https://1000ya.isis.ne.jp/1136.html 【パターン思考のすすめ】 より
1.はじめに
この図形をご存じでしょうか。上下の三角形を組み合わせたこの図形は、通常、六芒星とか、ダビデの星とか呼ばれている。この図形は、また、この頂点を結んだ6角形と共に示されるケースも多く存在します。 実はこの図形、古くから、不思議な力をもった図形として有名であり、日本でも、カゴメ紋(亀甲紋)と呼ばれており、伊勢神宮の灯篭にもこの印が刻まれているといわれます。
ところが、ただ不思議な力があると噂があるだけで、だれも「なぜ、この図形が不思議な力をもっているか」という説明はありませんでした。しかし、これだけ、長らくの間さまざまなところで使用されているからには、やはり、この図形になんらかの秘密があると考えた方が自然かと思います。私は、その答えのひとつとして、この図形が実は「宇宙のしくみを解き明かす示す役割」を果たしているのではないだろうかと考えています。これは、決して突拍子もないことではありません。なぜなら、自然界のものは、六角形を形成することが非常に多いからです。
ある時、東洋医学の経絡に関して、これが六房星で表されるのではないかと思い、このパターンに展開してみて驚きました。そして、これがあまりにも見事にこのパターンに当てはまったからです。しかも、経絡は人間の体を研究し、古人が気の流れを見いだしてきたものですから、思想的な背景から生まれたものではありません。
2.経絡が示す六芒星の星の秘密
では、私が確信をもつきっかけとなった経絡のことについて説明しましょう。
古代より中国では、人間の体を気の流れる身体としてとらえてきました。この気が流れる道が経絡と呼ばれ、この経絡の中の特にポイントとなる場所が経穴、いわゆるツボです。また、経絡には、主要な幹線である12経脈、そしてそのバイパスとして管理・調整する機能有する8本の奇経、そして12経脈の分岐ルートである12経別、15経脈および孫脈などと呼ばれるものが存在すます。この、12経脈は、いくつかに種類に分類され、上肢を通るものは「手経」、下肢を通るものは「足経」と呼ばれます。また、体の表面や背中側を通るものは「陽経」、体内や腹部側を通るものは「陰経」と呼ばれ、さらに、陰と陽は、それぞれ3種類に分類され、しかも、これらの経絡をある一定の順番でエネルギーの移動して行くと言われています。
これを、陽と陰を一つのペアとして考えて、六房星の形に展開してみると、下のような図形となります。図形は、手の経絡の三角形と足の経絡の三角形とが上下に合わさった図形となります。それだけではなく、エネルギーの循環にも見事に適応しています。こんなことが何の役に立つのだろうと思う人もいるでしょうが、このようなパターン化することによって様々なことが見えてきます。
例えば、上三角にある、肺と心臓は西洋で内蔵の中心と考えられている臓器であるのに対し、下三角の肝臓と腎臓は東洋で中心と考えられている臓器です。対角線はお互いに補い会う関係になりますが、肺と腎臓はともに2個ずつ上部と下部に存在し、また、心臓と肝臓は、ともに1個ずつ体の右と左に存在しています。また、ストレスで神経をやられると胃が悪くなるというが、神経を司る三焦経の対角線上に胃がきているのも、面白いと思います。
このように、いろいろな事象を特定の図形に転換することによりその性質を検討することができるのです。現代科学を中心の考え方では、このような考え方は「そんなバカな」の一言で終わるでしょうが、実は古代からの人間の思想の原点はこのような考え方にあるのです。東洋の易にしてもしかり、西洋の神秘思想カバラにしてもしかり、このように古来より人間の哲学の基本にあった考え方を、私は、「パターン思考」と呼んでいます。
3.パターン思考とは何か
では、パターン思考とは何でしょうか。
自然現象や人間についてさまざまに観察したとき、そこにある種の特定のパターンが発生しているとします。これを、ある種の図形に置き換えて、その相関関係を示し、実用的に使用という思考方法です。この図形で表された相関関係をもとに、色々な現象を分析したり、研究したりしますが、なぜこのような相関関係が存在するのかはあまり問題になりません。
例えば、春に芽が出て、秋に実が実り、冬に涸れていく、という自然の現象について考えてみましょう。その原因は分からなかったとしても、秋に収穫をしたいと思ったら、春に種を蒔けば良いということはこのパターンを理解していれば分かるわけであり、実用的にはこれで十分なわけです。このように因果関係や対応関係などを観察し、それを応用することが、パターン思考というわけです。分析科学が発達する以前の学問の伝統は、このようなパターン思考が主流だったのです。
たとえば、西洋の哲学には、ギリシャ・ローマ文化とキリスト教と呼ばれる大きな2つの精神的な伝統がありますが、実はこれらの奥に「カバラ」と呼ばれる神秘的思想の伝統があります。そして、この「カバラ」こそは、天文学と化学の母となった占星術や錬金術の思想的な基盤となっていたのです。
「カバラ」では、「生命の樹」と呼ばれる図形パターンを使用して、さまざまな事象の解析を行います。この「生命の樹」とは、10個のセフィロト(複数形、単数形はセフィラー)と呼ばれる光とそれを結び付ける22の経路で表されます。この「生命の樹」と呼ばれる図形パターンは、さまざまな事象に対して適応されます。例えば、宇宙と惑星の関係であり、また、人間の基本的構造等にも適用されます。そして、セフィロトは、惑星や人間の構成要素に、また、この22の経路はヘブライ語のアルファベットの22文字や、タロットの22枚のカードにつながって行くことになります。
また、東洋でも「易」と呼ばれる哲学があります。「易経」の紀元については謎につつまれていますが、紀元前1143年に文王によって現在の形にまとめられ、後にその子と周公によって解明されたとされます。有名な心理学者ユングも、その信奉者であり、膨大な時間をかけて易の研究をしています。「易」と同様に、「五行」と呼ばれる思想も東洋の思想の根底をなしています。この思想では、全てのものを「火」「水」「木」「金」「土」に分類し、この5つのパターンの関係から、すべての事象を説き明かそうとします。これもまたパターン思考と言えるでしょう。
4.自然界は正六角形で構成されている
平面を、同じ図形で埋めるという平面分割は、モザイク模様などの例をみるまでもなく、華麗なる美を作り出します。しかし、同じ大きさの正多角形で平面分割を行なおうとすると、その図形は限られてくるのです。すなわち、正三角形、正四角形、正六角形の3種類のみです。「かたちの不思議」(高木隆司著 講談社現代新書刊)によると、自然界にもこの平面分割のケースは多いそうですが、その中でも特に正六角形が多いということです。
高木氏はその理由として、以下の理由をあげられています。
1.表面張力などの物理的力
2.個々の要素が互いを排斥しようとする排斥力
3.風や水流による複雑な作用
このように自然界にはさまざまな六角形が存在しますが、人工的にもさまざまな六角形デザインが存在します。衣服のデザインなどにも、古来より亀甲紋とよばれるデザインが存在していますし、六角形だけでなく、六芒星やカゴメ紋としても衣服や紋章など、様々な所で利用されています。
単にデザインや紋章としてだけではく、古代遺跡などにもその名残りが存在しています。イギリスの作家ジョン=ミッチェルによると、古代遺跡として有名なストーンヘンジも六芒星構造をとっているということです。彼は、エルサレム神殿も大ピラミッドもストーンヘンジも、その築造には同じ原理と構成を取り入れており、このような建造物が世界中に散在するという事実をもとに、全世界的な先史文明が存在しているのだという説まで述べています。この構造は、グラストンベリーの聖マリア礼拝堂にもみられるらしく、これは彼によると、新エルサレムの縮図と述べています。
5.六芒星を示すパターン
では、本題の六芒星を示すパータンをいろいろと見てみましょう。まず、代表的なものは、色であり、色は、基本的には3つの色に分解されます。
光の場合は、赤、緑、青という光の3原色があり、この3つの色を合わせることによりどんな色でも表現することができます。そして、3原色を均等に重ね合わせると白ができます。これは、スポットライトや電球のような光を出すものについての色の原則であり、これが、印刷物などのような光を受ける方になると、色の3原色になります。この3原色をシアン、マゼンダ、イエロー(黄色)と呼んでいます。この3原色も均等に重ね合わせると黒になるはずなのですが、現実には均等に重ね合わせることは難しく、黒は別に用意し、色の3原色に黒を加えて合計4色で印刷は行われています。パソコンのカラープリンターでも同じ原理が使われています。
これをパターンに展開すると、まず、光の3原色が下向きの三角形、色の3原色が上向きの三角形となります。白と黒は、その合成で作成可能なため、中に置きます。このようにすると、色の周波数の高いものから、左回りに順に並ぶ構造となり、そして、円の直径の反対側に、補色と呼ばれる色がくるパターンが出来上がります。
補色とは、お互いの色を最も引きたてる最も適した色であり、赤にはシアン、青にはイエロー、緑にマゼンダが対応します。なお、赤い色を30秒程度見つめたあと、白い紙をみるとぼんやりとシアン色が見えてくるのですが、これは目の自動調整機能が補色を見せるように反応するためです。このように、色の原理は六芒星のパターンに表示されるというが言えると思います。そして、経絡と同じような原則があることが分かります。
原則1 エネルギーの循環(周波数の変化)は左回り
原則2 直径の反対側に存在するのものとは、補の関係にある
原則3 上向き、下向きの3角形はひとつのまとまった関係である
原則4 上向き、下向きの3角形同士は補の関係にある
先に説明した通り、原則1は周波数の変化に相当しますし、原則2は補色の関係に対応し、原則3、4は光の3原色と色の3原色との関係となります。先の経絡のモデルでは、原則1がエネルギーの流れであり、原則3、4は、手の経絡と足の経絡の関係です。たぶん、その他に原則2に相当する法則が、経絡にも存在しているのではないかと思います。このように、関係を色々と調べて行くことにより、さまざまな新しい発見を見出していく、というのがパターン思考法のエッセンスであり、たとえば、この考え方で経絡において、原則2に相当する法則が発見されたとすれば、このパターン思考法の効果があったということがいえると思います。
易の八卦を、陰だけのパターン、陽だけのパターン、陰と陽の組み合わせパターンの3種類に種類に分けて考えてみると以下のようになります。
陰だけのパターン : 坤
陽だけのパターン : 乾
陰と陽の組み合わせ: 兌、離、震、巽、坎、艮
さらに、陰と陽の組み合わせもさらに陰と陽の2種類に分類されます。易の場合、少数決定主義で数の少ない方が陰と陽を決定する要因となるため、
組み合わせ(陰) : 震、坎、艮
組み合わせ(陽) : 巽、離、兌
という形となります。
陰の3つの組み合わせと陽の3つの組み合わせを、それぞれ上向きと下向きの三角形で表し、結合させたものが六芒星の形となります。なお、色の場合と同じように、「乾」「坤」は中央におく形とします。こうすると、上向きの三角形は陽で構成され、下向きの三角形は陰で構成されてます。また、対向しているものは、下表のように対局の補い合う関係にもなっています。
乾と坤 天と地 父と母
震と巽 雷と風 長男と長女
坎と離 水と火 中男と中女
艮と兌 山と沢 少年と少女
残るは、この配置や順番です。易には先天八卦図というものがあり、これに対し後天八卦図というものも存在します。しかし、これらの図では残念ながら配置にはなりません。しかし、「奇跡の華僑金儲け術」(高藤聡一郎著 学研刊)によると、古代から伝わる三易(「連山」「帰蔵」「周易」)というものがあり、普通、日本人が易と言っているのは周易のことですが、あとの二つについては、ほとんどの人が知らないといわれています。「連山」は夏(殷の前の王朝)の易で、「帰蔵」は周の文王の作った易といいます。
古代中国では、この3が並行して使用されていたといいます。、この「連山」の配列を見てください。「乾」と「坤」を除くと、六芒星の配列となります。この「連山」が、時代的に最も古いことを考えると、易の原点かもしれません。そして、この原点の易が六芒星に展開できるのです。
7.カバラの示すパターン
西洋には大きく2つの思想的伝統があります。そのひとつはギリシャ/ローマ文化であり、もうひとつはキリスト教です。しかし、もうひとつの隠された哲学的な伝統があります、これがカバラと呼ばれるものなのです。カバラは、西洋の哲学/自然科学の隠された背景としても、また神秘哲学の根幹としても西洋の思想に大きな影響を与え続けて来ました。そのカバラの根幹をなすのが『生命の樹』とよばれる象徴体系です。『生命の樹』とは、10個の球と22個の道からなる図形であり、宇宙の森羅万象がこの中に表現されているといわれています。
10個の球は、1から10までの数を表わすといわれ、22の道はアルファベットの文字を表わすといわれます。また、10個の球は天体を表わすといわれ、また、22の道はタロットの22枚のカードを表わすともいわれます。10個の球はセフィロートと呼ばれ、各々名前と性質が割り当てられていて、また、これらのセフィロートは3つの柱の上に位置付けされております。この3つの柱は『形成の柱』『力の柱』『中央の柱』と呼ばれ、均衡を表わす『中央の柱』に対して、『陰』と『陽』、『女性』と『男性』のような意味としての『力の柱』『形成の柱』が存在します。この2つの柱は『峻厳』『慈悲』と訳されることもあります。
生命の樹は、さらに4つの段階に分類されます。4つの世界の分類の分け方は何種類か存在しますが、まず共通するのは、ケテル、コクマー、ビナーの3つのセフィロトは、原型の世界として隠されていると説明されます。(この3つの組を、特に『至高の三角』と呼ぶこともあります。)また、マクルトは物質となった世界を表わすと考えられるため、他のセフィロートとは意味合いが異なります。この4つのセフィロートを除くと残りは6個であり、これは六芒星のパターンに展開できる形となります。生命の樹の上と下の三角をそのまま使用することとし、上下の三角を組み合わせると六芒星のパターンが成立します。こうすると反対側に存在するセフィロートは、補い合う関係となり、また、右と左で陰と陽が形成され、さらに、六角形の中にコクマーとビナーを入れるとパターンが完成します。なお、ケテルとマクルトは別格の位置付けになるものと考えられます。
以上みてきましたように、東洋と西洋の思想的背景の大きな位置をしめる『易』と『カバラ』、そして『物理学的な光』、および『身体的な気の流れ』の全てが、このパターンに示されることがわかりました。そして、このようなパターンの中に、普遍性を求めることこそ古代の英知の基本であったのです。
この古代の英知であるパターン思考を蘇られせることにより、人類は東洋と西洋をひとつに融合できる新しい哲学的考えを見出すことができるかも知れません。
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