朧月の俳句・詩

https://idea1616.com/oborozuki-haiku/  【朧月の俳句 30選 -朧月夜-】

朧月と桜の花

春の夜に霞んで見えるような月のことを「朧月(おぼろづき)」という呼び方をすることがあります。

この朧月は、とても風情があるもので、春の風物詩の一つにも数えられます。

このページには、朧月が詠まれた俳句の中から 30句を選びました。朧月が出ている春の夜の情景が目に浮かぶような作品ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。

朧月の俳句 30選

「朧月」「朧月夜」「月朧」が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。これらは、俳句において春の季語とされます。

いたむ歯は 皆抜きすてて 朧月   【作者】会津八一(あいづ やいち)

言ひさして 見直す人や 朧月    【作者】加賀千代女(かがのちよじょ)

【補足】「言ひさして」は「(途中まで)言いかけて」という意味です。

浮世絵の 絹地ぬけくる 朧月    【作者】泉 鏡花(いずみ きょうか)

梅散りて 古郷寒し おぼろ月    【作者】松岡青蘿(まつおか せいら)

【補足】「古郷」の読み方は「ふるさと」です。

大はらや 蝶のでて舞ふ 朧月    【作者】内藤丈草(ないとう じょうそう)

【補足】大はら(大原)は、京都の地名です。

おぼろ月 影なき人の まじりけり  【作者】佐藤春夫(さとう はるお)

朧月 暈のうちなる 軒の蜘蛛    【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)

【補足】「暈」「蜘蛛」の読み方は、それぞれ「かさ」「くも」です。

朧月 一足づゝも わかれかな     【作者】向井去来(むかい きょらい)

かたむきて なほ朧月 なりしかな   【作者】稲畑汀子(いなはた ていこ)

蚊屋の内に 朧月夜の 内侍かな    【作者】与謝蕪村(よさ ぶそん)

【補足】蚊屋(かや=蚊帳)は、寝るときに蚊を防ぐために吊るものです。内侍(ないし)とは、昔に内侍司(ないしのつかさ=律令管制の役所の一つ)に勤めた女官のことです。

川下に 網うつ吾や 朧月      【作者】炭 太祇(たん たいぎ)

【補足】「吾」の読み方は「われ」です。

伽羅さめし 伏籠の衣や 朧月    【作者】会津八一

【補足】伽羅(きゃら)とは、香木(こうぼく)の名前です。

樹を抱けば 妙なる冷えや 朧月   【作者】渡辺水巴(わたなべ すいは)

くもりたる 古鏡の如し 朧月    【作者】高浜虚子(たかはま きょし)

恋をせば 滋賀のあたりや 朧月   【作者】松岡青蘿

さしぬきを 足でぬぐ夜や 朧月   【作者】与謝蕪村

【補足】さしぬき(指貫)は袴(はかま)の一種で、裾を紐でくくるようになっているものです。

浄瑠璃の 阿波の鳴門の 朧月    【作者】富安風生(とみやす ふうせい)

【補足】「傾城阿波の鳴門(けいせい あわのなると)」は、近松半二(ちかまつ はんじ)らの合作による浄瑠璃(じょうるり)の題名です。

大名の しのびありきや 朧月    【作者】正岡子規(まさおか しき)

誰が糸に つなぎとめたぞ 朧月   【作者】立花北枝(たちばな ほくし)

たのしさよ 闇のあげくの 朧月   【作者】向井去来

だんだらの かつぎに縫ひぬ 朧月  【作者】正岡子規

月朧 おぼろに仰ぐ 別れかな    【作者】稲畑汀子

手枕に 身を愛す也 おぼろ月    【作者】与謝蕪村

閨の戸の 細目にあきて 朧月    【作者】尾崎紅葉(おざき こうよう)

【補足】閨(ねや)は寝室のことです。

花の顔に 晴れうてしてや 朧月   【作者】松尾芭蕉(まつお ばしょう)

【補足】「晴うてして」とは「気後れして」の意味です。

花を盗む 朧月夜の 検事かな    【作者】尾崎紅葉

春ならば 朧月とも 詠(なが)めうに  【作者】上島鬼貫(うえじま おにつら)

【補足】「詠む(ながむ)」とは、詩歌を作ることを意味します。

三毛よ今 帰つたぞ門の 月朧   【作者】寺田寅彦(てらだ とらひこ)

よき風の 松から来るや 朧月   【作者】井上井月(いのうえ せいげつ)

世の花を 丸うつつむや 朧月   【作者】加賀千代女


https://ameblo.jp/tron-12/entry-12553131283.html 【こんな詩を書いてみました。『Misty Moonlit (朧月)』】 より

『Misty Moonlit (朧月)』

見上げれば朧月 街の灯もにじんでる      密かに時計の音が 夜の訪れ告げる

別れてもあの人の ことばかり気になるの    お酒でごまかしたって 心揺れる私よ

悩ましい夢に 今も縛られている        Misty Moonlit  切ない祈り 

届くはずもないのに              未練だわ 甘い蜜 忘れられないなんて

あの人は気取りやで 気の弱い男なのに     身に沁みる哀しみに 包まれる夜もある

静かに時間が過ぎて 恋の終わりを告げる    淋し気に微笑んで 手鏡を見つめれば

気怠い女がひとり 何故か涙がでるわ      悩ましい噂 今も苦しんでいる

Misty Moonlit  切ない想い           届くはずもないのに

未練だわ 甘い夜 忘れられないなんて     あの人は自分しか 愛せない男なのに

虚しさに包まれて 窓際に座り込み      夜空を見上げてみても 闇が広がるだけね

あの人の過ちを 責めてはいないけれど    見せかけの愛だったの 嘘に彩られてた 

悩ましい秘密 今も思い出してる       Misty Moonlit  切ない吐息 

届くはずもないのに           未練だわ いつまでも 忘れられないなんて

あの人は思い出に 生きている男なのに

「朧月」(おぼろづき)は春の夜の月の事です。空気中に水分の多い状況でぼんやりとしている月の事を現す俳句の季語でもあるのですが、愛した男に別れを告げられ、納得や決着がまだつかない女心を持て余している女性を「朧月」に重ねてみました。

恋愛にしても何にしても、嫌なことはスパッと忘れ、気持ちを切り替えて前を向いて歩いていける女性もいますが、いつまでも過去に縛られ、未練や執着から逃れられない女性もいるはずです。

別れた男と過ごした月日を思い出し、窓から見上げた月が涙で滲んで見えた女性のある夜の心情を詩にしてみました。