毒キノコ

https://www.bepal.net/play/hunting/57779  【とっても美味そうな毒キノコ!!『 カキシメジ 』】  より

キノコを採って&撮って30年!マッシュ柳澤の知れば知るほど深みにハマる野生菌ワールドへようこそ!

要注意!!きのこ食中毒多発!必ず覚えておきたい毒きのこ②

小雨に濡れたカキシメジ(毒)の成菌。カサの粘性がよく分かる。

きのこ中毒を多発させる「毒キノコ」の代表、いわゆる「きのこ中毒御三家」は、カキシメジ、クサウラベニタケ、ツキヨタケのこと。私の住む長野県では、キノコ食中毒の原因の70%がこの3種によるものという。

カキシメジ中毒の発生件数は、少し古いデータで恐縮だが、1970~1994年までの25年間で36件、中毒者数148名。この数字が多く感じるか少ないと感じるかは微妙なところだが、カキシメジの中毒は、死亡例もあるツキヨタケの中毒などに比べると比較的軽く、軽い中毒の場合は自己診断で自宅での療養で済ましてしまうケースもある。

田舎では毒きのこに当たることを、意地汚く恥ずかしい、みっともない事と感じる風潮があり、病院に行かず我慢してしまうことも少なくないのだ。

もっとも、このやせ我慢がキノコ中毒の重篤化する一因だ。キノコに当たったら必ず病院で治療を受けるべきで、カキシメジ中毒でも入院治療が必要だったり、治癒するまで10日も掛かったという例もある。なめてはいけない。

いずれにせよ、保健所などに報告されず潜在している事例の数を含めると、実際のカキシメジ中毒の発生件数はもっとずっと多いのではないかと思う。

カキシメジ中毒の症状は、激しい胃腸系の中毒で、食後30分から1時間ほどで症状が現れ、頻繁に嘔吐、下痢が続き腹痛と頭痛を伴うという。わずか2本を3人で食べて中毒、入院した例もあるから、致死性の猛毒ではないとしても毒性自体は決して弱いとは言えない。

カキシメジ(毒)の特徴と見分け方は?

マツ林内の群生。カキシメジは一ヶ所で大量に採れることも多い。そのため地域イベントなどで振る舞われ、集団食中毒事件に発展することもある。

カキシメジの一番の特徴は、美味そうに見える毒キノコだということ。

茶色のカサには、ヌメリがあり、小さい時はナメコみたいで好ましい。ヒダは白色で毒を疑わせる違和感が無い。大きくなると肉厚で堂々とした、いかにも食べられそうな風体をしている。しかも群生するから、一ヶ所でたくさん採れる。

難点は古くなるとヒダに赤褐色のシミができて汚く見えることと、独特の臭い匂いがあること。

その匂いにしても、他の毒キノコなどにあるような、食べ物ではありません!と主張しているような刺激臭や薬品臭では無い。

匂いの感じ方には個人差があり正確な表現は難しいが、魚の「くさや」の臭いのような、やや生臭い香り。なかには気にならない人がいても不思議ではない。

もちろん、「地味なキノコは毒ではない」とか「縦に避けるキノコは毒ではない」などの毒キノコの見分け方の迷信にも、すべて当てはまる。

しかも、よく似たキノコにチャナメツムタケやクリフウセンタケといった人気のある食用菌が揃っている。実際、近所のキノコの鑑定を頼まれるような、きのこ狩りのベテランのなかにもカキシメジとチャナメツムタケ(食)の同定(見分け)には自信がないという人もいたりする。

食用になるキノコと間違えやすい条件が、ほぼ一通り揃っている。カキシメジ中毒が多い理由もうなずける。

カキシメジ(毒)に間違えられやすいキノコ

●チャナメツムタケ(食べられるきのこ)

学名:Pholiota lubrica (Pers.) Sing.

チャナメツムタケの比較的若い個体。成熟したり、雨に打たれるとカサの鱗片は失われる。

【カサ】

直径4cm~8cm。饅頭形から平に開く、湿時、強い粘性があり、茶褐色から煉瓦色で周辺はやや淡色。表面は幼時、白色鱗片が散在するが、成長につれ消失し、成熟すると繊維状となる。

【ヒダ】

湾生から直生し、密。若い時期は白色、成長すると土褐色。

【柄】

若い時、繊維状鱗片に覆われささくれ状。のちに繊維状で白色。下方は褐色を帯びる。上部の内被膜(幼菌の時にカサの下端とヒダを覆っている皮膜)の破片は消失しやすく、ツバは無い。切断面は中実。

【肉】

白色で無味、やや土臭さがある。

【環境】

晩秋、広葉樹林に地上の埋もれ木やその周辺に群生する。

【食毒】

可食で比較的美味。生食は厳禁。

特に誤食例の多い、チャナメツムタケとカキシメジの判別のポイントは?

①カサが開き切らない若いチャナメツムタケのカサの縁に、白い薄い膜の破片が着いていて、カキシメジには着いていないこと。

②若いチャナメツムタケのカサの表面に綿毛のような白い鱗片が点在すること。ただし、この鱗片は成長すると消えてしまう。カサが開ききったものの場合は、カキシメジとの区別の特徴にはならない。

③カキシメジに特有の悪臭が、チャナメツムタケには無く、代わりに弱い土臭さがあること。

④カキシメジのヒダは白色で、古くなると赤褐色の染みができるが、チャナメツムタケのヒダは成長すると粘土褐色で、染みはできない(腐り始めれば、色は変わる)。

褐色のシミが付いたカキシメジのヒダの様子。

成熟したチャナメツムタケののヒダ。

⑤チャナメツムタケの柄の表面は、若い時ささくれるが、カキシメジの柄はささくれない。

⑥カキシメジの肉には、弱い苦味があるが、チャナメツムタケは無味。

大切なのは、一本だけ見て安易に判断しないこと。カキシメジもチャナメツムタケも群生する性質がある。一本見つかれば周囲に何本か生えているはずだ。成長状態の違うものなど、複数の個体を観察すると見分けの精度が高くなる。

命拾いしたのはカキシメジ(毒)を食べたおかげ!?

昭和56年の秋、長野県上田市の3人家族が、数日前に採って干しておいた数種類のキノコを、キノコご飯にして食べた。食後30分ほどして、家族全員が、激しい嘔吐、下痢の症状に見舞われ、脱水症状を起こして市内の病院に収容された。

上田保健所で食べ残しのキノコの種類を確認した結果、有毒のカキシメジの他、恐ろしいことに「シロタマゴテングタケ(猛毒)」が干しキノコの中に混じっていたという。

シロタマゴテングタケはドクツルタケと並び、一本食べれば死ぬと言われる致命的な猛毒菌として知られるキノコだ。仮に命が助かっても後遺症が残ることもある。ただし潜伏期間が比較的長く症状が現れるまで6時間から12時間かかるという。

『 殺しの天使 』ドクツルタケの正体

幸いなことに、このケースでは食後すぐ症状が現れ嘔吐する性質が強いカキシメジを一緒に食べたおかげで、シロタマゴテングタケの猛毒がからだに吸収される前に全て吐き出すことができたようだ。

しかし、名前も判らないキノコを端から干して食べてしまうというのも、物凄い勇気??だと思うが。

キノコに当たらない、一番の方法は単純だ。子供に言い聞かす注意と一緒。

知らない人には付いて行かないように! 知らないキノコは食べないように!

●カキシメジ(※毒※)

学名:Tricholoma ustale (Fr.) P. Kumm.

成熟すると、カサのうらに赤褐色のシミが現れる。

【カサ】

直径、約4cm~15cm。幼菌時、縁が内側に巻き、半球型から平を経て中央部ややや窪んだ皿型に開く。表面、湿時強い粘性があり、平滑からやや繊維状。赤褐色から栗褐色、周辺部は淡い

【ヒダ】

白色で湾生し、やや密。古くなると赤褐色のシミを生ずる。

【柄】

上下同大の棒状で、断面は髄状から中空。表面は上部白色で粉状、下方は繊維状または細かい鱗片にまばらに覆われる。触れると褐色になる。

【肉】

白色で独特の悪臭と弱い苦味がある。(灰汁様の臭いとする資料もあるが、私にはやや生臭い臭いのように感じる)

【環境】

広葉樹林、マツ林地上に群生する。

【食毒】

有毒。消化器系の中毒を起こす。毒成分はウスタル酸。他に青酸合成能力があるが、低濃度で人体に影響を与えるほどではない。

【注意】

外見的特徴がよく似た複数の種を含む可能性がある。針葉樹林に発生するものを「マツシメジ」として無毒とする説があるが、カキシメジも普通にマツ林に発生する。似た外見を持つキノコは食べてはいけない。

カキシメジによく似た毒きのこ

●キヒダマツシメジ(※毒※)

学名:Tricholoma fulvum (Bull.) Sacc.

名前はキヒダ「マツ」シメジだが、カバノキ科の樹下に発生する。

キヒダマツシメジの黄色いヒダ。カキシメジと同じように赤褐色のシミを生ずる。

【カサ】

直径4cm~8cm。表面湿時粘性があり繊維状、栗褐色から暗褐色。

【ヒダ】

湾生から直生し密。黄色。成熟すると赤褐色のシミを生ずる。

【柄】

棍棒状で下方が太く、上部はカサよりやや淡色、下部はほぼカサと同色。繊維状から細鱗片状。

【肉】

淡黄色で無味無臭。

【環境】

主にカバノキ科樹下に散生、群生。

【食毒】

有毒。消化器系の中毒を起こす。神経系中毒の可能性もあり。

文・写真/柳澤まきよし

参考/

「日本のキノコ262」(自著 文一総合出版)

「北陸のきのこ図鑑」(池内良幸著 橋本確文堂)

「Gakken 増補改訂 フィールドベスト図鑑 日本の毒きのこ」(長沢英史監修 学研教育出版)

「きのこの100不思議」(日本林業技術協会編 東京書籍)

「毒きのこ・絶品きのこ狂騒記」(小山昇平著 講談社)

「長野県で発生したきのこ中毒の記述統計」(山浦 由郎、中村 和夫、石原 祐治著 食品衛生学雑

誌/ 38 巻 2 号)

「自然毒のリスクプロファイル」(厚生労働省)


https://www.bepal.net/play/hunting/57763  【『 殺しの天使 』ドクツルタケの正体】

キノコを採って&撮って30年!マッシュ柳澤の知れば知るほど深みにハマる野生菌ワールドへようこそ!

カラマツとウラジロモミの森に群生するドクツルタケ。純白で清楚な姿なのだがその本性は…。

英語名で『デストロイング エンジェル(destroying angel)』破壊する天使、あるいは殺しの天使。プロレスラーやアニメのロボットのような名前だが、ドクツルタケは、おそらく日本で最も毒性が強く危険なキノコだ。

毒キノコの多いテングタケ属のキノコの中でも、毒性の強さは群を抜いていて、一本食べれば確実に死ぬと言われている。数ある毒キノコの中でも、一本で命に関わるほどの毒性を持つものはそうは多くない。

しかも恐ろしいのは発生環境を選ばず分布が広いこと、後述する致命菌のシロタマゴテングタケ等、近縁のキノコも含めると、里山から深山まで森林内なら、およそ何処にでも普通に発生し、発生時期も梅雨時から秋遅くまでと長い。1日、きのこ採りで山を歩けば、たいがい1本や2本は見かけるだろう。

夏、コナラ主体の里山に発生したシロタマゴテングタケ。ドクツルタケよりやや小型だが、毒の強さは変わらない。

外見も警戒心を抱かせない。純白で楚々とした立ち姿で、毒キノコらしい派手さは何処にもない。また、特別な匂いもなく、味も温和。ドクツルタケ中毒から、運良く生還した人はむしろ、美味かったとさえ証言している。

たまに初心者に、きのこ狩りの注意を聞かれることがある。

必ず言うのは、「白いキノコは絶対食べないように!!」ということ。生命の危険に直結する、ドクツルタケの誤食を警戒しているからだ。

ドクツルタケの主な有毒成分は、ビロトキシン類、ファロトキシン類、アマトキシン類等で、キノコ1本に成人一人分の致死量を超える毒成分を含んでいる。

特に毒性の強いのは、アマトキシン類の中のα-アマニチンで、肝臓や腎臓が壊死し、劇症肝炎、心臓の異常などの多臓器不全、脳症を併発し死に至る。運良く助かっても、重篤な後遺症が残ることが多いという。しかも、α-アマニチンは熱に強く、調理によって分解することはなく、解毒剤も存在しない。

毒キノコの見分け方でよく言われる俗信、「縦に裂けやすいキノコには毒がない」「色が派手なキノコは毒、地味なのは無毒」「ナスと煮れば毒が消える」等々には全く根拠がない。さすがに最近はこんな迷信をそのまま信じている人は少ないと思うが。

実際にドクツルタケとシロタマゴテングタケは、日本で一番、食中毒による死亡事故が多いキノコなのだ。

ドクツルタケ幼菌、とても毒がありそうに見えない。幼菌でも成菌と同等の毒成分を持っている。

実際に起きた、悲惨なドクツルタケ中毒による死亡事件の一例

1993年に起きた、ドクツルタケによる痛ましい死亡事故の記録。

この方は、「ナスと煮れば…」を信じていたようだ。

1993年10月10日11時ころ、71才男性が、裏山で採ったキノコを、65才妻と、ナスと煮て食べた。

10月11日 午前0時ころより、激しい嘔吐、下痢。症状はいったん軽快。特に何の手当も受けず、自宅で休養するが、翌12日、妻65才が死亡しているのに気づき、近隣の医者の往診を受け総合病院に緊急入院。中毒の原因がドクツルタケと特定され治療を受ける。この時点では症状が安定し軽快していたものの、しばらくして一気に悪い経過をたどる。

ドクツルタケ=アマニチン中毒の特徴は症状がいったん改善されたかに見えその後、劇的に進行することが多い。この男性の場合も、入院翌日から劇症肝炎の症状が現れ、血漿交換などの治療の甲斐なく7日目に多臓器不全で息を引き取っている。亡くなった時、肝臓の正常な組織はほとんど残っていなかったという。

なんとも恐ろしいドクツルタケの毒だが、アマトキシン類の強い細胞毒性を利用して、抗がん剤として有効利用できないかという研究もされているという。

ドクツルタケの毒の強さはどれくらい? 中毒の症状は?

ずっと昔のことだが、私の父のキノコ仲間でキノコの達人、蓼科の山の宿のご主人が、とある宗教団体の若者二人にきのこ狩りのガイドをしたことがあったという。ドクツルタケばかり採っているので不審に思っていたら、彼らは後に日本を震撼させたあのカルト教団の信者だったそうだ。

ちなみにドクツルタケの主要な有毒成分α-アマニチンは、単純比較はできないものの、体重あたり致死量では毒ガスのサリンよりも毒性が強い。

これほど強い毒成分なのに、キノコ毒がミステリー小説や映画の小道具に使われた例というのは、あまり聞いたことがない。やはり即効性が無く、結果がすぐにわからないのは具合が悪いのだろう。

ドクツルタケの中毒の症状が現れるのには6時間~24時間の比較的長い潜伏期間がある。この間に適切な治療を受ければ、比較的高い確率で命が助かる。さらに症状が現れても、一時的に軽快し、致命的な劇症肝炎を発病するまでには、しばらくの間がある。すぐに昏倒してしまうわけではないようだ。

死亡するまでには数日かかり、その間かなりの騒ぎになるので、隠密理にことを終わらせるのは不可能に近い。

しかも、意識があるので、被害者はかなりの確率で、いつ食べたのか、食べさせた犯人を告げることができるだろう。しかも、かつては死因の特定が難しかったキノコ中毒死だが、今では医学の進歩で死後、遺体からアマニチンを検出しドクツルタケ中毒を特定できるようになったという。

ドクツルタケは、ミステリー小説の完全犯罪のトリックに使うに相性があまり良くないようだ。

ドクツルタケやシロタマゴテングに似たキノコはまず猛毒と疑え!

ドクツルタケ、シロタマゴテングタケには、まだ名前の付いていないよく似た近縁種や変種が複数あることが知られている。それらのキノコも、同様の猛毒と思って間違いはない。

●ドクツルタケ、シロタマゴタケ類似菌(※猛毒※)

ドクツルタケ、シロタマゴテングタケとの違いは、ツバの上面にヒダ由来の条線があり、黄色みを帯びること。ドクツルタケと同様の毒性があると思われる。埼玉県南部で普通に見られる。

現在もドクツルタケ中毒の有効な治療法は確立されていない。中毒初期には胃洗浄や点滴等、肝炎が発症してからは、血漿交換療法、血液透析等が効果あるのではと言われている。一本食べた場合、適切な治療をしなければ、ほぼ100%、治療を受けても70%の致死率。

真っ白なキノコは、煮ても焼いても食えない、もちろん生では口にしない。これが最も効果のある予防法のようだ。

命に関わる絶対に食べてはいけないキノコ

●ドクツルタケ(※猛毒※)

学名:Amanita virosa (Fr.) Bertill.

比較的若いドクツルタケ。ツバは脱落することがあり、同定の決め手に成らない事がある。

【カサ】

直径、約5cm~15cm。卵型から中央部が盛り上がった平に開く。表面平滑で湿時弱粘性、乾くと絹状光沢がある。純白色でときに中央付近が薄く淡黄色を帯びることがある。

【ヒダ】

白色でやや密。離生する。

【柄】

表面白色で繊維状のささくれに覆われ、だんだら網様を成すが、幼菌では目立たず、ほぼ平滑。切断面は中実で白色。上部に膜質のツバを備え、ツバから上は粉状。ツバは成長の過程で脱落することもあり観察には注意が必要。基部は膨らみ、膜質のやや深いツボがある。

【肉】

白色。無味無臭。

【環境】

各種林内地上に散生、群生。

【食毒】

致死性の猛毒。毒成分はファロトキシン類、ビロトキシン類、アマトキシン類、ジヒドロキシグルタミン酸等。

●シロタマゴテングタケ(※猛毒※)

学名:Amanita verna (Bull.) Lam.

ドクツルタケ、タマゴテングタケとともに、キノコ界の猛毒御三家の一翼を担う。

【カサ】

直径、約4cm~10cm。釣り鐘型から扁平に開く。白色だが中央部が淡黄色を帯びることがある。表面平滑で粘性はない。

【ヒダ】

白色、離生し密。

【柄】

表面、ほぼ平滑またはごく細かい鱗片に覆われる。下方にやや太く、基部は球根状、膜質のツボを備える。上部には膜質のツバを備え、ツバの上部は粉状。ときにツバの裏側が淡黄色を帯びる。断面は髄状。

【肉】

白色で脆く、柄の髄状部分は黄色を帯びる。

【環境】

各種樹種の森林に散生、群生。

【食毒】

致死性の猛毒。毒成分は、ファロトキシン類、アマトキシン類、溶血性タンパク等。

ドクツルタケに似た食べられるキノコ

●シロオオハラタケ(注意が必要なキノコ)

学名:Agaricus arvensis Schaeff.

可食とされるが、あまり一般的ではない。体質により中毒することがあるという。必ず加熱調理して利用すること。

【カサ】

直径、約8cm~18cm。類球形から饅頭形を経て平に開く。類白色で平滑。ときにうっすらと鱗片に覆われることがある。粘性はない。

【ヒダ】

離生し極めて密。白色から淡紅色を経て黒褐色。

【柄】

下方に太く中空、基部は膨らむ。表面は白色~肌色、細かな繊維状鱗片に覆われる。上部に膜質で白色のツバがあり、裏側に綿くず状の繊維を付着する。

【肉】

厚く白色。傷つくと淡く黄変する。無味無臭。

【環境】

夏から秋。林内の開けた場所や、竹林、牧草地に発生。ゴルフ場などでもよく見かける。

【食毒】

従来可食とされて来たが、体質により中毒する場合がある。利用は慎重に。

●シロフクロタケ(食べられるキノコ)

学名:Volvopluteus gloiocephalus (DC.) Justo

オオフクロタケの白色変種。基準種のオオフクロタケのカサは暗灰褐色。幼菌は驚くほどドクツルタケと似ている。ツバが無いことが、ドクツルタケやシロタマゴテングタケとの見分けのポイントだが、カサがつぼんだままの幼菌では分かりづらい。自信が無い場合は絶対に食べないこと。

【カサ】

直径、約7cm~10cm。卵型から中央部、やや高い平に開き周辺部はやや波打つ。表面粘性あり平滑。白色~単灰褐色、基準種のオオフクロタケは黒褐色。

【ヒダ】

離生し密。初め白色、のち肉色。

【柄】

下方にやや太く、中実。ツバは無い。表面、白色で平滑。基部は膨らみ、やや厚い膜質の深いツボがある。

【肉】

白色で無味無臭。

【環境】

初夏から晩秋。腐敗の進んだ材上や埋れ木、庭園や畑などの肥沃な土地に発生。

【食毒】

可食。幼菌時はドクツルタケに酷似しているため、注意が必要。

文・写真/柳澤まきよし

参考/

「山溪カラー名鑑 増補改訂新版 日本のきのこ」(山と渓谷社)

「北陸のきのこ図鑑」(池内良幸著 本郷次雄監修 橋本確文堂)

「増補改訂 フィールドベスト図鑑 日本の毒きのこ」(長沢英史監修 学研教育出版)

「毒きのこ・絶品きのこ狂騒記」(小山昇平著 講談社)

「原色日本新菌類図鑑」(今関六也著 本郷次雄著 保育社)

「食品衛生学雑誌/35 巻(1994) 5 号ドクツルタケによる食中毒」村上 行雄

「日本農村医学会雑誌/ 47 巻 (1998―1999) 2 号劇症肝炎の経過をたどったキノコ中毒の1例」

「日本のキノコ262」(自著 文一総合出版)

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