http://www.wakasanohimitsu.jp/seibun/anthocyanin/【アントシアニンanthocyanin】 より
アントシアニンとは、ブルーベリーやナス、紫いもなどに含まれるポリフェノールの一種で、天然の色素です。植物が紫外線から実(身)を守るために蓄える成分ですが、古くから目の働きを高める効果や眼精疲労を予防する効果があることで知られていて、現在ではサプリメントなどに利用されています。
アントシアニンの健康効果 ◎視覚機能を改善する効果 ◎眼病予防効果 ◎メタボリックシンドロームを予防する効果 ◎花粉症を予防する効果
アントシアニンとは?
●基本情報
アントシアニンは、ポリフェノールの一種で、天然の色素です。ポリフェノールは、紫外線やウイルスなどの外敵から実(身)を守るために植物がつくり出したファイトケミカルです。アントシアニンは、配糖体であるアントシアニジンと糖で構成されており、抗酸化力[※1]が非常に強いといわれています。
●アントシアニンの働き
アントシアニンには、植物が紫外線などの有害な光によるダメージから自らの体を守るという働きがあり、人間でいうメラニンの役割を果たしています。
人間は太陽からの紫外線を受けると、メラニンという色素によって肌を黒くすることで、体内に紫外線が入ることを防ぎ、細胞が傷つかないように守っています。
植物はアントシアニンなどの色素をつくり、紫外線などの有害な光から体を守っているのです。
例えば、ナスの場合、大部分は濃い紫色ですが、太陽の光が当たらないヘタの下は青紫色が少し薄くなっています。この部分は光が当たらない部分なので、アントシアニンの量が少なく、色が薄くなっているのです。
●色素としてのアントシアニン
アントシアニン(Anthocyanin)という成分名は、ギリシャ語のanthos=「花」とcyanos=「青」が語源で、「花の青色成分」という意味を表しますが、青色だけではなく、赤色、紫色など幅広い色調を持っています。自然界には様々な種類のアントシアニンが存在しており、現在までに発見された種類は500以上にものぼるといわれています。アントシアニンは様々な条件(pH、温度、濃度、金属イオン、酵素など)によって、色調・構造に微妙な変化が現れます。その美しい色調から、古代より食品の着色に用いられてきました。例えば、梅干しの鮮やかな赤色は、赤シソの葉のアントシアニンによる着色効果を利用したものです。
また、合成着色料に比べて安全性が高いこともあり、アントシアニンは食品分野での需要も高く、様々な加工食品の着色にも利用されています。さらに、食品の着色としての利用だけではなく、近年ではその抗酸化力に注目が集まり、視機能の向上、肝機能の改善、メタボリックシンドロームや血糖値上昇の抑制効果など、アントシアニンがもたらす様々な生理機能や効果が明らかになり、アントシアニンが広く利用されるようになってきています。
●健康成分としてのアントシアニン
アントシアニンの持つ生理機能についての研究が進められるきっかけとなったエピソードがあります。それは、「第二次世界大戦中に、イギリス軍のパイロットがブルーベリーのジャムを食べたところ、暗い所での視力が改善し、はっきりと物が見えた」というものです。これは、ブルーベリーに含まれる青紫色のアントシアニンによる効果ではないかと考えられています。
ブルーベリーの中でも特にアントシアニンが豊富に含まれている品種が「ビルベリー」です。
アントシアニンは植物が紫外線から実(身)を守るためにつくり出される成分であるため、太陽に長い時間当たっている程、植物はより多くの量のアントシアニンを蓄えます。特に、北欧産野生種のブルーベリーであるビルベリーは、アントシアニンの種類・量ともに多く含まれていることで知られています。
その理由は、ビルベリーの原産地である北欧ならではの自然現象にあります。
北欧では、夏に「白夜」という太陽が一日中沈まない現象が起こります。これは地球の地軸が傾いており、軌道上のある特定の位置にくると、いくら自転しても太陽の光が当たり続けるためです。
この白夜の影響で太陽の光を1日中浴び続けたビルベリーは、豊富なアントシアニンを含みます。ビルベリーの実を切ってみると、中までぎっしりと青紫色のアントシアニンが詰まっていることがわかります。
また、アントシアニンは単独でも魅力ある成分ではありますが、他の成分と組み合わせて摂取することにより更なる力を発揮します。例えば、紫外線からのダメージを防ぐ効果のあるルテインや、潤いを与えるヒアルロン酸などが挙げられます。
[※1:抗酸化力とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ力のことです。]
アントシアニンの効果
●視覚機能を改善する効果
「視覚」とは、対象物を光の情報として捉えて信号化し、その信号を脳に伝えて像として判断・認識することです。視覚の仕組みを、カメラで写真を撮る流れに例えてみると、目に入ってくる光の量を調節する虹彩はカメラの絞りにあたります。水晶体の厚さを調節し、網膜にはっきりとした像を結ぶ毛様体筋は、カメラのレンズのピント調節機能、光の像を信号に変える網膜はフィルムと考えることができます。この信号が脳に伝わり、像として認識される一連の流れは、カメラで撮影したものを画像化する、すなわちフィルムで現像することにあたります。つまり、目の機能がカメラで、脳の機能はフィルムの現像と置き換えることができます。
この信号を脳に伝えるのが、目の網膜にある「ロドプシン」と呼ばれるたんぱく質です。ロドプシンが光の情報を受け取り、脳が信号として受け取ることによって、私たちは「ものが見える」という感覚、すなわち「視覚」を得ることができるのです。このロドプシンは、光を受けることによって分解されます。そして、新たな光の情報を得るために再合成され、もとの状態に戻るといった一連の流れが繰り返し行われています。しかし、長時間目を使い続ける(酷使する)ことによって、ロドプシンの再合成が遅れてしまうことがあります。再合成が遅れると、目がショボつく・ぼやけるなどの疲れ目の原因にもつながります。アントシアニンは、このロドプシンの再合成を促進する働きがあり、視覚機能を改善する効果があることが明らかになっています。
視覚に関する様々な研究結果が発表されているビルベリーに含まれるアントシアニンと、カシスに含まれるアントシアニンの働きについて紹介します。
1)ビルベリーアントシアニン
アントシアニンの視覚機能に関する研究において、ビルベリーは欠かせない存在です。
ビルベリーとは、北欧産野生種のブルーベリーです。ベリー類の中でも、含まれているアントシアニンの種類と量が豊富だといわれており、その種類は15種類にものぼります。ビルベリーのアントシアニンについては、1960年代にイタリアやフランスで研究が始まって以来、多くの試験が行われてきました。その中でも、暗順応(明るいところから暗いところに入ったときに、時間が経過するとともに目が慣れて見えてくること)に及ぼす作用の研究が最も盛んに行われています。この研究結果が、アントシアニンの夜間での視力改善効果に対する科学的な根拠となっています。また、その他にも眼精疲労や眼圧、目の血流が改善されたという報告もみられます。
2)カシスアントシアニン
カシスとは、主にジュースやジャム、リキュールなどに広く使われているベリーの一種です。
ビルベリーと並んで、目の健康に役立つアントシアニンが含まれる果実として注目されています。
ビルベリーアントシアニンの働きにもある暗順応の改善効果や、眼精疲労の改善効果に加えて、一時的な近視を防ぐ効果があることも特徴的です。
一時的な近視とは、近くのものをじっと見続ける作業によって引き起こされます。例えば、パソコンやテレビ、携帯電話などの画面を長時間集中して見続けているとします。すると、目の焦点が画面の焦点に固まってしまい、疲れ目の原因となってしまいます。この現象は、レンズの役割を持つ水晶体の厚みを調節する毛様体筋が一時的にけいれんして、緊張した状態が続いていることを表します。一時的なものであったとしても、この状態が長期間続いてしまうと、継続的な近視になりやすいといわれています。カシスアントシアニンは、この毛様体筋の緊張をやわらげる作用があるため、一時的な近視を防ぐ効果があるといわれています。この働きや効果は、ビルベリーやその他の食品・植物にはない、カシスだけに含まれる特有のアントシアニンによるものとされています。
「情報化の時代」と呼ばれる現代では、仕事や日常生活において、テレビやパソコン、携帯電話などの依存度が高まっているために、目を酷使しがちだといわれています。さらに、年齢を重ねることによる視覚機能の低下も相まって、眼精疲労の悩みは世代を超えて関心を集めているといえます。【24】【26】【27】【28】
●眼病予防効果
・白内障の予防効果
白内障とは、目の水晶体が白く濁ってしまうことによって見えにくくなり、視力が低下してしまう病気です。
アントシアニンには、この白内障を予防する効果があるという研究結果が明らかになっています。
水晶体はたんぱく質でできており、体の老化などによってこのたんぱく質が変性してしまうと、白く濁り、視力に影響を与えます。例えば目玉焼きは、フライパンの上に卵を割って熱すると、徐々に白身の部分が白く、固くなっていきます。これは、卵の白身のたんぱく質が、熱の力によって変性した結果です。
このことから、たんぱく質は変性すると白く濁る、ということが分かります。
白内障も、進行すると外から見ても瞳孔の中が白く見えます。これが、白内障という名前の由来です。
白内障の症状として、ものがぼやけて見える・かすんで見えるなどの症状が挙げられます。水晶体はカメラのレンズのような役割を果たしています。レンズが曇ると、写真の画像がぼやけてしまうように、水晶体が濁ると見えにくくなってしまう、ということです。
アントシアニンが白内障を予防するといわれる要因は、アントシアニンの抗酸化力にあります。 水晶体は、光の通り道であるために紫外線による酸化のダメージを受けやすい部分でもあります。酸化することによって水晶体の濁りを引き起こすともいわれています。アントシアニンの抗酸化力が水晶体を紫外線ダメージから守ることによって、白内障の予防に繋がります。マウスにアントシアニンが含まれたエサを与えたところ、白内障の進行がゆるやかになったという実験結果も発表されており、アントシアニンの白内障に対する働きや効果が明らかになっています。 >>白内障とアントシアニンの研究結果はこちらから
白内障は、50歳代から発症し始め、80歳代になると、ほぼすべての人が発症してしまうといわれています。これは老化による白内障で、加齢性白内障と呼ばれます。このような現状から、「白内障=年配の人の病気」というイメージが強いのですが、近年では若い年齢層であっても白内障を発症する人が増加しています。
そのため、年齢を問わず白内障を予防するための対策をとることが大切だといえます。
・緑内障の予防効果
緑内障とは、何らかの原因によって視神経が傷付き、視野や視力が損なわれてしまう病気です。
眼圧が高くなってしまうことで視神経が圧迫されてしまう他、眼圧が正常であっても緑内障を発症することもあります。これは、視神経が酸化ストレスによって傷付き、弱ってしまうためです。
酸化ストレスは、喫煙や栄養不足をはじめとする生活習慣や、紫外線によるダメージが原因で発生します。アントシアニンの持つ抗酸化力が、この酸化ストレスと戦うことで、緑内障が予防されるといわれています。【24】【26】【27】【28】
>>緑内障とアントシアニンの研究結果はこちらから
●メタボリックシンドロームを予防する効果
アントシアニンには、内臓脂肪の蓄積を抑え、メタボリックシンドロームを予防する効果があります。
メタボリックシンドロームは、内臓脂肪症候群ともいわれています。食べすぎや運動不足といった生活習慣などによって、内臓に脂肪が溜まりやすくなり、高血糖・高血圧・糖尿病・動脈硬化など、様々な生活習慣病の要因となります。
40~74歳においては、男性2人のうち1人、女性5人のうち1人はメタボリックシンドロームの可能性が高い、または予備軍であると報告されています。
アントシアニンには、このメタボリックシンドロームへの予防効果があるという研究結果が発表されています。
マウスにアントシアニンを混ぜた高脂肪のエサを与えたところ、脂肪の合成が低下する・内蔵脂肪・血液中の脂肪の蓄積が抑えられる・血糖値の上昇が抑えられるという結果が得られました。
さらに、血圧の上昇を抑える効果、動脈硬化を抑える効果も報告されています。これらの研究結果から、アントシアニンはメタボリックシンドロームをはじめ、生活習慣病の要因に働きかける効果的な成分としても注目されています。
>>メタボリックシンドロームとアントシアニンの研究結果はこちらから
また、生活習慣病は目にも大きな影響を及ぼします。その例が、糖尿病性網膜症です。
糖尿病になると、尿だけではなく血液中の糖も増加し、血糖値が上昇します。その結果、目の網膜を走る毛細血管と呼ばれる細い血管がもろく、詰まりやすくなります。めぐりが悪くなり、栄養が行き届きにくくなるのですが、それでも網膜は栄養を必要とします。その要求に応えようとして、新しい血管が増やされるのですが、この新しい血管自体も、もろく出血しやすいものとなってしまいます。その結果、出血が繰り返され、全体が見えづらくなり、ひどい時には失明してしまうこともあります。あまり聞きなじみのない病名かもしれませんが、この糖尿病網膜症は、2003年度の調査において、成人の失明原因の1位になったこともあります。
このように、生活習慣病と目はとても深い関係にあるのです。【3】【4】【12】【13】
●花粉症を予防する効果
アントシアニンの花粉症に対する働きや効果も明らかになっています。
花粉症の症状の代表例として、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどが挙げられます。
体内に入ってきた花粉を有害なものとみなして、体の外へと退治しようとします。このときに「ヒスタミン」という物質が放出され、体のSOSに応えようとします。このヒスタミンが花粉を洗い流そうとして、くしゃみ・鼻水・目のかゆみといった、花粉症の症状が引き起こされる仕組みになっています。
アントシアニンには、このヒスタミンを減少させる働きがあります。花粉症にかかりやすいマウスに、普通のエサとアントシアニンが含まれるエサをそれぞれ与えたところ、前者に比べて後者のマウスは、ヒスタミンの量が60%も減少しているという結果が得られました。このことから、花粉症への予防効果が期待されています。【1】【4】
>>花粉症とアントシアニンの研究結果はこちらから
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食事やサプリメントで摂取できます。
アントシアニンを含む食品
主に、色の濃い青紫・黒・赤色の食材に含まれています。
○ビルベリー
○ブルーベリー
○カシス
○黒豆
○ナス
○ブドウ
○紫いも
○紫キャベツ
○紫たまねぎ
○シソ
アントシアニンは長時間の加熱や長期間の保存に弱いため、アントシニンの働きや効果を保つためには、安定した形(サプリメントなど)で摂取することが重要です。
また、アントシアニンは体内に吸収されると、24時間以内に尿と一緒に体の外へと排出されるので、毎日続けて摂ることも重要です。
こんな方におすすめ
○目の健康を維持したい方
○目の疲れが気になる方
○視力を維持したい方
○夜間に車の運転をよくされる方
○パソコン・テレビ・携帯電話などをよく使われる方
○目の病気を予防したい方
○生活習慣病を予防したい方
アントシアニンの研究情報
【1】アントシアニン豊富なカシスエキスおよびシアニジン-3-O-グルコシドの細胞保護作用および抗炎症性作用を調べるため、ヒト細胞(上皮細胞、線維芽細胞)に対するニコチン誘発性障害、LPS誘発性炎症に対して調べた結果、炎症性物質であるIL-6を抑えたことがわかり、抗炎症作用を持つことが示唆されました。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22738124
【2】野生ブルーベリー(Vaccinium angustifolium) を飲用したヒトでは、心血管リスク因子のマーカー(酸化ストレス、炎症、内皮機能)が低下するはたらきが報告されています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22733001
【3】脂肪細胞に対するシアニジン-3-O-βグルコシド(C3G)は、ヒトの細胞(3T3-L1)の高グルコース誘発性脂肪分解作用を検討しました。C3Gは濃度依存的かつ経時的に脂質細胞からのグリセリン放出を抑制しました。この抑制メカニズムは、AMP活性化型プロテインキナーゼの減少と転写因子FoxO1によるO-グリコシル化の減弱、脂肪のトリグリセリドリパーゼ(ATGL)の発現の減少であることがわかり、アントシアニンに糖尿病予防効果が示唆されました。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22721980
参考文献
・大庭理一郎.五十嵐喜治.津久井亜紀夫. アントシアニン食品の色と健康- 建帛社
・津田孝範.須田郁夫.津志田藤一郎. アントシアニンの科学 建帛社
・白土城照. 中・高年の目の病気がすべてわかる本 主婦と生活社
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