見えてくる―1(成田空港)

http://sadhana.jp/kurashi/13001.html より

海外への出国旅行者とともにターミナルビルに入ってみます。成田空港には、世界の60強の航空会社が乗り入れをしています。チェックインカウンターの受付け窓口が、百にも達するかという多さで並んでいます。各窓口にはよく訓練された各航空会社の地上勤務員が、複雑な手続きをこなしてくれます。おかげ様で、はるか地球の裏側の目的地までも、指定の席で、食事も出来、携行のスーツケースなども無事運ばれます。

 飛行機自体、空港で、長距離飛行のための、入念な出発準備が行なわれます。前の飛行で旅客サービスを済ませた後始末。ゴミ捨て・汚物除去・乱れた座席の整頓・清掃・機体の安全のためのチェック・給油・水・機内食積み込みという具合です。給油についても、水についても、食料についても、空港が一つ一つの便の必要に事欠くことが無いように万全の体勢を整え続けています。しかも、成田空港では、一日平均500程度の飛行機の離着陸があります。それらすべてのための下支えを毎日毎日維持し続けます。機内で直接見聞きできる、乗務員諸氏の才覚とスキルも爽快な印象であり、加えて、見えない舞台裏での勤労や献身の大きさが見えるようです。

 人の出入国については、外国渡航許可チェック・セキュリティーチェック・税関問題がよく整理されて進められますが、平均して一日に9万人が出国したり、入国したりします。これだけの量に達しているのですから、十分な計画性や設備充足や各部署の誠心誠意の勤労が持続しているのだと、知られます。人の出入国への対応も大仕事ですが、仕事量からすれば、携行貨物や空輸貨物への対応もまた、測り知れない仕事量と複雑さがあることでしょう。貿易貨物の領域では、税関問題に加え、検疫の厄介さがあります。

 利用者は、多くが、海外での生活に向かう(あるいは海外での生活を終える)のです。その玄関口になる場所ですから、この空港においては、これらの旅客の出入国プロセスを支援する多くの付帯設備を用意せねばなりません。食堂・銀行・郵便局・クリニック・授乳室・キッズパーク・シャワールーム・トイレ・手荷物預かり所・宅急便窓口などなど。

 そして、敷地も建物も、目を見張る広さ・大きさです。その広さの場に、滑走路(2本)・管制システム・旅客搬送バス・貨物搬送車・給油車・給水車・駐機場・整備工場などなどがよく整えられて日々使用されます。

 以上のような膨大な設備群と作業プロセス群においては、どの一箇所も故障や不具合を発生させることが許されないのです。一箇所でも故障・不具合を発生するなら、この巨大な空港全体に大きなトラブルや機能不全を生み出しかねないのです。よく訓練された勤務者が、おのおのの担当部署をしっかりとかつ懇切丁寧に責務を果たし続けます。

 旅客はこの空港で、生活の大きな変化をはらみながら出入国するにあたり、他の公共スペースとはひと味ちがう気持ち良いサービスを受けます。出入国という大仕事をする場ですから、支援されたい願いが多くの旅客にあります。それに十分応えるようにして、カウンター勤務者も、客室乗務員も、荷物扱い部署の人も、空港案内係員も、果ては清掃業務の人までが、もてなし心を持っています。

 以上に見渡してきたありさまは、次のような譬えのイメージで表わせるでしょう。山登りする人々が誰も皆、荷物を背負って、林の中を歩いて進みます。(この旅人たちは出入国するのですから、背負った荷物にかなりの重さがあります。)しかし、この林の中は、好感のもてる木々にあふれています。一本一本がよく手入れされています。良い位置に良い木が育てられています。また、足元は歩き易いようにならされており、水の流れさえ届けられ、さらにきれいな鳴き声を聞かせる鳥たちさえも、旅人を慰めます。

 このような林の爽快さは、木々の一本一本がよく訓練をうけて、品位ある心構えとスキルを用意できていること。そして旅客のために、国を代表して接客しようとするとか、または、旅客の「良い旅」を心から願うとかの思いが、すべての勤務員に湧き出ているのです。膨大な数の樹木で形成されている林が、このように気持ちよく、整然と統一感のうちに、営みが続けられます。木々は、自らの才覚・自らの品位・自らの善良さを止むことなく湧き出させています。

 成田空港は、膨大な設備とあまたの部署とを、立派に維持管理しつつ、無数の勤務員たちすべてが、自分の担当領域を着実にこなし、かつもてなし心を十分用意して運営にあたっています。人の世の中に、これほどまでを達成する営みがあることは、感動的です。虚心にそして丁寧にこの場を観察するとき、すべての勤務員の心の奥で、そういう誠意・献身精神・もてなし心の湧くことを助けておられる神様の手が働いているのが見えるのではないでしょうか。