チバニアン誕生 地球史に新時代 市原の地磁気逆転地層、新名所に

https://www.chibanippo.co.jp/news/local/660066  【チバニアン誕生 地球史に新時代 市原の地磁気逆転地層、新名所に】 より

市原市田淵の地磁気逆転地層(千葉セクション)が、日本初のGSSPに認定。地質時代区分の名称が「チバニアン」に決まった=昨年12月15日、同市の養老川沿い

市原市田淵の地磁気逆転地層(千葉セクション)が、日本初のGSSPに認定。地質時代区分の名称が「チバニアン」に決まった=昨年12月15日、同市の養老川沿い

 市原市田淵の地磁気逆転地層などの千葉セクションを巡り国際地質科学連合の投票が17日、韓国で行われ、千葉セクションが地質時代の前期-中期更新世境界の国際境界模式層断面とポイント(GSSP)に日本で初めて認定された。これにより約77万4千~12万9千年前の地質時代が「チバニアン(千葉時代)」と命名されることになった。

茨城大などのチームが同連合にGSSP認定を申請していた。同連合による3次審査申請を前に、反対派により同地層近くの土地に賃借権が設定、登記されたことが分かり3次審査への影響が心配された。

昨年6月、市は同地層周辺への調査研究目的での立ち入りに対する妨害を禁じる罰則付きの条例案を公表。これが同チームの3次審査申請を後押した形となった。同年11月に3次審査を通過し、最終段階の投票にこぎつけた。

GSSP認定とチバニアン誕生を受け、同市の小出譲治市長は「わが国初のGSSP認定を市民とともに喜びたい。『チバニアン』の正式決定は研究者チームの並々ならぬ努力のたまもの。地元田淵町会の方々、市の取り組みを応援してくれた多くの皆さんのお陰でもある。世界的に注目が集まるであろう現地の見学環境整備を一層進めていきたい」とコメントした。

市は、同市田淵に設置した仮設ガイダンス施設の愛称を「チバニアンビジターセンター」とするなど「チバニアン」誕生を待ち望んでいた。条例案は昨年の9月定例市議会で成立した。

【チバニアン誕生までの軌跡】

2017年6月 茨城大などのチームは市原市田淵の地磁気逆転地層などの千葉セクションを、地質時代区分の前期-中期更新世境界の国際境界模式層断面とポイント(GSSP)とするよう国際地質科学連合に申請。77万4千年~12万9千年の地質時代の名称に「チバニアン(千葉時代)」を提案。

同年10月 市は地磁気逆転地層保存活用検討委員会を設置

同年11月 同連合の作業部会で1次審査通過

18年1月 市が国指定天然記念物の指定に係る意見具申書を文化庁に提出

同年10月 国の天然記念物に指定

同年11月 同連合の第4紀層序小委員会で2次審査通過

同年12月 同地層近くの土地に、反対派が賃借権を設定したことを市が把握

19年3月 市が天然記念物の管理団体に指定される

同年6月 同地層を巡り、市は学術的な調査研究目的で立ち入ることへの妨害行為を禁じる罰則付き条例案を公表、パブリックコメントを実施

同年8月 同チームが同連合の3次審査に申請書提出

同年9月 市は「養老川流域田淵の地磁気逆転地層の試料採取のための立入り等に関する条例案」を市議会に提案、成立

同年11月 同連合の国際層序委員会で3次審査通過

20年1月17日 同連合理事会で千葉セクションがGSSPに認定、「チバニアン」の名称決定


https://mainichi.jp/articles/20200117/k00/00m/040/281000c

【地球史の境界「最後の地磁気逆転」明瞭な痕跡、世界が認定 「チバニアン」決定】より


会員限定有料記事 毎日新聞2020年1月17日 21時08分(最終更新 1月17日 22時49分)

 46億年に及ぶ地球の歴史の一ページに、日本の地名が初めて刻まれた。千葉県市原市の地層が中期更新世(77万4000~12万9000年前)を代表する地層として認められ、地質時代「チバニアン」が決まった。特殊な条件がそろった「時代の境界」を明瞭に浮かび上がらせた歴年の研究の積み重ねが結実した。【池田知広、上遠野健一】

 「77万年前の様子がスポットライトを当てたように分かる地層だった。幸運が積み重なった」。チバニアン認定の根拠となった、養老川沿いの露出した地層「千葉セクション」について、研究チームを率いる岡田誠・茨城大教授は言う。

 地球は、N極とS極が入れ替わる自然現象「地磁気逆転」を直近の360万年の間に11回起こしてきた。国際学会「国際地質科学連合」は、「更新世」の前期と中期の境界を、約77万年前に起きた「最後の地磁気逆転」付近の地層にすると2004年に決めていた。

 千葉セクションには、この「逆転」の記録が明瞭に残る。77万年前は深さ約700メートルの深海だったが、その後隆起して今の地形になった。岡田教授によると、この場所には関東山地や火山の多い伊豆半島方面から泥が流入して堆積(たいせき)。泥に含まれるマグマ由来の磁鉄鉱が当時の地磁気をとどめており、分析が可能だった。

 また地磁気逆転の「直前」となる77万4000年前には御嶽山(長野・岐阜県境)が噴火。千葉セクションは、火山灰層がくっきりと見られることも特徴だ。今回境界となる国際模式地も、この火山灰層に指定された。

 認定には、正確に時期を特定した「放射年代測定」という優れた分析技術も貢献した。

 国立極地研究所の菅沼悠介准教授らは12年、この火山灰から、マグマが冷える時に作られる鉱物のジルコンを約300粒抽出。ジルコンには高精度な年代測定ができる放射性ウランが含まれ、噴火の時期が特定できた。最後の地磁気逆転はそれまで78万年前が定説だったため、大きな発見だった。さらに岡田教授らが海中の微生物「有孔虫」などの化石の殻に含まれる酸素の重さを調べることで、当時は氷期ではなく温暖な間氷期だったと知ることもできた。

 こうした①地磁気逆転②放射年代測定③氷期・間氷期――の三つの特徴を押さえることで、千葉セクションは時代の境界の代表となった。今回イタリア2カ所も申請しライバルと…