自律神経のバランスを整える

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ヨガの呼吸法は心のバランスを整える上で有効と言われます。実は呼吸と自律神経の間に関係があり、深い呼吸で自律神経を通じて自分の心を操作できるのです。今回はそんなヨガのリラクゼーション効果と深い関係がある呼吸による心のバランス調整について解説します。

様々な身体の不調や症状は自律神経と関係している

慢性的な疲労や倦怠感、肩こり、頭痛、腰痛、不眠症、全身のだるさ、冷え性…。こうした身体の”なんとなくの”不調や症状が一向に改善されず、悩んでいる方も多いのでは?こうした症状は医者に行っても「ストレスが原因」とされるケースが多く、処方された薬を飲んでも解消しないケースもあります。

根本的な原因は不明であり、環境を変えストレスそのものを無くすことが改善には必要であるとわかっていますが、生活を変えるのも代償が大きいということもあり、なかなか簡単に実行に移せません。

もちろん内科などにかかった上で判断する必要がありますが、特に異常が見当たらない、原因がわからない、”なんとなく”の身体の不調は、自律神経のバランスの乱れを疑ってみたほうがいいでしょう。

自律神経と呼吸

自律神経は脊柱を通り身体全体に張り巡らされ、私たちの内臓や血管を制御しています。そのため、自律神経の乱れが原因となり、様々な内臓疾患を引き起こすこともあるのです。※1

自律神経は、交感神経と副交感神経からなります。運動や緊張など身体が活発な状態な時に働くのが交感神経。一方、睡眠や食事など身体がリラックスしている状態では、副交感神経が強く働きます。このように交感神経と副交感神経は互いに逆の働きをするのですが、自律神経は二つの相反する動きでバランスをとっているのです。

ところが過度なストレス、生活リズムの乱れ、環境変化がうつ病や自律神経失調症を引き起こす原因とされますが、この交感神経・副交感神経、どちらか一方の状態が長く続くこと、つまりバランスの乱れが根本的な原因と考えられるのです。

自律神経は、普段、私たちの意思に関わらず内臓や血管を制御していますので意識的にコントロールはできません。(例えば心臓などの鼓動は私たちが意識することなく動き続けています。これも自律神経による働きです。)しかし、交感神経と副交感神経は私たちの呼吸と密接に関係していることがわかっており、私たちは意識的な呼吸法を通じ、自律神経に働きかけができるのです。

自律神経が安定すれば幸せになる?

交感神経と副交感神経に作用する神経伝達物質は、それぞれドーパミンとノルアドレナリンです。ドーパミンは意欲、モチベーション、学習、快感などの交感神経に。ノルアドレナリンは興奮、意欲、恐怖、不安などの副交感神経に作用します。そして、このドーパミンとノルアドレナリンを制御する神経伝達物質がセロトニンです。

セロトニンは別名、幸せホルモンとも呼ばれるほど、自律神経の安定に深く関わる神経伝達物質です。幸福を感じている状態はセロトニンが活性し、正しく機能することで、ドーパミン、ノルアドレナリンのバランスをうまく制御できている状態と言えるそうです。

逆にセロトニンの欠乏は、うつ病や自律神経失調症、パニック障害などの精神疾患、睡眠障害、過敏性腸症候群など多くの精神疾患や身体の不調との関連性が指摘されています。

ヨガの呼吸法はこのセロトニンを増やす上でも有効であり、やはり自律神経への働きかけが大きいのです。セロトニンを増やす方法については以下の記事で詳しく取り上げていますので、参考にしてみてください。

参考記事:幸せホルモン セロトニンを増やして幸福感を高めよう

ヨガの呼吸法を通して自己の心をコントロール

これまで見てきたとおり、ヨガの呼吸法はまさに、意識的な呼吸による自律神経への働きかけ、と言えるでしょう。

では呼吸は自律神経(交感神経/副交感神経)に、どのように作用するのでしょうか?ヨガの呼吸(腹式呼吸)において、息を「吸った」場合に交感神経が優位に立ち、「吐いた」場合には副交感神経が優位に立ちます。深い呼吸を行うことで副交感神経を優位にさせることでき、ストレスや痛みの緩和、不安感を抑えるなど、リラックスや幸福感の状態を感じさせることができるのです。

つまり、意識的な呼吸をとりながら緊張と弛緩を上手に使い分け、自律神経のバランスを整えていけるのです。呼吸法はヨガにおいて重要な要素の一つであり、精神・マインドのバランスを整える上で大切な役割を持っています。ヨガはポーズ(アーサナ)だけではなく、ポーズと呼吸(瞑想も)を調和してこそ本当の効果が得られます。

ヨガを継続することで日常のあらゆる場面で呼吸を整える手段とすることができ、自分の心が乱れた場合でも対処できるようになるのです。

参考記事:呼吸の力 – 意識的な呼吸であなたの心を取り戻そう

言葉の意味に隠された呼吸の大切さ

上記のような科学的な裏付けは、もちろん現代になってから分かったことです。

しかし、何よりも驚くのは先人たちの深い洞察。古来よりヨガをつくりあげてきた多くの先人たちは、わかっていたのでしょう。また、日本でも「ため息」や「ひと息」「息抜き」など、心やリラックスの状態を呼吸に関する「息」という言葉を使って表現されているのに気づきます。

しかも、「息」とは、「心」の上に「自」分と書くのです。納得ですね。

さあ、自律神経の働きとヨガとの関係についてわかったら、次は実践です。

以下の記事では、自律神経の乱れをリセットする2つのヨガ呼吸法と6つのヨガポーズ を詳しく取り上げています。あなた自身でセルフケアする術を持つことでストレスフルな生活にもしなやかに対応していくことができるようになるはずです。

自律神経の乱れをリセット – 8つのヨガ呼吸法とポーズでセルフケア

なぜ、自律神経は乱れるの?

自律神経は、交感神経と副交感神経からなることはよく知られています。

これはどういうことかというと、交感神経は運動や緊張など活発な状態な時に働く神経。一方の副交感神経は、睡眠や入浴、食事など身体がリラックスしている状態で働きます。

いわば、自律神経はこのような二つの相反する働きでバランスを保っているのです。しかし、長引くストレスは、緊張状態のまま過ごすことになり、交感神経優位がずっと続くことでバランスが乱れるわけです。

自律神経を整えるヨガでセルフケア

自律神経は、私たちの呼吸や内臓の働きを司っており、心臓や内臓が私たちが意識せずとも「自律的に」動いています。そして自律的に動いているため、意識的に制御できないとも考えられていました。

しかし、最近の研究では呼吸や姿勢を整えることで自律神経を間接的にコントロールできることがわかってきました。そう、呼吸と姿勢といえばヨガ。ヨガを上手に活用することで自律神経の乱れを正常に取り戻すことができるのです。

関連記事:ヨガの呼吸法で自律神経をコントロールできる、その秘密。

ただし、自律神経の乱れは疾患が引き起こしている場合もあります。例えば、自律神経失調症や過敏性腸症候群、神経性胃炎など。これらもストレスが主要な原因の一つとされていますが、このような疾患が発生して自律神経が乱れている場合には、お医者さんに診てもらうことが必要です。

次から自律神経を整える上で有効なヨガテクニックを解説しますが、あくまでも重篤な症状に至らない場合に限った、日常生活で改善できる方法とお考えください。

1. ヨガの呼吸法で副交感神経を高める

ストレス過多で優位になった交感神経を鎮めるには副交感神経の働きを活性させることが大切。副交感神経を優位にするには、深く、ゆったりとした腹式呼吸を行うと良いことがわかっています。

ヨガの呼吸法は、鼻で息を吸って鼻で吐くのが基本で原則的に腹式呼吸。副交感神経を優位にさせる上で効果を発揮します。数あるヨガ呼吸法の中でも、特に「吐く息を長くする呼吸法」と「片鼻の呼吸法(ナディショーダナ)」がオススメです。

吐く息を長くする呼吸法

1:2の割合で吐く息を楽に伸ばしていくシンプルな呼吸テクニックです。副交感神経を高め、リラックスできることから不眠症や不安の軽減に効果があると言われています。

片鼻の呼吸法(ナディショーダナ)

鼻呼吸で、右の親指で右鼻を閉じ、人差し指と中指を内側に曲げて片鼻で呼吸を行なっていきます。反対の左鼻も同様に行います。

伝統的な文献には、左鼻腔は月と副交感神経に関係し、いらいらを沈めてくれる。また、右鼻腔は太陽と交感神経に関係し、代謝を活発にするとも。

これらの二つの呼吸法は、ちょっとストレスを感じたらデスクでも、気軽に取り組めますので是非、知っておいてください。「吐く息を長くする呼吸法」と「片鼻の呼吸法(ナディショーダナ)」の手順や方法は「5つのヨガ 呼吸法でマインドのノイズを軽減する」の記事で詳細に解説していますので、詳しく知りたい方はご覧ください。

ヨガにおいて呼吸法が大切なことは、ヨギーニ・ヨギー(ヨガをする女性・男性)なら知らない人はいないでしょう。プラーナーヤーマと呼ばれるように、ヨガにおいて呼吸は全てと言っても過言ではありません。ストレスを感じやすい人でヨガをまだ行ったことがないという方は、ヨガするきっかけになるかもしれません。

2. 自律神経の径路である背骨を整えるポーズ

自律神経は脳から背骨を通って私たちの全身に張り巡らされています。そのため、背骨と上半身を支える骨盤に歪みがあると、知らないうちに筋肉の緊張を生み、神経伝達を阻害するとも言われています。

そのため、自律神経と姿勢は切っても切れない縁で繋がっていると言えるのです。

呼吸法と合わせ、トライしたいのが次の二つのポーズ。

猫のポーズ / キャット&カウ

「猫のポーズ(キャット&カウ)」は、ヨガの初心者クラスでも頻繁に行われていますが、背骨に働きかける上で効果が期待できるポーズです。

背骨を丸める動作から反対に反る動作を交互に行うことで背骨全体を可動させ、歪みを改善していきます。

ヨガポーズ全てに言えますが、動きに合わせて呼吸を調和させていくことがとても重要。ポーズだけを正しく行えばいいという訳ではありません。

魚のポーズ

魚のポーズは胸骨を持ち上げ、恥骨から喉までのアーチを湾曲させ、背骨全体を収縮させます。また、左右の肩甲骨を引き寄せ、身体が開くポーズです。首、肩周辺から背中全体の筋肉を使うポーズですので、歪みを正していく上で有効とされています。身体が開く心地よさを感じることができるポーズです。

3. 背骨を軸に捻るポーズで内臓をリセット

自律神経は背骨に沿って張り巡らされ、各内臓につながって働きをコントロールしています。そのため、背骨と周辺筋肉の歪みや緊張を捻ることでほぐしていきます。また、ヨガポーズと同時に深い呼吸を繰り返すことで自律神経のバランスが整ってきます。

半分のマッチェンドラのポーズⅠ(アルダマッツェーンドラーサナⅠ)

股関節を閉じる動作(ヒップクロージング)に加えて、腰から上半身を捻ることで骨盤から背骨に働きかけると同時に、腸や内臓を捻り、緊張をほぐしていきます。背骨を丸くせず、骨盤からまっすぐに伸ばすことを忘れないように行います。

ヨガポーズガイド:半分のマッチェンドラのポーズⅠ(アルダマッツェーンドラーサナⅠ)

その他の捻りのポーズ(ツイストポーズ)もあります。

4. インバージョンポーズで内臓をリセット

インバージョンとは、「内臓が逆さ」の意味。重力に逆らうようにすることで普段は下方へ圧がかかっている内臓を逆転させ、位置を調整します。

下向きの顔の犬のポーズ(アドームカシュヴァーナーサナ)

これもポピュラーなポーズですよね。下向きの顔の犬のポーズは様々な効果が期待できるポーズです。

股関節を軸に上半身を屈曲させ、両手を地面につき、肩甲骨周辺の筋肉から背骨をまっすぐに伸ばします。そして下半身もハムストリングからアキレス腱までの伸びなど、身体全体に働きかけることができます。

また、上半身が逆さになるポーズでもあるので、内臓の位置の調整もできます。姿勢改善から自律神経の調整まで可能な万能なポーズと言えます。

鋤(すき)のポーズ(ハラーサナ)

もう一つインバージョンポーズをご紹介。

少し難しいポーズですが、鋤のポーズは頭の方への血が制御されているので、神経を鎮め、頭痛を緩和するといわれています。苛立ち、短気、不眠症など自律神経の乱れに関連する症状に効果があるとされています。また、背骨が伸ばしながら身体を上下にすることで、腸の働きが活発になり便秘の改善に役立つとも。

5. 夜にヨガを行うことで睡眠の質を高める

呼吸法はいつでもできますが、自律神経をリセットする目的でヨガを行うなら夜に行うのがオススメ。なぜなら自律神経の乱れは、昼夜逆転による概日リズム(サーカディアンリズム)の崩れに関係していることからわかる通り、睡眠と密接な関わりがあるのです。

睡眠不足は夜になっても交感神経が優位になっており入眠が阻害されるから。だからこそ副交感神経を高める必要があるのです。スムースな入眠には、最後に「究極のリラックスポーズ」と呼ばれるこのポーズで締めくくりましょう。

屍のポーズ / 亡骸のポーズ(シャバーサナ)

シャバーサナは最後に行うことが多いですよね。これにはしっかりとした理由があります。

それまで行なったヨガポーズで骨格と筋肉は緊張を感じています。そして最後にシャバーサナで深い呼吸を行いながら重力に身をまかせます。その時、身体が大地に溶けて沈みこんでいく感覚を味わうことで、身体に弛緩を与え深いリラクゼーションを得るのです。

シャバーサナは極上のリラックスを与え、あなたは質の高い睡眠を得られます。

ストレスはゼロにできないからこそセルフケアできる術を知っておく

残念ながら、ストレスをゼロにすることは難しい。であれば身体のことを知り、セルフケアの術としてヨガを上手に使うことが、心身の健康を維持する上での鍵なのです。

今回見てきた通り、ヨガは呼吸やポーズによって、姿勢や内臓の調子を整えながら自律神経の乱れをリセットできる万能な術です。呼吸法ならオフィスでもどこでも使えますし、自宅に帰って一日をリセットする為にもヨガポーズを取ることを習慣にしてみてください。

ストレスに立ち向かうのではなく、しなやかに受け流すことができるのがヨガなのです。

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