小 周 天・大 周 天 気 の 強 化 と 循 環

http://www.synchronature.com/Health/syu.html  より

小周天法とは、経絡のうち奇経八脈として知られている、任脈(人体の前正中線)から督脈(後正中線)に気を循環させることです。

普通には閉鎖されているこの通路を開通してはじめて、本来の人間としての完全な生命発現ができるといわれています。

任脈は全ての陰脈を統轄し上唇の人中から舌先・天突・壇柱・中院・丹田・会陰まで

督脈は全ての陽脈を統轄し会陰から背中を通って尾閭・命門・大椎・玉枕・泥丸・陰堂・人中まで

これを達成すると、身体をくまなくめぐっている12正経と奇経八脈という経絡の気の停滞は解消し諸病が治るとされています(気の循環方向は男女で逆になる場合が多いのですが、個人差があり必ずしもそうだとは言えません)。

解剖学的に見ると、任脈上には、甲状腺、胸腺、すい蔵、腹腔神経叢、性腺など、督脈上には、脊髄、副腎、脳の視床下部、下垂体(内臓機能、ホルモン系の中枢)など自律機能の主要器官がならんでいます。

脊椎

小周天法を達成するために重要なことは、「歪のない柔軟かつ強靭な脊椎をつくること」です。

小周天法を行うとき、脊椎に歪みがあるとどうしてもそこで気が通らなくなります。

まず気を通す容器としての身体の調整が必要不可欠です。

脊椎の歪があると、脊椎から分岐する自律神経の働きに異常をきたしやすく、各種病気の根本原因の一つになります。

そのためには、柔軟体操やストレッチを入念に行うことが大切です。

気功では五禽戯という、虎・熊・猿・鹿・鶴の動きを真似る動作があります。

これは気のながれを良くするための身体の調整運動と考えられます。

気の強化と運行

気功法の独自性は、気感の体得です。

「気」は、熱感・磁石の反発感・ジンジンする電気感・微細な振動感といった感じですが、まずこれを体得することです。

気は呼吸法で強化することができます。そして歪のない柔軟な身体を循環・運行させることができます。

小周天法を自習する場合に大切なことの一つは、まず初めに頭から下行する経路を徹底的に活性化して開通しておくことが必要です。

ヨガではチャクラの開発により、自律機能をコントロールします。

気功では気を用いて小周天法で気を循環させることで達成させるのです。

気を養い高めていく能力は、万人に備わった基本的な能力ですから、誰でも訓練により必ず到達できるのです。

先天の気は、人が生まれついて持っている成長・発育の根源的な生命力です。

 

後天の気は、飲食による栄養摂取と呼吸により生命活動を維持する活力。 

先天の気と後天の気が合体した「真気」が気の本流であり、その運行により成長、発育と生命活動が営まれます。

その真気運行の通路が「経絡」です。

そして、その経絡上にある要穴が「絡穴(ツボ)」です。

中国医学では、気の流れが順調でないことを病気とします。

薬物・鍼・気功のすべてが経絡治療になるのです。 

漢方薬も、西洋医学のように薬物の化学的効果ではなく、気の流れに影響を与えることにより治療することを目的とするものです。(小周天・大周天法訓練法、小周天バンドを考案した外科医矢山利彦氏「小周天に至る道」より)

河車通関

練炭の法により下丹田に陽火を起こし、これを育てていくと陽火が強力になります。

上昇しようとする陽火を意識的に引き戻します。

これを繰り返していくと陽火の勢いはますます強力になります。

火勢を強めた陽火は陽関(海底)から督脈の第一関門(尾骨の下のビロ)を通過して、さらに督脈を上に向かって進みます。これを河車通関といいます。

河車は陽火(丹)をのせて運ぶ水車で、陽火の進行の様子が車の走るのに似ていることから、このように呼ばれています。

河車は陽火が成熟すれは自然に動きだすので、辛抱強く待つ必要があります。

河車が自然に動き出すのを待つのです。

発動は自覚できますから、発動したら次の関に意識して針路を示します。

調息は、武火(意識と力を用い下腹を強く動かす方法)から、文火(下腹から力を抜き自然にまかせ、意識するだけの方法)に変更します。

煉丹(起火)には武火を用い、通関の時は文火の調息法を使用します。

第一関門ビロ(尾骨の下)、第二関門キョウセキ(脊椎5番目)、ここで沐浴という、息から意識を全く取り去り「真息」の訓練をします。

第三関門ギョクチン(延髄の上)、デイガン(天頂で松果腺)に至る行程を「進陽火」と称します。

これで督脈が全通したことになります。

前面のサンコン(両眉の中間、脳下垂体)ここは上丹田の中心部で、ここから全部の任脈を下降させます。

前面は丹田を使用して上丹田、中丹田、下丹田と陽火を下降させ、任脈を通関します。

この過程を「退陰符」と称します。

以上の河車の路通を「玉液還丹」といい,、反復して行うことで丹が固定し、強く大きく育ちます。

仙道による心身の改革 小野田大蔵著 白揚社刊より

小周天とヨガ

ヨガにおいて最重要視されているスシュムナー気管とは、インドの古代生理学によるナディと呼ばれる気脈中もっとも重要な気管であり、背骨の中心を通っているものです。

このスシュムナー気管の左右を流れるイダ(脊柱の左側)とピンガラ(右側)があります。

これは、中国の12の正経と奇経八脈のうちの、督脈―任脈と、督脈の左右を流れる膀胱経第一行にあたると思われます。

ナディはプラーナの流通路であり、人体中に七万二千本が流れ、主要な脈は14本あるとされています。

中国医学における気の通路である経絡、経脈に近いエネルギー回路です。

スシュムナー気管は、気功で重視されている背骨上を通る督脈にほぼ近いものです。

ハタ・ヨガの重要な目的は、スシュムナー気管に尾ていから頭頂へクンダリ-二と呼ばれるエネルギーを走らせることです。

気功においても、小周天のように会陰から頭頂へ督脈にそって陽気を昇らすことが重視されており、興味深い共通点です。

またナディは、カンダと呼ばれる下腹部の中心にある卵状の球を源として全身にいきわたっているといわれています。

気功法で、生命エネルギーのセンターが下腹部の中心に位置する下丹田とすることに相似しています。

スシュムナー気管にそって脊柱基底部から頭頂にかけて、チャクラと呼ばれるエネルギーのセンターが七つほどあります。

チャクラはそれぞれの位置に応じた色、形、音などを有し、そのエネルギーによって心身をコントロールしています。

チャクラは、強烈なエネルギーであるクンダリーニの上昇にしたがって順次ひらかれていき、その潜在していた力を発現するのです。

最終点の頭頂下部のサハスラーラ・チャクラが開かれたとき、解脱に至るとされています。

クンダリー二とは最下部のムーラダーラ・チャクラに眠るとぐろを巻いた蛇であり、強力な力を持った女神シャクティであると言われています。

クンダリー二は生命力が凝縮されたものの象徴であり、クンダリー二の上昇とは、生命エネルギーの変容のプロセスにほかならないのです。

テクニックは異なるものの、気功法も同じような昇華のプロセスがあります。

クンダリー二に相当するものは、下丹田の集中によって発生する陽火または陽気と呼ばれるエネルギー体です。

チャクラに相当するものは、個数や位置のずれはありますが上中下の各丹田に相似すると考えられます。

呼吸が身体の健康状態と密接な関係があることは良く知られている事実です。

健康な人は深くて長い呼吸をしますが、病人は荒くて短い呼吸をします。

呼吸は心の動きとも関係しています。感情が荒立てば呼吸も激しくなりますし、逆に呼吸が乱れると心が不安になります。

呼吸は身体や心の状態と一体となっています。呼吸の調整により心身のコントロールができることは確かです。

調息法の原則は「細・長・深・均」で表わすことができます。

この原則の上で、陽火を練成する煉丹の過程では「武火による武火鍛錬」と「文火温養」という調息法や逆呼吸法も利用します。

ヨガや気功では、精神を宇宙なるものに高めていくために、思考を制御し深化させていくだけではなく、肉体的な性能力や内臓の生命力を利用する点で一致しています。

人間の精神や宇宙の本質というものが、肉体とは異なるものであるという心身分離の二元論は存在しないのです。

肉体も精神も、普遍的な宇宙エネルギーが異なる現れ方をしているにすぎません。

元来は一つのものであります。

気功法の生命エネルギー変容プロセスは三段階があります。

練成化気  下丹田(下腹部)において、精を生命エネルギーである気に変容する。

練気化神  中丹田(胸中央内部)において、気を精神エネルギーである神に変容する。

練神還虚  上丹田(眉間奥部)において、神をもって宇宙の本源へと回帰する。

これらの三段階の象徴的プロセスは、ヨガのチャクラの開発の過程にきわめてよく似ています。

ヨガにおける呼吸法の特徴は、横隔膜から肺全体の動きが重視されることです。

気功法や日本の呼吸術のように、腹式呼吸を重視し、胸はゆるませ、内に含み、気を丹田に沈めることによって、下腹部を動かしていくこととは正反対にも思えます。

呼吸法ではありませんが、ヴィディアーナバンダやナウリといった内臓の引き上げや腹部のマッサージ運動が基本訓練として重視されています。

この訓練法も胸をはり腹部可能な限り引き締めることが重要であり、丹田呼吸のように、下腹部をゆるませふくらませることが目的ではないのです。

ヨガの呼吸法の基本は完全呼吸法です。

吐気の時は、上腹部、肺底、中肺、上肺とゆるませつつすぼませていきます。

吸気の時は、上腹部、肺底、中肺、上肺と順にふくらませていき、肺全体に十分息を入れます。

臍下丹田に陽気をためるには、腹部をマッサージし内臓を浄化する方法である「ナウリ」を呼吸法と併用するのが効果的です。

小周天で気を循環させるには身体の歪を修正しておかなければいけません。

歪のない身体は柔軟性がありますから、柔軟体操とストレッチが、特に重要な要素となります。

日本の呼吸術の特徴は、下腹部丹田に強力な腹圧をかける腹式呼吸が重視されています。 

腹式呼吸による腹力増進、丹力養成が万病を駆逐し、超常的な力を得るための基本です。

岡田式、藤田式、肥田式等呼吸法の鍛錬を専門とした健康術も普及されました。

これらに共通するところは、腹を練ることであり、臍下丹田に気を込めるところにあります。

丹田呼吸といわれる逆腹式呼吸です。 

この呼吸法は、呼気で下肺からみぞおちを膨らませます。

吐気ではみぞおちを窪ませ徐々に下腹に気圧をかけ前に膨らませていく方法です。

気功における意守丹田は、日本式の丹田呼吸法とは違い、腹部をゆるめ、意を下丹田におくことにより、自然に下腹部は充実し腹力も養成されてくるというのです。

丹田呼吸とは意識的な鼻による呼吸ではなく丹田を意守することにより下腹部に気が集中し丹田自体による自発的な呼吸(自動的な動き)が発生するというのです。

生命エネルギーを高めるという同じ気の技法でありながら、ヨガ・気功における呼吸法における微妙な差や共通点が見られるのは興味深いことです。