連歌発祥の地 筑波山吟行

http://tokiwahaiku.blog.fc2.com/blog-entry-119.html 【連歌発祥の地 筑波山吟行】より

晴天の五月の空の下、連歌発祥の地、筑波山に登って来ました!なぜ筑波山が連歌発祥の地なのかというと、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)と御火焼之老人(みひたきのおきな 稚き童という説も)がお互いに詠み合った最初の問答形式の連歌に詠み込まれたのが筑波山だったからです。

にいばりつくばをすぎていくよかねつる 日本武尊

 (新治、筑波を過ぎてから幾夜旅寝をしたことだろう)

かがなべてよにはここのよひにはとをかを 御火焼之老人

 (日数を数えると九泊十日でございます)

 最古の連歌撰集の書名は『菟玖波集』(二条良基編)です。また、和歌を「敷島の道」というのに対して、連歌を「筑波の道」と言います。芭蕉も『鹿島紀行』で、「和歌なくばあるべからず、句なくばすぐべからず。まことに愛すべき山のすがたなりけらし。」(筑波山は、和歌や句を詠まないで通り過ぎるべきではない。まことに愛すべき山の姿であることだよ。)と筑波山のことを特別な山として扱っています。

 俳句のルーツをたどると、和歌→連歌→俳諧の連歌→俳句となります。筑波山は日本百名山の中では最も低い山ですが、韻文学史においては由緒ある誇るべき存在ですね。というわけで、俳句を嗜む私たちも、ぜひ筑波山に登って句を作ってみようということで、山頂目指すことになりました。

まずは筑波山神社にお参りしました。筑波山神社は筑波山を御神体にしている神社でいつ頃創建されたのかもわからないくらい古い神社です。境内にはがまの油売りのおじさんがいたので声をかけましたが、「今日はもう終わり」と、去って行ってしまいました・・・。

ケーブルカーに登って山頂近くまで行きました。色あざやかな山つつじが咲いていて、私たちの目を楽しませてくれました。この日はとても暑い日でしたが、山の上の木陰は涼しくてとても気持ちよかったです。

昼食を食べて、女体山山頂を目指して出発しました!徒歩15分の登山道です。散歩する程度に考えていましたが、山の斜面はきつくて、麓から登らなくて本当に良かったと思いました。山頂の景色は最高でした!文明の力を借りて連歌発祥の地、制覇!!山を下ってからは少し買い物をして、「連歌発祥の地」と記された石碑を見に行きました。

それから、芭蕉の弟子の服部嵐雪が詠んだ「雪は申さずまずむらさきのつくば山」の句碑を見学しました。側面に「是より山上」と刻まれた石です。天明二年(1782)に建てられました。俳句の意味は、「雪の富士山が美しいのはいうまでもないが、紫に霞みたなびく筑波山はまずもって格別な美しさだよ。」といった感じでしょうか。石碑の裏には「古叟嵐雪此山頭に紫の一字を得たるは、芙蓉峯(富士山)の雪にむかふておもひおこせし言の葉なるをや。(老翁嵐雪が筑波山に紫の一字を着想したのは、富士山の雪に対して想起した言葉であるということだ。)」と書いてありました。

 この碑文によれば、「西の富士」に対する「東の筑波山」として詠んだようです。そしてこの嵐雪の句がもとになって、筑波山を「紫の山」、「紫峰」とも言うようになったそうです。「筑波山=むらさきの山」という別名は、芭蕉の『鹿島紀行』に由来する由緒正しい呼称として、現代の茨城県人たちがもっと自慢してよいことではないでしょうか。

 石碑の文を考えたのは大島蓼太(1718~1787)という江戸の俳諧の先生です。蓼太は「世の中は三日見ぬ間に桜かな」の句を作った人です。句碑建立に協力したのは龍ヶ崎の杉野翠兄(1754~1813)という人で、蓼太のお弟子さんです。翠兄は小林一茶とも交流のあった人で、たくさんの弟子を抱える俳諧の先生でもありました。

しばらく石を見ていたら、もう日が西に傾きかけていました。強い西日によってくっきりと浮き彫りになった文字を見ながら、かつて筑波山に因んだ句を詠んだり、ここに石を建てたりした人たちのことを想像しました。

 過去の俳人たちについて思いを馳せる「時間の旅」が経験できて、とても楽しい筑波山吟行でした!

<筑波山吟行作品集>

春暑し口に月掛けてかえる岩  今       筑波山魂焦がす山躑躅    園部

遡る千歳車窓に山つつじ  二村        息切らし目指す頂上温む水   藤家

照りつけて汗かき登る筑波かな  柳谷     岩道を春泥まさにツンとデレ  宮内

夏隣汗ぬぐう腕袖は無し    堀江康     ひと休み木漏れ日が差す石の上 飯野

筑波嶺に番(つが)う蝶々は何想う  飯塚   新緑を越えて見ゆるは山の顔  高野

見上げれば夏めく緑揺れる光(こう) 海老澤  筑波山登り近づく入道雲    田口

見下ろして筑波の嶺と青田哉 南雲    つくば山頂上(てっぺん)とって我英雄 川島

山彦を夢見て鳴くはガマガエル  大森    売店の奥で微笑む白い顔   黒羽

黄昏にブランコゆらす笑い声  未悠

コズミックホリステック医療・教育企画