中原道夫の第一句集『蕩児』から第十三句集『彷徨』(うろつく)までの代表句を取り上げて、概説したものである。中原の句は、多種多様であり、俳句の魅力満載である。まさに、俳句の玉手箱であり、目から鱗の俳句解説書である。
https://ginkahaikukai.jimdofree.com/ 【銀化俳句会の公式サイトへようこそ!】 より抜粋
銀化とは
「銀化」とは紀元一、二世紀のローマングラス、はたまた中國漢代の綠釉壺などに見られる化學變化のことで、永年土中に埋もれてゐると、雨水や土中成分などと反應し、ガラスの表面若しくは釉面が銀彩色に變化、輝くことを謂ふ。詩人宗左近曰く「最低六百年は土中にあらねば、その變化は生じない……」と。その銀化に倣ひ六百年後の自分の句などのことを考へてみても詮なきことであるが、俳句といふ小器が妖しく銀化しないとも限らない。こんな豪宕なる夢もまた明日への活力にならう。
(中原道夫句集『銀化』あとがきより)
初夢のいくらか銀化してをりぬ 中原道夫 句集『蕩児』所収
銀化は2018年10月に創刊20年を迎えました 創刊は平成10年10月10日。
俳と詩の相克と融合及び個性の森の形成をめざしています。
「個性の森」について、主宰・中原道夫は『銀化0号』でこう書きました。
〈自然の生態系のように日向を好む植物もあれば日陰を好む者もある。直ぐに大きくなる木もあればその木の下草としてその木を支える、共存共栄。そんな個性の茂り、詩性で繁茂する森の形成、実現の為に私の残りの人生を使いたい〉
〈ここに集う人達の未生の詩性を覚ますべく、つぼみを持ち始めたものには開花を促すべく、病の大樹には樹医のごとく処置を〉
〈さあ、二十一世紀の俳壇の酸素は私達「銀化」の森が引受けます。疲弊しきった俳壇には新しい酸素が今直ぐにでも必要なのです〉
http://furansudo.com/archives/10512 【「銀化」20周年のお祝いの会2018.10.11】
今日は夕方6時より「銀化」(中原道夫主宰)20周年のお祝いの会があって、先ほど戻ったところである。
会場はホテルニューオータニのガーデンタワーの5階。
たくさんの来賓の方々と「銀化」の皆さま。華やかなお祝いの会となった。
ご挨拶をする中原道夫主宰。
とうとう20年になりました。10月10日ということが覚えやすいということでこの日を出発の日と決めました。
あっと今の20年、もう成人式なのですね。いままでは追いかけて行くような立場だったものがいまではもう中堅というか追いかけられる立場であるという意識をもたなくてはいけないんだとおもっております。
46歳ではじめた銀化ですが67歳になりました。あと10年でなにができるか暗中模索です。
いまいろいろな若手が出現して私たちの存在を脅かしつつあると言ってもいいでしょうか。しかし彼らもあと10年もすれば追いかけられる存在となる。そう考えるとあくせくすることもないかというふうにも考えました。
あと10年、なにをしていくか、と考えると非常に慌てるんですよねえ、どんどん身体は劣化し脳は劣化する。ところにきておりますので一日一日大事にしてやっていこうかということであります。
今日で「銀化」は終わります。と言ったら皆さん驚く、と思ったらあまり驚かない。。。。
「銀化」止めます。で、明日から reborn(りぼーん)で、リセットで行きたいと思います。
りボーン & リセット、
死んで生まれ変わる、ということにしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
ご挨拶を抜粋して紹介した。
一センチ以上の厚さの「銀化」20周年記念号。
内容も豊富で充実している。が、これについては書いていると夜中を越してしまうので、止めます。
中原道夫主宰、「銀化」の皆さま20周年おめでとうございます。心よりお祝いを申し上げます。リボーン&リセットですね!
https://ameblo.jp/ak296910/entry-12511358333.html 【兼題「台風」主宰中原道夫 NHKBS『俳句王国』(H.22.9.11)】 より
主宰は中原道夫(「銀化」主宰)。 ゲストは桂文珍(落語家)
今回のメンバーは俳句甲子園の歴代最優秀句賞受賞者の5人
朝顔の種や地下鉄乗り換えぬ 第2回 森川 大和
カンバスの余白八月十五日 第4回 神野 紗希
夕立の一粒源氏物語 第5回 佐藤 文香
それぞれに花火を待つてゐる呼吸 第11回 村越 敦
琉球を抱きしめにゆく夏休み 第12回 蒼依 史香
司会は塚原愛アナウンサー
兼題「台風」
・台風や窯の火番の低き椅子 森川 大和
4点句(中原主宰選)。台風の激しい中で小さい火をしゃがんで守っている窯番。窯の火が台風の核の火でもあるような/外の台風と窯の部屋の内、動と静の対比の妙。/
台風なので窯は焚いていない。ただポツネンとしている椅子があるのみ。低き椅子とは登り窯ゆえであろう(中原主宰)。/作者の句意も中原主宰と同じ。窯番は非番で誰もいない。
・体内のみづの揺らぎや台風裡 村越 敦
3点句。体内のみづの揺らぎの感覚がいい。揺れのリフレーンも。/外の水と内の水の対比。体と台の「タイ」のつながりも面白い。/きれいな情景。妊婦さんを想起。胎内にあるもう一つの命。/台風時の微妙な感覚を詠いたかった(作者)。/人間の中はほとんど水であると思うと句意も分かる(中原主宰)。
・台風やタオルの中に兎寝て 神野 紗希
3点句(中原主宰選)。タオルの質感がよく出ている句。/とてもやさしい表現。台風と言う大きな情景と小さな兎。/今治はタオルの町。うさぎもびっくりのふんわかしたタオルが一杯(中原主宰)。
・白い台風テレビに君の目に窓に 佐藤 文香
2点句。とても面白い作りの句。二人でぼうとして静かにして少しけだるい日常の世界。/二つの面白い点がある。一つは白い台風と言う措辞だが説得的。そして視点の移動がはっきりしていて、いろんな詠み方ができるような。/分かち書きに現代詩の趣があった。/テレビの台風を詠みたかったが季語にならないので、現実の台風と合わせて詠んだ(作者)。
・寄るつもりある台風にして遅々と 中原 道夫主宰
2点句。「つもりある」におかしみを感じた。台風の本意を衝いている。テレビの気象ニュースの画面を想起させる視覚的にして現代的な句。
・台風の目の中存在意義探す 蒼依 史香
外出できない台風だからこそ内なる自分に目が向く(中原主宰)。
・台風が来たかと思う里帰り 桂 文珍
面白い句。孫たちが帰ったあとの家の中の惨状。冷蔵庫も空っぽ。孫誕生の文珍師匠のお宅の実景とか。
○中原道夫主宰特選三句
・養生訓もどきを貼って冷蔵庫
・砂日傘借景三百六十度
・じっとりと背中を掴む汗の玉
○自由題
・無花果に川音は聞こえていたか 佐藤 文香
4点句(中原主宰選)。肉体性のある無花果とさらさらの川音の精神性、川音が無花果のごちゃごちゃした実の中にどう喰い込んでいくか。卑近な喩えですが、好きな彼に私の思いが伝わったのかという鑑賞も。/無花果を目の前にして理由は分からないが川の傍にあっただろうと思い、自分の知らない記憶を持っているだろう無花果に不思議な感じを抱いている作者。/降ってきた句で無花果も川音も実際には見ていない(作者)。
・ひとつ絵に骸骨と桃夏の夕 神野 紗希
3点句。この絵は原色系の抽象画だと思う。生と死の象徴が一つに描かれた違和感に気を失ってしまいそうな、画面の最後は黒一色で終わるような。/人生の象徴のようなエトスとタナトスの同居(中原主宰)。
・風鈴の一芸つまらなくなりぬ 中原 道夫主宰
3点句。「つまらなくなりぬ」の素っ気ない言い方のなかに、逆に風鈴への親しみも感じられる。/そんなにも貶す作者。「なりぬ」が面白い。風鈴は一発屋。/私も風鈴のような一発屋にならないよう、私へのいましめの句ともします(桂文珍)。
・台風でへらへら踊るビニール傘 桂 文珍
2点句(中原主宰選)。台風を茶化しているビニール傘。「踊る」が面白い」。(中原主宰)。
・出所は口ひとつきり水中花 森川 大和
1点句。チープで少し切ないイメージの水中花。出所という言葉の使い方の俗っぽさ、雑さが面白い。/イソギンチャクも出入りは一か所ですな(中原主宰)。
・祖先みな海より来たるいなびかり 村越 敦
1点句。悠久な時間を巻き戻しているような句(中原道夫主宰)。
・紫陽花や今日も貴方が好きでした 蒼依 史香
ラブラブですね。俳人は紫陽花というとブルーな感じもするんですが(中原主宰)。/作者によれば「紫陽花も七変化するが、自分の心も変化する。不安を蔵した微妙な恋する人の気持ちを詠った」深い切ない句。/この句の作者のコメントに司会の塚原愛アナウンサーが感極まった表情を見せたのが印象的でした。
http://ooikomon.blogspot.com/2016/10/blog-post.html 【加藤哲也「一壺中一天地あり青簾」(『美しき尾』)・・・】 より
加藤哲也第二句集『美しき尾』(角川書店)の集名は、
初糶や美しき尾を見初めたり 哲也
の句に因むものだろう。櫂未知子の跋文には、
彼の作風はいわゆる伝統的な俳句の作り方とは少し異なっているといっても良いかもしれない。その句がうまいか下手かといった次元を超えた、彼独自の視点による素材の切り取り方といおうか、とにかく意表を突く内容を見せてくれることが多い。(中略)
こういった作風は時に誤解されるであろうし、理解されない事態を招くこともあるだろう。しかし、自分を信じて、加藤哲也らしい作品を一句一句刻んでいって欲しい。いつか、多くの俳句愛好者が、あなたの名を口々に叫ぶ日がくるはずだ。
とある。
戦争と平和の後の昼寝かな
の句には、余談だが、三橋敏雄を想起したくらいだった。偲ぶ・三橋敏雄と前書があったら絶対にそうだと思わせただろう。
ともあれ、いくつかの句を挙げておきたい。
新緑を傷口に入れがたき日々
公魚の貌を揃へて売られをり
端居してだんだん宙へ行く身なり
影といふもののはじめや初明り
こひねこのねこからいうたいりだつせり
逃水やこともあらうに雑踏へ
大日本帝国の如麦の秋
一斉といふ空爆のあり虫時雨
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