横光利一の「幻の俳句集」

https://mainichi.jp/articles/20181208/k00/00m/040/079000c  【横光利一の「幻の俳句集」70年ぶり刊行 大分・宇佐市】  より

川端康成らとともに新感覚派の文学を追求した作家・横光利一(1898~1947年)の幻の俳句集を、父の古里である大分県宇佐市が発刊した。横光の死後、追悼のため俳人・高浜虚子らが発刊を計画し戦後の混乱で中止になったが、70年の年月を経て、初出版にこぎつけた。

 横光は福島県で生まれたが、父は宇佐市赤尾出身。代表作「旅愁」には、主人公が父親の納骨のため赤尾地区を訪ね、市内の城山に登る描写もあり、市民にとって横光はなじみ深い。市は99年から横光を冠にした俳句大会を開催しており、今月24日で20回の節目を迎えたのを記念し俳句集を刊行した。

 俳句集は一度、横光が亡くなった翌48年に268句が選考され、虚子や久米正雄らが序文も書き、出版寸前だったが刊行に至らなかった。99年に出版された定本横光利一全集(河出書房新社、全16巻と別巻)の補巻に268句すべて収録されたが、「単独の『句集』として多くの人に横光の作品に親しんでほしい」と、横光研究者で全集の編集にも携わった宇佐市民図書館職員、松寿敬(しょうじゅさとし)さんが中心となり、企画した。

 「寒椿(かんつばき)しだいに雪の明るくて」「靴の泥枯草(かれくさ)つけて富士を見る」など268句を収めた「横光利一句集」は、最初に出版しようとした時の形を踏襲し、四六判サイズで190ページ。中国・宋時代の「梅瓶」の模様を参考にした装丁の図柄も、当時のデザイナー(故人)が手がけたのとそっくりに仕上げた。

 松寿さんは「未完のまま終わっていた句集の刊行ができ、ほっとしている」と喜ぶ。俳句大会の選者の一人で写真家の浅井慎平さんは「横光の句は真っすぐで格調高い」と話し、横光を知る手がかりになると期待する。市は2000部を作っており、定価は1000円(税込み)。問い合わせは同図書館(0978・33・4600)。【大漉実知朗】


http://yokomitsu.jpn.org/journal.php 【『横光利一研究』 第19号(2021年3月発行予定) 原稿募集】  より

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第19号の〆切りは、2020年10月末日です。

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『横光利一研究』第19号 特集企画「〈翻訳〉の季節─横光利一と同時代文学」

 第19回大会(2020年3月28日)の特集にちなんで投稿原稿を募集いたします。

〈第19回大会特集趣旨〉

新感覚派やプロレタリア文学をはじめとして、日本における1920年代の様々な文学的なムーブメントは、ヨーロッパにおけるアヴァンギャルド芸術運動の流れをくむ「モダニズム文学運動であったと言えるが、その根底にあるのが、欧米語からの翻訳である。 また、東アジアにおいても、この時代は中国や朝鮮半島、台湾などから多くの留学生が来日し、日本語を通じて自らの地域における近代化を推進しようとした。それは日本語からの翻訳という流れを生んでいく(直接に日本語で享受し、発信するケースも多かったが)。そういう点で、1920~30年代は、欧州、日本、東アジア地域の間の文学文化の翻訳が、さほどのタイムラグを含まずに活発に行われた時代でもあった。

横光利一にしても、ポール・モーラン、アンドレ・ジッド、プルースト、ジョイスなどとの関連性、ゲーテやカント、スピノザなどの哲学の受容はこれまでにも論じられてきている。また、日本の新感覚派文学が上海や台湾の文学に影響を与えたことも知られている。そして、この時代、横光利一に限らず、堀辰雄、伊藤整、川端康成、小林秀雄、堀口大學など、外国文学を学び、新たな日本文学を展開していった作家は数多くいる。

 この第19回大会では、「〈翻訳〉の季節─横光利一と同時代文学」と題して、〈翻訳〉とい視点から見えてくる、この時代の文学の風景を考えてみたいと思っている。

 (文責・横光利一文学会運営委員会編集担当)

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