸が傷つかない)
・自然界に存在する鉄分が豊富(赤土の土壌)
琉球列島の付近に分布する150年前の粘土地層には鉄分(ニ価鉄)が多く含まれている。奄美でも龍郷町の土地には、およそ150万年前の粘土地層が奇跡的に150万年前のまま残っていたことで、泥染めの盛んな地域でもあります。
泥に入れることにより、糸はしなやかになり、ツヤがでてきます。また、防虫効果や静電気防止、消臭作用、いろんなメリットがあると考えられます。
粒子が結合しますので、色ががっちりとスクラムを組む感じになります。結合力が増しますので、退色防止等泥でコーティングすること によりたくさんのメリットが得られるのです。 泥に漬込む時間は温度、気候によって違ってきます。(夏は染まりやすい、冬は染まりにくい)
これだけの工程1回では完全な黒褐色にはならないので、この一連の工程を3~4回繰り返すことで、やっと奄美の泥染め独特の深みのある黒褐色が生まれるのです。(大島紬の糸は形状や量によりますが、一週間~10日ほどかけて染め上がります)
色のレイヤー(階層)が深いので、科学染料で合成し得ない独特の渋みのある色合いになります。
また、テーチ木の煮汁、自然の泥といった自然染料を使う為に、若干色落ちしたり、仕上がりが均一でなかったりしますが、手染めの温かさやわらかさ、またエージング(色の変化)も楽しめます。
島に自生するテーチ木と鉄分を多く含む田の泥を染料として染める方法はまさに、島の大自然と人の歴史によって生み出された技術です。
泥でバイセンした糸は、キレイな川の上流で洗い流します。泥の細かい微粒子は川の流水でないとなかなか洗い切れません。
(奄美に生息する毒蛇「ハブ」に注意。夜行性なので昼間は木陰や草むらに隠れているため)
泥を洗い流した糸は、再び工場に持ち帰りテーチ木染めを行ないます。さらに色を深めていきます。
このテーチ木染め、泥染めを交互に3~4回繰り返すことで。大島紬の独特の黒は生まれるのです。
染色には豊富な水も条件です。奄美大島名瀬の年間気温21.6度、年間降水量2913.5ミリメートル。地下水も豊富です。
泥染めはほぼ手作業で行ないますが、絞る作業はこの巨大な業務用脱水機を使用します。
あと、機械等使用するのは、テーチ木をチップにする機械と、乾燥機のボイラーのみです。
その他の作業は昔と変わらず、手作業で行なわれます。
回数がふえるにつれ濃い色合いになっていきます。色のレイヤー層が深くなっていくということです。
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