花合野川の濁流で護岸が削られ傾いた建物=9日午後2時37分、大分県由布市湯布院町湯平(撮影・稲田二郎)
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/625165/ 【コロナ拡大、記録的豪雨…「GoTo」開始、不安含み 九州の観光地】2020/7/11 6:00 (2020/7/12 10:00 更新)
西日本新聞 社会面 布谷 真基 森井 徹
「Go To キャンペーン」の観光割引の22日開始が決まったことについて、九州の観光地や宿泊施設からは歓迎する声の一方、記録的豪雨の被災地では「手放しには喜べない」との声も聞かれた。東京などで新型コロナウイルス感染者が再び増加しているのも懸念材料で、客足が伸びるかどうかは不透明だ。
豪雨で旅館損壊や道路寸断などの被害が出た大分県由布市。市まちづくり観光局の生野敬嗣事務局次長は「豪雨対応に追われる中で『さあやろう』というふうにはならない」と案じる。市内への交通網も打撃を受け「本格的に動きだすには時間がかかるかもしれない」と話した。
今月から屋内アトラクションの大部分を再開した大型リゾート施設ハウステンボス(長崎県佐世保市)は当面は九州内からの誘客に注力する。新型コロナ対策を強化しており、「梅雨明けして落ち着いたら、キャンペーンを使って安心して来園を」(広報)と呼び掛ける。
世界新三大夜景の街並みを一望する稲佐山観光ホテル(長崎市)は、3月から休業し、今月3日に営業を再開したばかり。老松健三予約部長は「思ったより早いキャンペーンの開始。挽回を期待したい」と歓迎する。東京などからの来客も想定しており、新型コロナ予防を徹底するという。
一方、九州観光推進機構の広報担当者は「豪雨の被害が大きく、宿泊施設を含めた復旧対応が最優先。まだ正式にコメントできる状況にはない」と話した。 (布谷真基)
予算配分、被災地考慮
観光需要を喚起する政府の「Go To キャンペーン」は22日から全国一斉に始まるが、九州には今回の豪雨で被災した観光地が少なくない。観光庁は「予算配分や宣伝のあり方などを工夫し、被災した地域にも効果が行き渡るようにしたい」としている。
今回の豪雨では大分県の温泉地などが甚大な被害を受けたほか、熊本県を中心に鉄道や道路の損壊も相次ぎ、建物が被災を免れても観光客が来訪できずに影響を受ける事業者も相当数に上るとみられる。
政府は特定の地域に旅行者が偏るのを避けるため、全国を10超の地域に分けて予算を配分する計画。復旧後に観光客の受け入れを始めたら既に予算枠を使い切っていた-ということがないように、観光庁は復旧状況と地域ごとの利用実績を確認しながら予算配分を工夫する。被災地域の応援プロモーションも検討するという。
観光庁の担当者は「もともとキャンペーンは新型コロナ対策の『ふっこう割』の位置付け。被災地の支援にもつながるよう柔軟に対応したい」と話す。 (森井徹)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020071000305&g=soc 【熊本、避難所に2000人超 豪雨、引き続き捜索】 2020年07月10日
熊本県南部を中心に大きな被害を出した豪雨で、熊本県の9日午後時点のまとめでは、県内で2000人以上が避難を余儀なくされている。県南部など九州各地の被災地では、10日も引き続き行方不明者の捜索が行われた。
84河川100カ所氾濫 再び大雨、被災地厳戒―九州で死者62人
熊本県の9日午後1時時点のまとめによると、県内18自治体に計93カ所の避難所が開設され、2055人が避難している(避難世帯数は不明)。人吉市が最多の1143人で避難者数の半数以上を占める。ほかに多いのは球磨村の426人、八代市の197人で、この3市村で全体の86%を占める。
10日朝までに確認された県南部の死者は58人。このほか6日以降の豪雨で県北部の山鹿市で2人、福岡県で2人、大分県で1人が死亡し、九州の犠牲者は計63人に上った。熊本県南部で10人など、九州で計16人が行方不明となっている。
熊本県では10日も激しい雨が断続的に降り大雨となる恐れがあり、気象庁は引き続き県南部などに土砂災害警戒情報を出し、厳重な警戒を呼び掛けた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f43e6baa8d67dc4486a02e35bfcd1be56449b92e【コロナ禍で「人が来ん…」 ボランティア不足で復旧進まず 熊本豪雨・被災地ルポ】7/17(金)
浸水被害に遭った中心市街地の商店街。店先に災害ごみが山積みになっていた=16日午後、熊本県人吉市紺屋町
中心市街地はまだ、汚泥にまみれていた。歩道などに山積みにされた家財道具の数々。記録的な豪雨によって球磨(くま)川が氾濫した熊本県人吉市は、浸水の爪痕が深く刻まれていた。被災者は「もっと助けがほしい」と嘆く一方、新型コロナウイルス感染の懸念からSOSを発信しにくい思いも抱える。複雑な心境が交錯する被災地を取材した。(金 旻革)
ボランティアのニーズなどの調査を目的に被災地入りした「ひょうごボランタリープラザ」(神戸市中央区)のスタッフに同行した。15日、神戸から新幹線とレンタカーに乗り継いで約4時間。九州自動車道の人吉インターチェンジから約1キロ南に下りていくと風景が一変した。
JR肥薩線の線路をまたいだ先から道路が茶色に染まり、民家や店舗の窓ガラスは割れていた。球磨川に近づくにつれ、街はさらに色彩を失っていく。旅館の駐車場は泥が堆積したまま。建物にへばりつくように積み上がった流木が、浸水の猛威を物語っていた。
鼻を突くヘドロのにおい。9年前の東日本大震災、2年前の西日本豪雨の被災地の記憶がよみがえった。
九州山地に囲まれた盆地の人吉市の中心部を貫流する球磨川。急流を船で下る「球磨川下り」やラフティングは重要な観光資源の一つだ。だが今回、街に恵みを持たらす川が牙をむいた。
「2階まで水が来て屋根の上に逃げたんだ」。流域に暮らす男性(74)は、木材などのごみであふれかえった自宅前で語った。浸水で周辺の民家3棟が押し寄せた。「温室の果樹園はもう再起不能。早く自宅に帰れたらいいんだけど、家族と知り合いだけで片付けているから時間がかかるね」。避難所の生活が終わる見通しは立たない。
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熊本県南部などを襲った豪雨の特徴はコロナ禍に起きた初の大規模災害という点だ。熊本県はボランティアの受け付けを県内在住者に限定し、被災地の災害ボランティアセンター(VC)はその意向を踏襲した。
自宅が浸水した60代男性は不安を吐露する。「来てほしいのはやまやまだが、隣県の鹿児島でも(コロナ感染が)出ている。自衛隊や地元の土木業者も手伝ってくれているから」
ただ、被災者の思いもさまざまだ。「ボランティアを頼んでも誰も来てくれないから困っとったの」と話すのは、書道具店1階が浸水した男性(87)。力仕事の泥出しができず、人を雇ってしのいだ。「人吉は山に囲まれていて交通が不便だから、人が来んとですよ」と、もどかしさをにじませた。
被災者も、VCを運営する社会福祉協議会も人手不足を肌で感じているが、コロナを警戒する地域心情の中で、身動きが取れないのが現状だ。
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県外ボランティアが見込めない中、要となったのは地域の支え合いだった。
人吉市では住民らが民間のVCを開設。被災者に日用品などの物資を配布し、被災者に炊き出しを毎日振る舞う。中心的役割を担う女性(65)も被災者の一人だが、「被災者でもできる支援をしないといけない」と話した。
被災地を歩く中で、共助の大切さを実感しつつ、マンパワーの明らかな不足に、コロナ禍でも広く人を募る仕組みづくりができないものかと考えた。消毒や検温など感染対策の基本を徹底し、被災者が安心して受け入れられるよう、国や自治体は知恵を絞るべきだ。
人を支えられるのは人だけ-。阪神・淡路大震災の被災者支援を四半世紀続けた男性が大事にした言葉を、被災地でかみしめた。
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