https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/317599 【「黄ぶな物語」20年ぶり新装 立松和平さん没後10年 テーマ「古びていない」】 より
宇都宮市出身の作家立松和平(たてまつわへい)さんが62歳で亡くなって今年で10年。作品の一つに疫病退散を祈る同市の郷土玩具「黄ぶな」を題材にした絵本「黄ぶな物語」がある。新型コロナウイルスの感染拡大で黄ぶなが話題になる中、20年ぶりに新装改訂された。絵は初版に続き、立松さんの長女で画家のやまなかももこさん(42)=東京都在住=が新たに描き下ろした。「(コロナ禍という)現実を背負いながら描いた」という迫力ある構図や色調はインパクト十分。物語のメッセージ性が強まった。
無病息災に「黄ぶな」 新型コロナで注目浴びる 宇都宮【動画】
「黄ぶな物語」は、黄ぶな伝説から着想を得て書いた、自然破壊を続ける人間に警鐘を鳴らす物語。
森に多くの人が入り木を伐採し家を建て、田畑を開墾していったところ、疫病がまん延する。村の代表が森の主である老人の所へ相談に行くと、老人のそばでは人の誤りを諭すという黄色い魚が泳いでいた。疫病が終息した後、村人が疫病と過ちを忘れないように魚を模して玩具にした、という内容だ。
同市内の出版社代表坂本道子(さかもとみちこ)さんが、立松さんの没後10年を契機にリニューアル出版を企画した。企画を進める中、新型コロナウイルスの感染が広がり、初版本への問い合わせが相次いだという。坂本さんは「この絵本は普遍性がある。20年たっても古びていない」と話す。
やまなかさんは、20年ぶりに「黄ぶな物語」と向き合った。初版時は21歳だったが、画家として20年の経験を積み画風が変わった。コロナ禍の中で物語の捉え方も変わり、初版にはなかった描くべき場面が次々浮かんだという。森は水色からはっきりと深い緑色に、村人は抽象的な絵から写実的な表現になるなど、構図や色使いが大幅に変わった。
絵本は6月中旬ごろ、書店に並ぶ予定。坂本さんは「今の状況を立松さんはどう見ただろうと度々思う」としのぶ。「出版を機に、本県が生んだ立松さんという作家や作品なども知ってほしい」と話している。
A4判横、28ページ。税別1800円。夏には、やまなかさんの夫で俳優の山中聡(やまなかそう)さんがナレーションで参加するDVDも発売する予定。(問)アートセンターサカモト028・621・7006。
http://www.bios-japan.jp/bios1.html 【イラストレーター・絵本作家-山中 桃子】 より
-あどけない少女の笑顔であった。確か二十歳くらいになっているはずであったが。あまりにも幼くかわいい顔立ちに、つい父である立松和平氏の顔と見比べてしまっていた。言いたい放題の個性的なアーティストがもてはやされている時代でもある。こんなお嬢さんがやっていけるんだろうか、と思わずにはいられなかった。
12年前、イラストレーター横松桃子(後の山中桃子)にはじめて出会ったとき、その透明感のあるピュアな情熱が、私の心に鮮烈に刻まれた。そして半年後、『黄ぶな物語』(立松和平・作/横松桃子・絵)の名作が誕生したのである。
芸術とは無限大の想像力を形にできるもの
Q1あなたにとって「黄ぶな物語」とは?
父、立松和平とてがけた絵本は何冊かありますが、私たちの故郷の絵本を一緒に作れたことは、とても特別な一冊です。宝物です。
Q2あなたにとって栃木県とは?
生まれたのが、栃木県で、小学校入学から東京に引っ越しました。育ったのは東京で、生まれ故郷は栃木という認識です。
しかし、愛郷心の強い父の影響で、自分のルーツというか、 根っこが 栃木人という意識があります。栃木訛りを聞くと、妙に落ち着きます。
栃木の人は皆さん、あたたかい方ばかりだと思います。
Q3影響を受けたアーティスト、作家は?
マチス、竹久夢二、いわさきちひろ、宇野千代、なんと いっても伊藤若冲、ガウディ。
Q4あなたにとってアートとは?
パウル・クレーが「芸術とは、目に見えるものの再現ではなく、見えるようにすること」と言っていましたが、目に見えるものも 見えないものも表現できる、無限大の想像力を形にできるものだと思っています。
日常であり、非日常です。切っても切り離せない存在です。
絵本をたくさん描きたいです。自分の世界を作りたいです。
Q5家族の話を差し支えない部分でお話ください。
夫と三歳半の長男と7ヶ月の次男と私の4人家族です。
今年の二月に私の父が急逝しました。父は、孫である私の長男坊をとてもかわいがってくれました。
次男坊は父が亡くなる直前に生まれたので、会うチャンスが ありませんでした。
三歳という年齢的に、物心ついていない微妙な年頃なので、 父の存在を忘れないように、意識的に話題に登場させています。
そして、三歳半の長男は私に彼のオリジナルの言葉なのか、不明ですが「じぃじは、見えないけど、いつもそばにいるんだよ。」とよく励ましてくれます。
Q6今、一番やりたいことは?(行ってみたいところでもよいです)
どっぷりアートにつかりたいです。子供の世話など、日々の雑事を忘れて、一日絵を描くとか、美術館に行くとか、読書三昧とか、美術の旅などいいですね。想像しただけでわくわくします。
Q7夢は?
絵本をたくさん描きたいです。自分の世界を作りたいです。
日常であり、非日常です。切っても切り離せない存在です。
栃木県発の作品『なすのくに物語』(山中桃子 作・絵)が2011年春に発刊予定である。作者のはずだった立松和平氏は、宇都宮市でうち合わせをした1週間後に倒れ、約1ヶ月で帰らぬ人となった。父の実に豊かでピュアな文学的世界を受け継いだと思われるイラストレーター山中桃子は、さらに独自の世界で作品を執筆中である。曽祖父は劇作家、小山内薫である。
山中 桃子(やまなか ももこ)
1977年栃木県生まれ。女子美術大学デザイン科卒。「現代演劇ポスターコレクション」99年、2000年入選。「田んぼのいのち」「牧場のいのち」(くもん出版)で、それぞれ第19回、21回「ブラティスラヴァ世界絵本原画」ビエンナーレ入選。05年には、観音庵(新宿区)本堂の天井画完成。08年春公開された映画『ぐるりのこと』(橋口亮輔監督)で、主演女優・木村多江が描く天井画に原画を提供し話題となる。作家・立松和平の長女。劇作家・小山内薫は曾祖父。夫は俳優・山中聡。東京在住。
主な出版物
「黄ぶな物語」(アートセンターサカモト)
「酪農家族1.2.3」(河出書房新社)
「街のいのち」「川のいのち」「木のいのち」(くもん出版)
「風になったヤギ」(旺文社)
「桃の花」(インデックスコミュニケーションズ)
「おばあちゃんのくりきんとん」(長崎出版)
年に数回都内ギャラリーにて作品発表。
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