ファイトケミカル(フィトケミカル)

http://www.shoku-do.jp/eiyouso/phytochemical/index.html  より

ファイトケミカル(フィトケミカル)の特徴

「ファイト」または「フィト」とは、ギリシャ語で「植物」、「ケミカル」は「化学物質」のことです。植物が紫外線の害や虫などから自らを守るためにつくり出した物質をさします。

主に植物の色素や香り成分、アクなどに含まれており、今や食物繊維に続く「第7の栄養素」として注目されています。植物全般に含まれるため種類が多く、栄養効果も多彩なのが特徴です。

働き

ファイトケミカルが注目されるようになったのは、その強い抗酸化作用が分かったからです。私たちの体の中では、さまざまな栄養素を使って、生きていくうえで必要な代謝が繰り返されていますが、その副産物として細胞や遺伝子を傷つける活性酸素などが発生しています。  

これらはビタミンCやビタミンEに代表される抗酸化作用をもつ栄養素でも除去・修復することができますが、その能力を超える活性酸素などが発生すると、さまざまな疾病のリスクが高まります。  

活性酸素は、肌の老化の原因となったり、動脈硬化など生活習慣病のリスクが高まる原因だといわれています。活性酸素は通常の生活でも発生しますが、激しい運動や睡眠不足、排気ガスや精神的ストレス、喫煙、飲酒、紫外線などによって増加する傾向があります。

ファイトケミカルは、この活性酸素などにくっつき自分自身が酸化する事で、活性酸素から体を守ってくれます。その種類は1万を超えるといわれており、現在分かっているのは約900種類です。どれか1つの成分だけを取るよりも、さまざまな成分を組み合わせて取った方がより効果的です。

さらに、ファイトケミカルは安定的な物質が多いので、加熱調理でも破壊されることがなく、生のままで食べても問題ありません。通常は野菜を1日350g、果物を1日200g取れば十分だと考えられています。

分類

ファイトケミカルはその性質などから、大きく5つに分類することができます。

抗酸化作用が強い 「ポリフェノール」

|ポリフェノール|働き|種類・効果・多く含む食べ物|

ポリフェノールの特徴

ポリフェノールは、植物が光合成を行う時にできる物質の総称です。糖分の一部が変化したもので、植物の葉や花、樹皮などに成分として含まれており、植物自身が生きるために持っている物質ですが、人間の体内に入っても、抗酸化物質として有効に働くことが分かっています。

ほとんど全ての植物に存在する成分で、たくさんの種類があります。

色素によって大きく2つに分類され、淡黄色や無色のフラボノイド類と、カテキンやアントシアニンなどのノンフラボノイド類に分けられます。


ポリフェノールの働き

強力な抗酸化作用

抗酸化作用を持つ成分にはビタミンCやEが知られていますが、ポリフェノールにはこれらより強力な作用があります。ビタミンCは主に細胞の水溶性の部分で、ビタミンEは脂溶性の部分で働きますが、ポリフェノールは水溶性・脂溶性のどちらでも働きます。

酸化作用を受けやすい細胞膜は、水溶性部分と脂溶性部分があわさった構造をしているので、その防御にはポリフェノールが効果的です。

即効性があるが、効果が長続きしない

ポリフェノールの多くは水に溶けやすい形であるため、吸収されやすく、取ってから約30分後には効果が出始めます。

しかし、即効性があっても効果が長時間持続しません。そのため、毎食野菜を食べるとつねにポリフェノールの作用を得ることができます。


紫外線から体を守る 「カロテノイド」

カロテノイドの特徴

カロテノイドは、野菜や果物、えびや鮭などの魚介類、海藻などの赤、橙、黄色の色素成分の総称で約600種ある色素の一種です。植物だけではなく動物性食品にも含まれる脂溶性の色素で、アルコールに溶けるカロテン類とアルコールに溶けないキサントフィル類に分類されます。

代表的な成分がカロテン類のβ-カロテンです。いずれも脂溶性なので、油とともに摂取すると吸収率が高まります。

カロテノイドの働き

紫外線から体を守る

体内でビタミンAの働きをするβ-カロテンは、それ自体で抗酸化作用がある機能性成分として働きます。他のカロテノイド類も同様に抗酸化作用があります。  

紫外線は有害な活性酸素を生み出し、体をさびつかせます。常に紫外線にさらされている動植物は、色素で紫外線の害から身を守っているのです。こうした色素類は人間にも有効に働き、日焼けやしみなども予防してくれます。

組み合わせて取ると効果アップ

体内に吸収されたカロテノイドは、種類によって異なる臓器に貯蔵される傾向があることや、病気になると特定のカロテノイドの血液濃度が下がることも分かってきました。

1つのカロテノイドではなく、いろいろな種類の複合したカロテノイドを摂取するとよいといわれています。


殺菌作用が強い 「イオウ化合物」

イオウ化合物の特徴

イオウ化合物は硫化合物ともいい、イオウを含む化合物のことです。にんにくやねぎ、わさびなど刺激のある香りの成分のもとです。

これらの成分の中には刺激が強いものもあるため、取り過ぎると胃や腸の粘液を傷つけてしまう事があります。加熱して食べると、刺激が和らぎます。

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イオウ化合物の働き

強い殺菌力

強い抗酸化作用、殺菌作用があり、血栓を溶かしたり、血液の循環を促進させる働きもあります。食中毒予防や動脈硬化予防にも高い効果を発揮します。

疲労回復

にんにくに含まれるアリインは、酵素の作用でアリシンという抗酸化成分になります。

これは炭水化物の代謝に不可欠なビタミンB1と結合し、アリチアミンという持続性の高いものになるため、スタミナ回復に効果を発揮します。

精神を安定させる 「テルペン類」

テルペン類の特徴

テルペン類は、テルペノイドともいい、かんきつ類特有の香りや苦味の成分です。

リモネン、リモノイド、カルボン、ジテルペンなどがあります。

テルペン類の働き

抗がん作用

魚を焼くと発がん物質であるニトロソ化合物が生成されますが、かんきつ類の香り成分はニトロソ化合物の生成を抑制します。焼き魚にレモンの果汁をかける食べ方は、発がん物質の生成量を減少させるという意味で理にかなっているのです。

精神を安定させる

テルペン類の香りはアロマテラピー、香水などに広く使われています。その香り成分が神経系や免疫系などに働きかけ、ストレスの解消や心身のリラックスに効果があるといわれています。

免疫力を高める 「β-グルカン」

β-グルカンの特徴

グルカンはブドウ糖を含む多糖類の一種で、さまざまな種類があり、大きくαとβの2種類に分類されます。なかでも免疫力を高める作用を持つβ-グルカンが注目を集めています。

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β-グルカンの働き

がん細胞の発育抑制

β-グルカンにはがん細胞の発育を抑制する働きがあると考えられています。特にアガリクス(ひめまつたけ)に多く、人気を集めています。化学的に合成された医療薬と違い、副作用がない点で抗がん薬として有望視されています。

免疫力を高める

β-グルカンは、免疫システムで重要な働きをする白血球に働きかけ、活性化させ免疫力をアップさせ、アレルギーの予防や改善にも効果があるといわれています。

β-グルカンを多く含む食べ物

β-グルカンはきのこに多く含まれており、糖の結合の仕方で分類され、それぞれ健康機能が異なります。β-グルカンはきのこ以外にも含まれており、パン酵母から抽出したものがサプリメントなどに利用されています。

抗がん作用が注目される 「フコイダン」

フコイダンの特徴

こんぶやわかめといった褐色の海藻に含まれるヌルヌルした成分で、糖に硫酸などがつながった多糖類です。

日本でも有数の長寿県として知られる沖縄では、日常的に海藻をたくさん食べています。

よく食べられているこんぶやもずくなどの海藻には、フコイダンが特に多く含まれており、健康維持の要因の1つだと考えられています。

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フコイダンの働き

抗がん作用

フコイダンは抗がん作用があります。がん細胞だけに直接効いて自滅に追い込むという特殊な作用があり、代替医療では抗がん剤としての利用も始まっています。

コレステロール低下作用

フコイダンは食物繊維の一種であることから、腸内で余分なコレステロールや有害な物質をからめとって排せつしたり、免疫を高める働きもあります。生活習慣病やアレルギーの改善にも有効です。

海藻に含まれる多糖類の種類

フコイダンは、海藻に多く含まれる多糖類です。その海藻の種類によって含まれる多糖類が異なります。

いずれも水溶性の食物繊維で、健康効果が確認されています。