月のうた

http://onadehan.hatenablog.com/entry/35662391  【月のうた】  より

其の参 「言霊リテラシー」 やまとうた

月は船 星は白波 雲は海 いかに漕ぐらん  桂男はただ一人して 三日月 天をわたる

月の船を漕いで、 星の白波がさざめく、 雲の海を渡ってくると言うけれど、

こんなに広い天の原を、桂男はどのように漕いでくるのですか、たった一人で。

桂男とは、月の中に住むという男。相当なイケメンらしいです。月に見とれすぎるのは注意ですね!これは平安時代末の「今様」いまようと呼ばれた新しい歌らしいです。

今様とは、現代風という意味。

「白拍子」しらびょうしさんが、歌いながら舞うんですって。

しかし、月を船に見立てるなんて、素晴らしい宇宙観です。

「月の船」って現代の楽曲とかショップ名で目にしますが、遡ればその歴史って長いんですね~(゜-゜)


https://nature-and-science.jp/waka/#page-1 【月のうた、星のうた】 より

夜空に想いをはせる詩歌

和歌や俳句などには、星や月を題材にしたものがたくさんあります。そこで今回は星月に想いをはせた美しい詩歌をいくつかご紹介します。昔の人々にとって、夜空に浮かぶ美しい光は、今よりももっと神秘的なものだったのではないでしょうか。

「天の海に 雲の波立ち 月の船 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ」

《天の海には雲の波が立ち、月の船が星の林の中に漕いで隠れて行くのが見える》

柿本人麻呂(?~708年頃、飛鳥時代の歌人)『万葉集』より

夜空のようすを見立てた美しい歌です。さざ波のような雲が流れる中、星が茂る林へゆっくりと進んで行く三日月の船……まるでおとぎ話のような情景が浮かびます。

日本最古の和歌集『万葉集』には、星をよんだ歌はごくわずかで、この歌は数少ないその一つだそうです。

「わたつみの 豊旗雲に 入日さし 今夜の月夜 さやけかりこそ」

《海原の上にたなびく雲に夕日がさしている。今夜の月は清らかだろう》

中大兄(天智天皇)(626~672年、飛鳥時代の天皇)『万葉集』より

「わたつみ」は海、海の神さまのこと。船の上で、航海の安全を願った歌です。

月の満ち潮に合わせて船出をし、月明かりをたよりに海を進む。その昔、無事に航海を終えるためには、月の存在が大切だったのでしょう。

「照る月の 流るる見れば 天の川 いづるみなとは 海にざりける」

《照る月が流れるように海に沈んでゆくのを見ると、天の川の流れ出す先はやはり海だったのだな》

紀 貫之(868頃~945年頃、平安時代の貴族・歌人)『土佐日記』より

『土佐日記』は、紀 貫之が赴任先の土佐から京の都へ船で帰る際のできごとを綴った日記で、この歌も船上で見た景色をうたったものです。

月の表面には、餅つきをしているウサギに例えられる模様があります。このウサギ模様、月が東から昇るときは頭が上向きなのですが、西に沈むときは下向き、つまり逆さまになり頭から落ちるように沈んでいきます。

「願はくは 花の下にて春死なむ そのきさらぎの 望月のころ」

《できれば、桜の下で春に死にたいものだ。ちょうど如月の望月(2月15日の満月)のころに》

西行(1118~1190年、平安時代末~鎌倉時代初期の武士・僧侶・歌人)『続古今集』より

西行法師の有名な歌。旧暦の2月15日は今の3月にあたり、ちょうど春満開の桜の頃です。彼はたくさんの花と月の歌をよんでいます。しかし、七夕の歌はいくつかあるものの、星にかかわる歌はないそうです。

「月をこそ ながめなれしか 星の夜の 深きあはれを 今宵知りぬる」

《今まで月ばかりを眺め慣れてきたけれど、星の夜の深い情趣に今夜はじめて気がついた》

建礼門院右京大夫(平安時代末~鎌倉時代初期の歌人)『建礼門院右京大夫集』より

建礼門院(平 清盛の娘、平 徳子)に仕えた女性が、恋人を亡くしたあとに詠んだ歌です。煌々と明るく輝く月とはちがって、一つ一つ儚げに瞬く星の光*1。その小さな光が心に染み入ったのかもしれません。

*1 月と星の明るさ

満月の見かけの明るさは12.7等級、金星の最大の明るさは4.7、太陽を除く恒星で一番明るいシリウスは1.46。明るさは1等級ごとに約2.5倍ちがいます。

自分に真っすぐ届く光

「荒海や 佐渡によこたふ 天の河」

松尾芭蕉(1644〜1694年、江戸時代の俳人)

松尾芭蕉が、「おくのほそ道」の旅でよんだ句。日本海の荒波と向こうに見える佐渡の島影、そして空をまたぐ天の川。

自然の大きさを感じるダイナミックな句ですが、天の川の位置や、句をよんだ日の天候などから、芭蕉が実際にこの景色を見たのではなく、想像してよんだものといわれています。

天の川といえば7月7日の七夕で夏の印象ですが、旧暦では約1か月ずれて8月(立秋)のため、秋の季語になります。

「星月夜 空の高さよ 大きさよ」

江左尚白(1654~1722、江戸時代の医師・俳人)

星月夜とは、星の光で月夜のように明るい夜のことで、秋の季語です。澄んだ夜空に瞬くたくさんの星と、ひんやりと心地いい秋の気配を感じます。尚白は江戸時代前期の俳人で、松尾芭蕉の門人でした。

「真砂なす 数なき星の 其中に 吾に向ひて 光る星あり」

《夜空に浮かぶ、砂粒のように数え切れないたくさんの星。その中に、私に向かって光っている星がある》

正岡子規(1867〜1902年、明治時代の俳人・歌人)

数多(あまた)ある中から、自分に向かってくる光とは、何なのでしょう。希望でしょうか、恋しい人でしょうか。それとも、ちょっと悲しい気持ちをなぐさめてくれる光でしょうか。

星の光の色は白っぽく感じますが、よく見ると色がついているものもあります。これは表面温度の違いで、温度が高いほど青く、低いと赤く見えます*2。

おほわたへ 座移りしたり 枯野星」

山口誓子(1901〜1994年、明治生まれの俳人)

冬の冴えた夜空を、刻々と渡っていく星座たちをとらえた句。

冬は、空気中のチリや水蒸気が少なく空が澄み、星月がクリアに見える季節です。また、月は夏よりも冬のほうが高い位置に見えます。地上に近い空はチリなどが多く、高いところのほうが澄んでいるため、冬の月は一層輝いて見えるのです。

*2 星の表面温度と色

一般的には、高い順に約10,000℃以上の青(ベガ、リゲルなど)から>青白(シリウスなど)>白(カストルなど)>黄色(カペラなど)>オレンジ(ポルックスなど)>約3,500℃以下(アンタレス、ベテルギウスなど)の赤となる。


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