アウェアネス

https://www21.atwiki.jp/p_mind/pages/143.html  より

概説

アウェアネス(英: awareness)とは、認知科学や心の哲学の用語で、人が自分の精神や知覚の情報にアクセスできて、その情報を直接的に行動のコントロールに利用できる状態(direct availability for global control)」のことを言い、日本語で「気づき」とも訳される。自覚状態を指すため「覚醒」という意味もある。

茂木健一郎は以下のように説明している。

部屋で本を読んでいる時など、突然、換気扇の音や、冷蔵庫の音に注意が向けられることがある。これらの音は、アウェアネスの中ではクオリアとして成り立っていたのであるが、注意が向けられていなかったので、それと把握されたり、言語化されたり、記憶に残ったりすることがなかったのである。(茂木 2004:50)

電車でぼんやり窓外を見ていると、さまざまな光景が流れるが、視覚でとらえたもの全ての形や意味を理解できるわけではない。しかし多くのものが見えていることだけは理解できる。このように多くの視覚的クオリアがある状態は「視覚的アウェアネス」と呼ぶ。

人間の脳内で行われている処理、または人間の行動、それらの全てがアウェアネスの状態であるわけではない。精神分析学では、ほとんどの処理はアウェアネスを伴わず進行すると考えられている。これは無意識と呼ばれる。アウェアネスは意識的な運動に情報を利用できることを言う。反射や無意識での反応とは区別される。

人間の脳は外部からの知覚刺激によって覚醒状態になり、知覚の対象へ注意を向ける状態に移行する(志向性)。その移行の際に意識が発生する。この一連の過程がアウェアネスである。

意識とアウェアネスの違い

「意識(consciousness)」と「アウェアネス(awareness)」という語の意味は類似しているが、認知科学や心の哲学では論者によって微妙に用いられ方が異なる。

ジョン・サールは「意識(consciousness)」というものを以下のように定義している。

「意識」という言葉で私が意味するのは、典型的には夢のない眠りから覚めたときに始まり、再び眠りにつくまで日中続く、感覚や気付きのこうした状態である(Searle 1999: 40-41)

サールからすると、アウェアネスとは意識の一つの状態ということになる。

茂木健一郎は以下のように説明している。

アウェアネスの中で多彩なクオリアが同時に感じられるという意識の側面を、「現象学的意識」と呼び、そのうち一部に注意が向けられ、言語化されたり、記憶に残ったりするという側面を、その内容にアクセスできるという意味で、「アクセス意識」と呼ぶことがある。(茂木 2004: 51)

上述の「現象学的意識」と「アクセス意識」の区別はネド・ブロックによってなされたものである(詳細は現象的意識を参照されたし)。

デイヴィッド・チャーマーズは、現象的意識がないのにアウェアネスがある状態を想定している。

現象的意識とアウェアネスについての研究と議論は今も継続中である。

参考文献

デイヴィッド・J. チャーマーズ『意識する心―脳と精神の根本理論を求めて』林一 訳 白揚社 2001年 

茂木健一郎『脳内現象』NHKブックス 2004年

内容(「BOOK」データベースより)

心脳問題の最終的な決着は?彗星のように現れた心脳問題の旗手が世界中の脳科学・哲学・認知科学者を震撼させた渾身の論考。

内容(「MARC」データベースより)

意識とは何か。理論らしい理論と呼べるようなもののない分野に挑み、一種の二元論である意識の理論を大胆に主張する。彗星のように現れた心脳問題の旗手が、世界中の脳科学・哲学・認知科学者を震撼させた渾身の論考。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

チャーマーズ,デイヴィッド・J

1966年、オーストラリア・シドニー生まれ。アデレード大学で数学とコンピュータサイエンスを学ぶ。1982年、国際数学オリンピックで銅メダルに。オクスフォード大学でローズ奨学生として数学を専攻したものの、すぐにインディアナ大学に転じて哲学・認知科学のPh.Dを取得。ワシントン大学マクドネル特別研究員(哲学・神経科学・心理学)、カリフォルニア大学教授(哲学)を経て、現在、アリゾナ大学教授(哲学)、同大学意識研究センター・アソシエイトディレクター。専門は心の哲学および関連する哲学・認知科学 

林/一

1933年、台北市生まれ。1959年、立教大学物理学部物理学科卒業。昭和薬科大学名誉教授。専門は理論物理学・科学史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

内容(「BOOK」データベースより)

“私”は脳のどこにいるのか?“私”という明確な意識はいかにして成り立つのか?脳内では千億もの神経細胞が複雑なしくみで結びつき、情報交換をしている。意識が生じるためには、この複雑な脳内の隅々までを、“私”が一瞬にして見渡さなければならない。これはいかにして可能なのか?脳内を見渡す小さな神の視点、すなわち、「脳内現象としての“私”」が生じる根本原理を解き明かす。

内容(「MARC」データベースより)

「私」という明確な意識はいかにして成り立つのか? 脳内では千億もの神経細胞が複雑なしくみで結びつき、情報交換をしている。脳内を見渡す小さな神の視点、「脳内現象としての「私」」が生じる根本的原理を説き明かす。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

茂木/健一郎

1962年東京都生まれ。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。東京工業大学大学院客員助教授。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学理学系大学院物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。専攻は脳科学、認知科学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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