「眠い」と「睡い」の違い

https://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03338_04 【漢字から見る神経学 [第15回]睡と眠】 より

普段何気なく使っている神経学用語。その由来を考えたことはありますか?漢字好きの神経内科医が,数千年の歴史を持つ漢字の成り立ちから現代の神経学を考察します。

福武 敏夫(亀田メディカルセンター脳神経内科部長)

(前回よりつづく)

 睡眠は神経学の大事なテーマです。前漢の『易林』に「耆蒙睡眠」と書かれているのが,調べた限り中国での睡眠という言葉の初出です。睡は目+垂(花が垂れ下がる形)から成り,まぶたを垂れて眠る様子を表し,どちらかというと「坐して眠る/いねむり」のこと。眠は目+民から成り,民は艮とよく似ていますが,人の片目を針で刺した象形です。これは目をつぶされた奴隷の意味を持ち,同じく眠ることを表します。しかし,眠の本字は瞑と言われ,これは眼をつぶる(→瞑想)とか永眠(→瞑目)とかの意味を持つようです。以上から,睡眠深度では睡<眠のように思います。

 明治政府によって編纂された百科事典の『古事類苑』には「睡眠病」の項があり,2つの文献が紹介されています。まず,『中右記』(平安時代後期のある公家の日記)には,「此曉,……藤忠宗薨,……一昨日仁王會検校勤仕,夜前俄不例,暁頓滅也,年來睡眠病也,睡眠病人二人已夭亡,……尤可恐病也」(筆者訳:今朝早く,……藤原忠宗がみまかった。……一昨日仁王会で監督を務めたが,その夜にわかに床に臥し,今早朝に急死した。長年睡眠病を患っていた。睡眠病では既に2人が亡くなっており……恐ろしい病気だ)とあります。もともと「睡眠病」持ちの若い男性が急に床に臥し,翌々朝亡くなったことから,重度の睡眠時無呼吸症候群による致死的不整脈の可能性があります。

 次に,1847年に書かれた『異疾草紙』(『病草紙』の写本)には,「なま良家子なるおとこありけり,すこしもしづまれば,ゐながらねぶる,人のいかなることをせむもしるべくもなし,まらう人のとき,まことにみぐるしかりけり,これも病なるべし」とあります。ここの「まらう人」は客人のことで,「ゐながらねぶる」はナルコレプシーなどの過眠症と思われます。

 なお,現代中国では睡眠時無呼吸症候群は「睡眠呼吸暂停綜合征」,ナルコレプシーは「发作性睡病」,レム期睡眠行動異常症は「快速动眼期睡眠行动障碍」です。


https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10149074555?__ysp=552h44Go55yg 【「眠い」と「睡い」の、違いって何ですか?】 より

ベストアンサー

「睡眠」という熟語があるように、「眠る」も「睡る」も<心身の動きが一時的に低下し、目を閉じて無意識の状態になる>ことを表します。

「常用漢字表」の音訓欄では「睡」に「ねむる」の字訓が掲げられていませんので、現在の表記では「眠い」に統一されています。

「眠る」

「冬眠」「不眠症」「永眠」などの熟語があるように、もともと「目を閉じる」(=瞑る<つぶる・つむる>)という意があり、転じて「横になって休む、寝る」という意味を表すようになりました。

また、「眠る」には、「地下に眠る資源」「倉庫に眠っている道具」などのように、利用されないでいるという意味があります。また、「父母の眠る墓地」のように、死ぬ、永眠するという意味でも使われます。

....用例:「うるさくて安らかにぐっすり眠ることができない」(=安眠)

............「熊は冬の間、眠る習性がある」(=冬眠)

............「眠れない夜が続く」(=不眠症)

............「祖母は眠ったまま、遂に二度と目をあけなかった」(=永眠)など

「睡る」

「熟睡」「午睡」などの熟語があるように、「まぶたがたれ下がる」という意から「すわったままねむる、いねむりをする」という意を表します。

....用例:「ぐっすり眠った(=熟睡した)ので寝起きがいい」

............「30分でも睡って(=仮睡して)おかないと倒れてしまう」

............「幼児は昼間も睡る」(=午睡)

............「電車の中で睡る」など