日本人の暮らしとともにあった竹

https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1301/spe1_02.html 【竹ってどんな植物?】  より

ひと口に「竹」といっても、実は驚くほどたくさんの種類があります。

ここでは、竹と日本人との関わりや竹の特性などを紹介します。

日本の文化を育んだ竹

私たち日本人と竹の関わりの歴史は古く、縄文時代の遺跡から竹を素材とした製品が出土しています。日本人は古来より竹を有用な植物として利用してきたのです。農業でも漁業でも、竹はごく身近にあって、軽くて加工性の高い素材として、例えば作物の収穫に用いる背負いかごや腰かごなど、用途にあわせて自分で編んだり職人に注文して使いやすい形や大きさの竹かごをいくつも持っていました。

伝統的な日本家屋にはいたる所に竹が使われていました。土壁には竹を芯に塗り込めてありました。この壁が寒さ、暑さ、湿気などを調整するなど、日本の気候に適した働きをしているのです。堅牢で熱伝導率が高い竹材は、現在でも床材など住宅用資材として利用されています。

また、かごやざる、花器などの日用品から玩具だけでなく、日本文化を代表する茶道や華道の道具、笛や尺八などの楽器、竹刀や弓などの武道具などに用いられていることから、私たちの生活や文化に根差した素材だといえます。

さらに、竹は古来から積極的に日本各地に植えられ、手入れの行き届いた竹林は、美しい風景をかたちづくってきました。

しなやかでいて強く、多岐にわたる用途に活用できる竹は、まさに自然からの恵みであり、日本文化の伝承や人々の暮らしに欠かせない植物です。

目を見張る成長の早さ

分類の仕方や種類の数え方には諸説ありますが、一般に国内にある竹は約600種に及ぶとされています。世界に目を向ければ1,200種ほどあるといいますから、その多様さに驚かされます。

竹は常緑性の多年生植物です。毎年地下茎の節にある芽から新しい竹を誕生させ、わずか数カ月で立派な竹に成長するという特徴があります。1日(24時間)に、マダケで121cm、モウソウチクで119cm伸びたという記録があります。

樹木で幹に当たる部分を竹類では竹稈(ちくかん)と呼びます。竹の寿命は、竹稈が太いものほど長く、一般には20年ほどといわれています。竹は上に伸びていきますが、樹木のように年輪を重ね、毎年竹稈が太くなることはありません。

竹は樹木と比較して成長が早く、種類や用途によって異なりますが、竹材として利用する場合は成長しはじめてから3年以上経った竹を使います。伐採時期は一般的に成長の休止時期である晩秋から初冬が適期です。

また、ぐんぐん成長する竹稈と同じように、地下茎も生命力に溢れた伸長を示します。土質や気象条件によって異なりますが、1年に5mも伸びたという記録があります。3~4年目の地下茎がタケノコを最も量産し、5年目を過ぎると徐々に減っていきます。それ以降は豊作(表年)と凶作(裏年)がほぼ隔年繰り返され、タケノコの収穫量に差が出てきます。

竹に宿る力

竹そのものは勢いよく成長しますが、竹稈の中は空洞です。竹は実に神秘的な植物です。

「京都市洛西竹林公園」の管理指導や熊本県水俣市(みなまたし)にあるエコパーク水俣の「竹林園」の設計などに携わり、竹の生態や歴史に詳しい渡邊政俊農学博士は、「古代の人々は空洞をもつ不思議な形の竹に、一種の自然宗教的な信仰心を抱いたと思われる」と語っていました。そうした神秘性が『竹取物語』を生み、竹を使った祭事や神事を今日まで伝承させたのではないでしょうか。


http://aboutfoo.sakura.ne.jp/kaze/take.html 【竹と暮らす】  より

竹の美しさに、思わず息を呑んだことがありますか。凛として気高き直線の美学。一方、風にゆらぎざわめく柔の構造。そうした竹林がかつては身近にあった。そして竹は私達の暮らしのあらゆる場面に登場してきた。建築材料として、竹細工として、水防竹林として、そして食べ物として‥。実に様々に私達の生活にとけ込んできた植物と言える竹の魅力は今でも多くの人を引きつける。

日本の文化や生活は、遠く縄文時代から竹と深い関わりがある。しかし最近では、宅地造成で竹林はどんどん伐採され、プラスチックなどにおされて竹の生活具も減っている。竹林の保護や育成だけでなく、竹の良さを知って生活にもっと生かし、竹の育んだ文化を見直していきたいものである。

■日本人の暮らしとともにあった竹

私達の身のまわりにある「竹」を、少し気をつけて見てみると、竹藪があり、竹垣がある。物干し竿や旗竿、熊手や竹箒がある。床柱や簾や竹梯子、線路には遮断機がある。茶せんや、水筒や竹杓子、竹箸、竹串、そして種々の籠や笊がある。弓矢や竹刀、尺八や笛、物差し、竹馬や竹とんぼもある。七夕の竹や戎様の笹のように、祭りや年中行事に欠かせない竹もあるし、地鎮祭にはしめ縄を張った竹がなくてはならない。

これらは現在でもよく目にする「竹」の一部だが、少し以前の日本の暮らしのなかには、もっと多くの「竹」があった。急激に姿を消しつつある草葺きの民家の屋根には竹垂木が使われているし、土壁の芯は竹を割った小舞竹で組んだもの。おもに西南日本では床に竹を並べていたし、流し場にも竹が使われていた。囲炉裏には竹の自在鈎が下がり、竈の脇には火吹き竹が置かれていた。清水をひく樋や軒下の雨樋にも竹が使われた。エジソンが最初につくった電球のフィラメントは京都の竹であった。竹の棹の部分だけでなく、竹皮を使った笠や草履もあった。竹皮は版画用のバレンに今も使われているし、食品の包装用にも使われる。また、笹の葉寿司のように葉を使う。そして筍は食用となる。

竹はまだ他の素材と併用して使われる場合も多い。例えば凧の骨、団扇や扇子や和傘の骨や柄、提灯の骨、筆軸、算盤の玉通しにも使われた。

このように、ひとつひとつあげていったらきりがないほど竹は日本人の生活のあらゆる部分に利用されてきた。それだけ竹が利用しやすい自然素材ということなのだが、そのわりに竹のことはあまりよく知られていない。

竹は世界では 600~1250種、日本では 450~ 600種あるといわれている。ただし、種々の細工や道具に利用されるのはそのうちの一部で、日本の場合最も多いのがマダケ(カラタケ、ニガタケ)である。モウソウチクやハチクもよく使う。ただし、これらはいずれもマダケ属の竹で、岩手県北部から以北にはないし、それ以南からだいたい中部にかけての山岳地帯にもない。そうしたところで使われる竹は、メダケやヤダケやネマガリダケといった俗に篠竹とよばれる細い竹である。また沖縄にもマダケはなく、ホウライチクの類が使われる。なお、マダケのような太い竹を「竹」、俗に篠竹とよばれる生長しても節部に竹皮の残るものを「笹」と分類している。

「竹を割ったような…」という形容詞があるように、竹は縦に割れやすい。中空で軽いが、節があり強靱さと弾力性を併せ持つ。毎年自然に新しく筍が出て、100日ほどで約 20㍍もの高さに生長しきってしまう。マダケ属では一日に1㍍も伸びる場合もある。約70ある節間ごとに伸びるからで、これほどの早さでこれほどの大きさに成長する植物は、竹のほかにはない。

竹文化は日本を代表する文化の1つであり、生活様式がどんなに変わっても、そのなかで生き続けていくにちがいない。そして風を受けてなびく竹林の様子は、いつまでも私達をまるで別世界にいるような幻想の世界へと誘ってくれるだろう。

※竹炭

木炭の効能が注目されるにつれて、竹を炭化させた「竹炭」も脚光を浴びている。主な効能は木炭と共通点が多いが、竹炭の違いは木炭よりも吸着力が大きいところにある。1日に1m 20cmも成長するという生命力溢れた孟宗竹から作られた 竹炭の表面積は、備長炭に比べると2倍以上、さまざまな有害物質や臭いを吸い込む吸着力は、10倍もあるといわれている。

竹炭や木炭を顕微鏡で見ると無数の孔がパイプを束ねたような構造になっていることがわかるが、この多孔質が微生物が住むための環境を提供したり、湿度や匂いを吸収したり、遠赤外線による温熱効果の理由となっている。

※竹の驚異的な生命力について

京都大学の上田弘一郎名誉教授の調査記録によると、広島に原爆が投下された時、爆心地近くの植物は全て焼けていたがその中で唯一孟宗竹のみが生き残っており直接被爆した表面部分は黒く焼けていたが裏側はなにも変化がなかったとされており、その1年後再度検査した結果黒く焼けていた部分は消え完全に再生されていたと記録されている。

※籠(かご)と笊(ざる)の違い、ご存じですか?

編み込む竹の表皮を外側に使ったのが籠、逆に内に使うのが笊と言われている。

※紅葉にはやや早い竹の春

筍を育てるために葉が黄ばむ時期を竹の秋と言い、逆に新葉をつけ最も生き生きとする秋を竹の春といいならわすのは、日本人の微妙な感性の現れと言える。

  化野(あだしの)や風とあそびて竹の春      中谷朔風

  横目して明るき藪や竹の春            日野草城

葉の黄ばみを見せる他の樹木をよそに竹は外見だけでなく繊維の力が最も充実する季節を迎える。 

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