http://phantomofthegoth.web.fc2.com/ahht/pg224.html より
「1つの頂点が上を向いた五芒星は悪を追い払う、しかし2つの頂点が上を向いた逆五芒星は、1つの悪魔の象徴であり、そして邪悪な力を引き寄せる、なぜならそれは逆さまだからである、そしてそれがナンバー2を表しているからである。それは、ウィッチたちの悪魔の宴のヤギを表し、そして2つの上を向いた頂点はそのヤギの角である。」 --リチャード・キャベンディッシュ[Richard Cavendish]、”ブラック・アート[The Black Arts]”
逆五芒星の起源ははっきりしませんでしたが、19世紀に活躍したフランスの魔術師エリファス・レヴィ起源や、古代イスラエルやもっと昔のバビロンまで遡るとも言われています。
しかし悪魔の象徴としての起源としては紀元3世紀頃盛んだった『新プラトン主義』の哲学者達が考えたこの説が元になったのではないかと考えます。
鋭い先端の1つが真下にある五芒星形は「角のある神」を表し、新プラトン主義の哲学者は、これをペンタモルフ(「5つの姿を持つ神」)と呼んだ。
この神は、4種の角のある動物、雄ウシ、雄ヒツジ、雄ヤギ、雄ジカの姿をとるとともに、人間の姿にもなって現れた。
中世ヨ−ロッパ錬金術の魔術師は、小宇宙である人間の模型として五芒星形を用いました。男性の像は宇宙を表す円の内部に置かれた。手と足と頭は、描かれた五芒星形の示す各先端で円と接し、生殖器は円の中央に位置した。
多々ある一筆描きで構成される図形の中でも、閉鎖性の高い五芒星形には悪霊や邪気の侵入を防ぎ、かつ閉じ込める力があると信じらていました。
なぜなら霊は線の”切れ目”である「門」が必要としていると考えられており、五芒星には切れ目がないどころか、更に悪霊や邪気が恐怖感を持つ交差する点《目》が多く見られたからです。
したがって五芒星形はしばしぱ呪術的な封じ込めを仕切る際、とくに祈祷のときに用いられました。
ゲーテ著「ファウスト」でこんな描写があります。
ファウストがある言葉を口にしたとき、連れて帰ったむく犬は、”メフィスト・フェレス”に変化し自分が悪魔であることを伝えます。
否定の精神であること。すべてを光と闇に振り分けた場合、闇の領域に分類されるすべてが、自分の領域であること。そして、光の領域にあるものすべてを壊すのが、自分の仕事であること。しかし、それは正当な理由があってやっていること。悪を欲しながら、常に善を成す、あの力の一部であること。
紹介が終わるとメフィストは、とりあえず今日のところは帰りたいと伝えます。ファウストがもう自由に帰ればよいではないかと言ったのに対し、
メフィスト『思いきって打ち明けましょうか。この部屋を出ようとしても、ちょっと具合の悪いものがあるのです。つまり、敷居の上のペンタグラムのしるしですがね。 』
ファウスト『きみはペンタグラムが邪魔だというのか。これは不思議だ。あれにきみが縛られるくらいなら、入るときはどうして入ったか、それをいいたまえ。 何をどううまくごまかしたのだ。』
メフィスト『あれをよくごらんなさい。完全に引いてはないのです。外へむかった角のところが、ごらんのとおり、すこしばかり欠けています。』
(大山定一訳)
その後”メフィスト”は、面白い見世物をすると称して、幻でファウストを眠らせた後、鼠を呼び出し魔方陣を噛じらせ結界を壊し、帰ってゆきます。
五芒星の力をよく表せている大変興味深いシーンですね。
いろいろと調べているうちに、私が一番納得が行く悪魔の起源として、私が考える答えに近いものは、自分たちの教える宗教以外の教えを邪教として教え、他教の神々をタブーと とらえるうち徐々に邪悪な悪魔へと変わっていったという説が一番しっくりきました。(今でもそのようなところはありますね。。。)
悪という存在が、そのような理由から出来たのだとしたら、なぜ悪魔には角があり、角のある生き物がなぜ悪魔(悪霊)と近い物として描かれるのか?
引用
「角」(つの)の持つ本来の意味と言うのは、ギリシア=ローマを旧石器時代に向かって遡ると、
”狩猟”の祝祭の象徴であるとともに、”繁殖”を隠喩する男性器の象徴。
ただし、そうした狩猟・自然・祖先をモチーフとする原初的な信仰は、時代を下るにつれて、神々の体系化、あるいは宗教の高等化とともに、次第に「タブー視」されていって、ギリシア=ローマの時代においては、「豊饒神」としての面影をとどめつつも、その活躍のテリトリーを「冥界」に制限され、更に時代を下って中世キリスト教世界においては、角と2つに割れた蹄を持つ「悪魔」、「サタン」のイメージへと変性していった。
それでは原始的な変性する以前の悪魔の姿とはいかなる姿だったのか。
古代悪魔の形容
悪魔の崇拝対象として最も有名な物は、先程も出てきました、19世紀フランスの魔術師エリファス・レヴィが描いた絵「メンデスのバフォメット」です。
両性具有で黒山羊の頭と黒い翼をもつ姿で知られていますが、語源はイスラム教を創始した預言者ムハンマドの古フランス語での綴り (Mohammed) のもじり、あるいは誤記と考えられています。
それ以前、ルネサンス期において、邪悪なるものの造形は、古代ギリシアの森と山に棲む妖精「サテュロス」に重ねられていました。
画像はニンフとサテュロス(ウィリアム・アドルフ・ブグロー(1873))
ほぼ同じような姿なので同一視されていたギリシアの最も古い神々の1人”牧神パン”という獣人もいます。”サテュロス”と”牧神パン”共に共通しているのは、頭に角を生やし山羊の脚。足の先には2つに割れた蹄。
2つに割れた蹄は、邪な存在”「右」(正統)に対する「左」(異端)のものとされた山羊(やぎ)の象徴”
サテュロスとパンも中世では、「淫欲」の象徴とされています。
『牧神パンはやぎ座のもとになった神でもあります。』
やぎ座の説明を読んで笑ってしましました。
ひょうきん者牧神パーンの悲恋
牧神パーンは、山羊のような角が生え尖った耳を持ち、腰から下は山羊のようで足にはひづめがあり、生まれつきオッサン臭いその顔にも、山羊のような髭がモシャモシャと生えた生き物でした。こんな姿のパーンでしたが、とても陽気で愛嬌があり、いたずら好き遊び好きで、山の洞窟に住み、森や谷川のニンフ(妖精)たちを追いかけ回したりして暮らしていました。
(上記画像を思い描きながら読むと、とてもひょうきん者という枠にははまらない変質者のようにみえるのは私だけでしょうか?)
ある時のこと、パーンは女神アルテミスに仕える内気なニンフ、シュリンクスに恋をします。パーンは、いつもニンフたちを追いかけ回すようにシュリンクスを追いかけましたが、カモシカのように逃げたシュリンクスは、とうとう川岸で追いつめられてしまいます。シュリンクスはそこで川の神に祈りました。
「どうか私の姿を変えて、あの者からお守り下さい。」
やっと追いついたと思ったパーンは、思い切りシュリンクスに飛びつきました。ところがその手にしっかり抱きしめたと思って見ると、抱いているのは川辺に生えた葦でした。川の神はシュリンクスの願いを聞き入れて、その姿を葦に変えてしまったのです。
(相当な嫌われようです。やっぱりひょうきん者ではなく変質者との見解が強まりました。)
がっかりしたパーンは岸辺の葦を一本抜き取ると、それを丸めて葦笛にし、いつもそれを吹いては踊っていたのだそうです。それ以来、葦笛のことをシュリンクス(またはパーンフルート)と呼ぶようになりましたとさ。
引用やぎ座の物語
映画『パンズ・ラビリンス』(原題: El laberinto del fauno)では、このパンが上記のイメージとは違いますが出てき重要な役割を果たします。
なかなか面白い映画でしたので興味のある方は是非。
場所によっては医療(魔術)に取り入れられたり
魔術の書物に絶えず記されている五芒星形は、スラヴ系の魔女にも影響を与えています。その魔女達は、患者の身体の「五芒星を測る」ことによって病を治そうとした。病に苦しむ者は立った状態になり「小宇宙としての人間」を表す(大の字型)の姿勢をとり、1本の糸が足からあごへ、両手の中指から中指へ、それぞれの手から反対側の足へ張りめぐらされた。「測定値の差から病気の診断と見通しが行われ、測定したのちにはナイフで麻紐を切断することによって、病が除去された。麻紐の1片は焼かれて、患者はその煙を吸い込んだ。灰は新鮮な水に入れて、患者はそれを薬として飲んだ」
色々と調べてまいりましたが五芒星ですが、はるか昔から守護のしるし、シンボル等に使用するなど、様々な価値を持って使用された五芒星【有名な秘密結社の(矛盾)フリーメイソンも逆五芒星をシンボルの一つとして使用しているとか。)は、調べれば調べるほど新しい事柄が出てきます。
もっと、うまくまとめることが出来れば良かったのですが、悪魔と五芒星のつながりも一応理由付けが出来たと思いますのでひとまず五芒星についてはこのへんで一度終了します。
もっと深く調べたいと思われる方は以下のキーワードからけん引しても面白いかもしれません。
・ピュタゴラス
・フィルミクス・マテルヌス
・タントラ
・estoile
・カッバーラ(カバラ)
・阿部(安倍)清明判紋
・シナゴーク
・伊勢信仰
・金星
・祭祀遺跡 五芒星(画像検索)
・フリーメーソン・グランドロッジ
・イルミナティ
最後のキーワードはオカルトチックになりましたが機会があればまた深く調べてみたい題材でした。
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