https://phenix2772.exblog.jp/9821143/ より
タロットと生命の樹
タロット・カード成立の背景には神秘主義が絡んでいる。特に、中東で萌芽し西欧で隆盛を極めたユダヤ教神秘主義が根底にある可能性が高い。ユダヤ教神秘主義とは、生命の樹を根幹とし、神の叡智を求め、最終的には天界の神と見え、神に近づくことを目的とする深遠なる密儀、カバラ(カッバーラ)のことを指す。カバラにおいて最も重要な要素は旧約聖書を構成する22文字のヘブライ語アルファベットである。それは一種の言霊であり、カバリストたちは文字を組み合わせたり、ゲマトリアを駆使することで、旧約聖書の奥義を知ることができると信じていた。
それはまた、カバラの叡智を凝縮し、その奥義を体系化した「生命の樹」と呼ばれる象徴図形において、10個のセフィロト(神的属性)の間を結び付ける22本の“パス(小径)”として表現されている。この象徴図形は古くは「神のかたち」と名付けられてきた。ゆえに、カバラを探求する者は22本の小径を研究し、その相互関係を把握する、そしてその小径を自由に行き来することで、はじめて神(生命の樹)の真の理解に達することができると信じられてきたのだ。大アルカナを構成する22枚の絵札が、このヘブライ語アルファベット22文字に由来していることは明らかである。
大アルカナは、宇宙を創造した神の言霊であり、その10の力を結合させる小径なのだ。また、22という数字が11の倍数であることに注目すれば、大アルカナは生命の樹を織り成す11個のセフィロト(うち1個は隠されている)をも併せて意味していることになる。すなわち、22枚の大アルカナはそれ自体で、一つの生命の樹を構成しているのだ。では次に、大アルカナと対を成す小アルカナに隠された意味を同じくカバラで解いてみることにしよう。小アルカナは四つの組み札に分かれ、さらに各組札は四つの副次的区分と10枚のカードから成る。
小アルカナにおいて、最も重要なキーワードはこの“4”という数字、あるいは一つの単位である。カバラの歴史において、“4”という数字は宇宙を創生した絶対神の四つの業を象徴していた。すなわち、流出(アツィラー)、創造(ベリアー)、形成(イェツィラー)、活動(アッシャー)の四つの位階(ヒエラルキー)である。それはまた、宇宙創世の際、神が四つの生命の樹を創ったことを表し、この宇宙が四つの階層に分かれていることを示唆している。とはいえ、四つの生命の樹は独立して存在するわけではない。
流出、創造、形成、活動は、そのまま人類の霊的な進化の過程であり、それぞれを一つの段階(位階)として、階段のように天に伸びている。カバリスト(カバラの探求者)が描いた図形の中には、四つの生命の樹が各々のケテルと他の樹のティファレトとを合わせることで一続きに繋がっているものがある。この場合、中央の均衡の柱には、全部で11個のセフィロトが並び、一つの生命の樹が持つセフィロトの数と一致する。これはすなわち、カヴ(雷の閃光)に沿ったジグザグの道ではなく、真っ直ぐに伸びる神の10の段階(ダアトは秘されたセフィロトである)を直接的に上へと昇ることを意味している。
それはちょうど、人が立て掛けられた梯子に足をかけ、一歩一歩上へと上っていくようなものである。人はこれを“ヤコブの梯子”と呼ぶ。イスラエル人の父祖ヤコブは野宿した際、天界へと無限に伸びていく梯子を夢に見た。すると、彼は夢を見た。先端が天まで達する階段が地に向かって伸びており、しかも神の御使いたちがそれを上ったり下ったりしていた。(創28:12)ヤコブの梯子とは人間が天界へと上る、すなわち神へと近づく道程であり、生命の樹の象徴の一つである。神の御使いとは、神の霊の子たち(霊体天使)のことで、直接的には地上で生を受けた人間のことを指してる。
人は皆、生命の樹を上昇しているが、ときに下降(堕落)してしまうこともある。我々は生命の樹を上ったり下ったりしているのである。ここで重要なことは、生命の樹が伸びていく際は、4位階が一つの単位となっているということだ。四つの生命の樹はそのまま神の四つの業、すなわち4位階を意味するが、同時に一つの生命の樹も固有の4位階を内包しており、“神のかたち”を具現化している。生命の樹とは無限であり、4を単位として自己相似的に拡大していく。人が生命の樹を完全に理解したつもりでも、それはより大きな生命の樹に含まれる一つの単位にしか過ぎないのである。
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