http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/edu/kyouzai/handbook/html/h20102_1.html より
フォト・ランゲージの授業風景
フォト・ランゲージの授業風景
(兵庫県神戸市立六甲アイランド高校提供)
「フォト・ランゲージ」は、写真やイラスト等を使って行うアクティビティ(学習活動)です。提示された資料をよく観察し、背景となっている状況に共感するとともに、その資料に込められた意味を探り出します。そして参加者相互で自らの気づきや発見を分かちあうのです。
「フォト・ランゲージ」には、資料から感じた疑問点をできるだけたくさん書き出す(KJ法)方法や、自分の感じた印象や意味を短い解説として書き出す方法(キャプション)、資料を題材にニュース記事や物語を作成する方法などがあります。
「フォト・ランゲージ」で使用する資料は、特別なテキストや資料集を用意しなくとも、絵葉書や雑誌の切り抜き、写真集のカラーコピーなど、どこからでも簡単に用意することができます。また、資料の一部を隠して提示したり、いくつかの断片に切って提示したりすることによって、気づかせたい部分に焦点を絞ることも可能です。
実践事例1 1枚の写真から
ねらいとヒント
私たちにとってもっとも身近なメディアの一つでもある写真。でもよく見ると、1枚の写真にも驚くほど多くの情報やメッセージが隠されています。また同じ写真でも、それを撮る人、見る人(私たち)のものの見方や価値観によって、全く異なったものとなります。
ここでは、写真から情報やメッセージを読み取る練習をするとともに、自分の答えに隠された固定観念や先入観に気づかせます。
進め方
田んぼの風景
下の写真はある国の風景です。どこの国だと思いますか?
なぜそう思ったのですか。理由を書いてみよう。
よく見慣れた田んぼの風景ですが、どこか変ですね。実は、東アフリカのタンザニアの田んぼです(日本のJICAによる農業技術支援)。
生徒に見せたところ「山がない。地平線が見えるから外国だ」「田んぼが妙にきっちりと区画されているから、開発途上国じゃない」「田んぼに木が生えているのって変だ。しかも稲が育っているのに、木に葉っぱがない。普通なら青々と茂っているのに」「写真の奥、左から2番目の木は横に広がっていて、熱帯っぽい」などの意見が出ました。
正解を確認するのではなく、なぜそう思ったのか理由を必ず答えさせます。理由を批判的に検討することで、自分のもつステレオタイプに気づくことができます。
実践事例2 複数の写真を使って
ねらいとヒント
写真を複数使うことで、相互に比較させることができます。その際、何か共通のテーマ(主題)を決めておくと、漠然と写真を見ることを避け、目的をもって写真を見ることができます。ゲーム的な要素も取り入れて、楽しく活動できるように工夫しました。
進め方
これから見せる10枚の写真は、世界の国々の街角を写した写真です。10の国は、ヨルダン、モンゴル、カンボジア、マレーシア、ベトナム、インドネシア、セネガル、スウェーデン、ザンビア、オーストラリア、ジンバブエのいずれかです(ただし、一つはウソ=ババです)。
写真をよく見て、どこの国か、なぜそう思ったのか、写真を見て気づいたことを書いてみよう。
写真の裏に正解を書いておき、裏返させます(神経衰弱の要領です)。全部の国が正解するまで続けます。
正解を見て、意外だった写真はありましたか。意外だった理由は何でしょう。
ワークシートの例
写真毎に国名、理由、気づいたことを書く欄を設ける 写真a セネガル ダカールの風景 写真b キューバ ハバナの風景 写真c ニジェール ニアメの風景 写真d スウェーデン ストックホルム
の風景(スカンジナビア政府観光局)写真e カンボジア プノンペンの風景 写真f モロッコ ラバトの風景 写真g マレーシア クアラルンプールの風景写真h ベトナム ホーチミンの風景 写真i インドネシア ジャカルタの風景 写真j ガーナ アクラダカールの風景
実践事例3 写真を加工して
ねらいとヒント
隠された部分にどのようなものが隠されているかを想像することで、私たちのもつステレオタイプに気づきます。また、写真やメディアがいかに現実を再構成したものであるかにも気づきます。メディア・リテラシー(メディアを活用する能力)につながります。
進め方
まず下の左の写真1を見せます。
「これはある国の首都です。どこの国でしょう?」(答え:ケニアのナイロビ)
ここでもすぐには正解をいわずに、なぜそう考えるのか理由を問います。
次に右の写真2を見せます。そして同じ質問をします。
今度はアフリカと答える割合が増えるでしょう。ここで最初の考えとの違いについて考えさせます。自分のもっていたステレオタイプに気づく者もいるでしょう。
最後に、左の写真1と右の写真2を両方並べて比較 させてみます。
「同じ場所でも印象が違うのはどうしてでしょう?」
「もし意図的に写真を加工したら、どういうことが起きるでしょう?」
抽象的な議論にならないように、戦争報道など実例をあげると、より効果的です。
実践事例4 写真をつなげて物語をつくろう
ねらいとヒント
写真をつなげて考えることで、1枚では気づかない人々の生活実態を総合的に考えさせることができます。また、ストーリーを考えることで、想像力や文章構成力・表現力を養うことができます。
進め方
まず3枚の写真を見せ、それぞれの写真について解釈させます。
「これから見せる3枚の写真は、いずれもラオスの風景です。それぞれの写真からわかることを書いてみよう。」
それぞれの写真にタイトル(キャプション)をつけさせると、写真の意味をより鮮明にさせることができます。
次に、3枚の写真を自由に組み合わせて一つの物語を考えさせます。
「3枚の写真を使って、物語をつくってみましょう。写真の順番は自由です。」
誰か架空の主人公を設定すると、考えやすいかもしれません。
グループごとに物語を話させます。ふりかえりでは、グループにより写真の意味づけ・解釈にどんな違いがあったかを確認します。
典型的なステレオタイプの写真を入れたり、まったく正反対の状況を示す写真を組み合わせたり(貧困と豊かさを示すもの等)すると、より効果的です。
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