http://karapaia.com/archives/52219212.html より
メメント・モリは、ラテン語で「自分が(いつか)必ず死ぬことを忘れるな」という意味の警句であり、「死を記憶せよ」などと訳され、芸術作品のモチーフとして古くから広く使われている。
やる気を持ち続けるため、アイデアを創出するため、寸暇を惜しんで仕事をするため、いろいろな理由で人は仕事場のデスクまわりにいろいろな物を置く。それはフィギュアだったり美少女フィギュアだったり、猫の写真だったりするわけだが、16世紀には、書斎に死体をかたどった小像を飾るのが流行ったそうだ。
メメント・モリという警句は古代ローマで、「将軍が凱旋のパレードを行なった際に使われた」と伝えられる。将軍の後ろに立つ使用人は、「将軍は今日絶頂にあるが、明日はそうであるかわからない」ということを思い起こさせる役目を担当していた。そこで、使用人は「メメント・モリ」と言うことによって、将軍にそれを思い起こさせていた。
1.ハンス・ラインベルガー作とされる16世紀のメメント・モリ
2.ルネ・ド・シャロンのtransi
この時代の見事なメメント・モリ像のひとつに、フランス皇太子ルネ・ド・シャロンの等身大像がある。彼は1544年のサン=ディジエの包囲戦のさなか、25歳で死んだ。transiとして知られるこの像は、人間のはかさなを表わし、干からびて骨ばかりになった皇太子の遺体が自分の心臓を高々と掲げている。
3.19世紀初頭のメメント・モリ像
ルネッサンス後は、持ち運びできるような小さなメメント・モリオブジェの制作が相次いだ。半分人間で半分骸骨の像は、それほどグロテスクでなく、死という運命を思い出させる。このの像は、19世紀初頭に"崇高な熟考"を促すために作られた。
4.19世紀のイタリアのメメント・モリ
この木製の彫像は、19世紀のイタリアで制作された、半分骸骨があらわになった女性の頭部像だ。小さなヘビが女性の下顎に巻きついているのに注目して欲しい。顔が半分腐って崩れているのに、襟元のひだやレースの帽子はまったく損なわれていない。
5.小さな棺に入った小さな骸骨
もっとささやかに、さりげなくこっそりと死を思い起こしたい人の為の携帯用メメント・モリ像。列車に乗っている間でもさっと取り出せて、降りるときはまたポケットにしのばせることができる。このようなペンダントトップタイプのメメント・モリを選ぶこともできた。これは18世紀か19世紀のもの。
大きさやおぞましさの程度には関係なく、携帯メメント・モリ像が発信しているメッセージはみな同じだ。人生は短い、いずれおまえは死ぬ。世俗的な所有物などなんの意味もない。このメッセージが世俗の所有物の中に含まれているというところがまた、人間の存在というスリリングな逆説の一部になっているといえよう。
via:atlasobscura・wikipedia/ translated konohazuku / edited by parumo
骸骨モチーフのアイテムは今でもアクセサリーや衣服のパターンなどに使用されており一部で人気となっているが、昔は結構リアリティのあるガイコツだったんだね。
ちなみに古代、「メメント・モリ」の趣旨は「我々は明日死ぬかもしれないのだから今を楽しめ」というアドバイスでもあった。ホラティウスの詩には「Nunc est bibendum, nunc pede libero pulsanda tellus.」(今は飲むときだ、今は気ままに踊るときだ)とある。
後にキリスト教世界となり、この言葉は違った意味を持つようになった。天国、地獄、魂の救済が重要視されることにより、死が意識の前面に出てきたためである。
キリスト教的な芸術作品において、「メメント・モリ」はほとんどこの文脈で使用されることになる。キリスト教の文脈では、「メメント・モリ」は nunc est bibendum とは反対の、かなり徳化された意味合いで使われるようになった。キリスト教徒にとっては、死への思いは現世での楽しみ・贅沢・手柄が空虚でむなしいものであることを強調するものであり、来世に思いをはせる誘引となった。
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