ミルトン・モデル

http://nlpfield.jp/post-2459/  より

ミルトン・モデルは、精神科医でもあり催眠療法家の第一人者でもあるミルトン・H・エリクソン(以下、エリクソン博士)がクライアントにアプローチしていた中でも効果の高い言語パターンをまとめたものです。

このミルトン・モデルを学ぶときに言葉の使い方に意識的になってしまいますが、その言葉を使って働きかけるのは「無意識の領域」(気づきがない領域)になります。

エリクソン博士は、そのことを次のように語っています。

「多くの心理療法家は、治療は無意識をいかに意識化させるかで決まるという言葉をほとんど公理のように考えている。

 幼児のときから今までの人生の中で、無意識というものが起きているときも眠っているときも、いかに計り知れぬ大きな役割を果たしてきたか、それを考えるにつけ無意識のしてきたことのほんの一部を意識化することがせいぜいであって、それ以上の期待など持てはしないことがわかる。

 さらにまた、意識に移し変えられていない無意識は、そのままの形で心理学的機能の不可欠な要素を構成しているであろう。」

相手の無意識にいかに言語を通じて働きかけるか、この様々な創造的な営みがこのミルトン・モデルとしてまとめられています。

(ただし、エリクソン博士の業績はこれが全てではありません。エリクソン博士の卓越したポイントを言語パターンという角度でまとめたものになります。)

さらに、あなたに理解して欲しいことは次のことです。

この後ご紹介する言葉の構造も重要ですが、ミルトン・モデルを実践するためには言語以外に非言語も同時に使うことのできる能力がより重要になります。

ここでいう非言語の力が、相手をよく観察する力であったり、話すときの間であったり、言葉のイントネーションであったり、様々な要素が絡んできます。

ミルトン・モデルが実践できようになると・・・

ミルトン・モデルを実践できると優れたコミュニケーションになります。

1)ラポール形成に、ミルトン・モデルは効果を発揮します。

ラポールを生み出せることで、安心感とお互いへの信頼感が醸成され、両者の中に同じ世界を感じれるような一体感がうまれます。

一体感を生む方法は、まず相手の言語や非言語に合わせていくことです。

そして、目に見える相手の使っている感覚に合わせていき、目に見えない相手の可能性(リソース)や価値観に着目していくことです。

こうしてラポールが築けるとお互いの心に橋がかかり、お互いの地図を理解し感情を共有しやすくなり、意識と無意識の交流が始まります。

特に、この無意識が交流できる場こそが、催眠的な関わり方や卓越したコミュニケーションが実現できる場です。

相手の批判的であったり分析的である意識の働きが静かになり、無意識過程に生じるかすかで、すばやい動きをキャッチできるようになります。

2)無意識からリソースが生み出しやすくなります。

ミルトン・モデルはお互いが通常のコミュニケーション(意識的なコミュニケーション:分析的であったり批判的であったりする)でも、相手の無意識にあるリソースにアプローチすることは可能です。

しかし、ラポールが形成され無意識が交流できると、最大限に効果を発揮します。

エリクソンはこのように述べています。

「変化は治療者よりも、患者の内側から生じる」

患者の内側とは、いうまでもなく「無意識」のことであり、その中でまだ気づいていない「リソース」なのです。


ミルトン・H・エリクソン博士ってどんな人?

1901年に、アメリカの農夫の子として生まれたエリクソンは、17歳の時にポリオに襲われ、動けない身体になりました。

しかし、医者から死の宣告をうけてもくじけずに、学生時代は、不自由な身体で、カヌー一人旅を決行するほどでした。

さまざまな身体的な障害を抱えて車椅子で生活することも多かったのですが、そんなことに言及しても意味がないように思えるほど不屈の努力の人でもありました。

「車椅子でないみなさんは、気の毒です。階段を一段ずつ上り下りしなくてはいけないのは、お疲れでしょう。」

というほどでした。

握手をしただけで、相手を催眠に誘導してしまうような神業のような技術を駆使したり、たった一言で患者を治してしまうような反面、必要とあれば、容赦なく相手の聴きたくない言葉をかけたり、忍耐強く何年も時間をかけて治療したとも言われています。

常に、クライアントを一人の個人としてみることを強調していました。

「あなたが何をし、何を言ったかではなく、患者が何をし、何を理解したかを学ぶべきです。」

ぜひ、ご興味のある方は本やDVDなどがたくさん出ているので、ご覧になってください。


ミルトン・モデルを利用するときの姿勢について

何か新しいことをしてみたい、と思ったとき、私たちの気づいていない意識のどこかで自分を止めるように感じることがありませんか?

そうしたとき、私たちは、その止めるような働きを取り除こうとしたり、そんなことを感じる自分はまだまだだ、と罰したりすることがあります。

しかし、エリクソン催眠以降では、無意識は本来、その人にとって役に立つもの、可能性であり、財産であり、その人を守ろうとしているものや少なくとも役に立とうとしているという前提があります。

「良い、悪い」を評価したり分析したりしているのは「意識」の働きです。

そのため、「意識」は無意識の働きを取り除こうということにエネルギーを使います。

しかし、先ほどの前提から、その人の無意識に接近し、自分を止めるように感じている奥にある、無意識の肯定的な目的(意図)に触れて、むしろ味方になって働いてくれるようにサポートしていくことがポイントになります。

これを行なっていくと、あなたはきっと無意識というのは、知恵の宝庫だということに気がつくでしょう。

これについてエリクソン博士は、次のように言っています。

「患者が面接に持ち込んでくるものは常にそれが何であろうと利用するように心がけなくてはなりません。もし、患者が抵抗を持ち込んでくるのならその抵抗に感謝すべきです。患者がしたいようにそれをどんどん奨励して抵抗を山積みにさせればよいのです!」

「患者の行動は、診察室にもちこまれた問題の一部である。それは、その中で治療が効果を持たなければならないような個人的な環境を構成しているのである。また、患者と医者の関係の中で重要な推進力になるかもしれない。」


ミルトン・モデルの特徴は?

相手の無意識からのリソースを活性化させ、その人の力で意識に答えを導かせ、人の持つ気づきや本来の言語を形成する自然な力を促進するサポートをするためのものなのです。エリクソンが発する言葉や問いは、深い意識に入り、これまでの体験などから答えを創り出さないと答えることができません。こうしたことは、すべて無意識のレベルで行なわれます。意識では、この仕事は時間がかかりすぎるのです。

このプロセスは、無意識が今までとは違うレベルで物事を捉える働きをし、リソースに対する気づきが生まれてきます。連想ゲームのように、全く関係ないものを結びつけるのは無意識の働きなのです。

具体的な例を挙げてみましょう。

「ガラスが割れた」と聴けば、あなたは何を連想しますか?

誰が壊したのか?

どんな理由か?

どこで?

いつ?

どんなもので?

などなど

いろいろと問いかけが頭の中にめぐりませんか?

そして、自らのイメージや記憶の中、他の人に尋ねるなどして、さまざまなことで答えや意味を見つけ出そうとします。

無意識は、それを勝手におこなってしまうのです。

クロスワードパズルをみたら、解かずにはおれないような感じです。

意識は、、、、その結果を受け取るだけなのです。

「人ができるということは、本当に驚くべきものがあります。人は自分がなにができるかを知らないだけなのです。」


ミルトン・モデルを実践してみよう!

例えば、あなたが何か悩んでいるときに「あなたの中にある、その感じ、、、その感じには、大切な価値観をないがしろにしたことのメッセージがあるといわれていますが、どんなメッセージかわかりますか?」と言われたとき、あなたの内面にどんなことが起こるでしょうか?

1)ここでいう「その感じ」とは受ける人それぞれによって違いますね。

このような「あいまいな」表現は、相手がどんな感じを持っていても承認されたように受け取れます。

2)「その感じ」が「ないがしろにした価値観」と「メッセージ」を結び付けられています。

それが、あたかもそれが真実のように引用されていますが、本来は、「その感じ」と「価値観」や「メッセージ」は関係あるかもしれないし、ないかもしれません。

3)「メッセージがある」ということが前提になっています。

私たちは、メッセージがあることに対してあまり疑問を持ちません。私たちの意識はどんな内容だろうと探求をしていくことの方が多いようです。

4)一見、この問いは、「はい」か「いいえ」を答えるように見えますが、私たちの内面ではそれ以上のものを答えるように導かれています。このように言葉が心にどのように働きかけるかに興味を持つと、ミルトン・モデルやNLPの世界はとても奥行き深くなってくるように感じませんか?「彼が本当に興味を持っているのか問いただし、自分の衝動を吟味させ、心から望んでいるものは何か考えさせるでしょう。」

基本的な原則です。

1.肯定的な表現をします。

「青い龍が空を飛ぶのを考えないように」というと、人は「青い龍が空を飛ぶのを考え」という言葉に反応して、内的な体験(イメージや音等)を創りだします。

そして、その後に「ないように」といわれるとそれを打ち消す行為をしていきます。

つまり、無意識は「ない」ものを捉えることができません。

そして、私たちは内的に体験したことは、一瞬のうちに身体へと影響を起こします。

そのため、「緊張しなくていいのよ」というよりは、「今は、リラックスできないの?」とか「呼吸をゆったりしていくとリラックスしてくるのを感じることができるよ」と表現したほうが、こちらの意図は伝わりやすくなるでしょう。

2.文章の中に役立つ前提を使う。

前提とは、聞く側が当然と受け止めて意識せずに了承してしまうことです。

「この文章で難しいとあなたが思うところは?」

と尋ねれば、

「この文章には、難しいところがある」

ということが前提となっています。

もし、

「この文章で、理解しやすいところはどこですか?」

と尋ねれば、

この文章に理解しやすいところがあることを認めることになります。

「NLPを学んだあと、この文章を読むとどれくらいよくわかるようになりましたか?」と尋ねると、NLPについて、理解が以前よりよくなっているという前提になります。

このように、相手に内的な体験をしてもらいたい文章を使うことが大切なのです。

3.可能や許容的な表現を使う。

義務を表す言葉があります。

例えば、

「あなたは、ここでは静かにしなければならない。」

といわれると、聴き手にどこか脅迫感や抵抗感を生み出します。

しかし、

「あなたは、ここでは静かにできる」

とか、

「静かにできるかもしれませんね」

という許容的な表現を使った場合、選択と機会(チャンス)の感覚が内側から生まれることがあります。

4.「原因と結果」や「異なる事柄の同一視」(等価の複合観念)を利用する。

「原因と結果」は、Aが原因で、Bとなった。

「異なる事柄の同一視」とは、Aは、Bを意味する。

例えば、すでに事実として起こったことや相手が当然と感じていることと、こちらが期待していることをつないでいくことから始めてみてください。

「前回、コーチングを学びましたから、このNLPを理解することも簡単にできるでしょう。」

「言葉が私たちの地図から生まれるのであれば、今日学ぶことがどんなに簡単なことかわかるでしょう。」

「ここで学び、仲間と体験をシェアすることが、あなたにもっと自信をつけることになります。」

まずは、ここまでの4項目を押させておいてもらえればOKです。

もっとミルトン・モデルを使いこなしたい方へ

次の点に着目していきます。数が多いことはあなたにさまざまな選択肢を提示できることになりますね。

相手を観察しながら活用してみよう!

抽象的な言葉やあいまいな言葉を使ってみよう!

許容的な表現を活用してみる!

接続詞を効果的に活用しよう!

疑問文を効果的に使おう!

形容詞や副詞を上手く使おう!

完了形や進行形をどんどん使おう!

否定的な文章を肯定的に活用しよう!

どちらを選んでもOKな選択肢を作ろう!

関係ない文章をつなぐ最適な方法。

因果関係を上手く活用してみよう!

新しい創造は混乱を通して生まれる!

言葉で仕分け上手になろう!

一般的なことを特定の個人に伝える方法

数を使って次のイメージの枠を作る

何か意味合いを含んだ言葉とは?

文頭の表現に工夫をつけてみよう!

言葉の内容で伝えるのではなく・・・

メタファーが変化をもたらす3つの効果

相手を観察しながら活用してみよう!

ここでの原理は

「相手が内面の世界で『今、体験していること』の反応を観察して、その人が、それはそうだ、と自然に反応できるようにこちらの行動や言葉を変えていく」

ということです。

そのための特有の言葉の使い方があります。

相手が自分の世界と出会っていく状態(ダウンタイム)に導くためには、相手の呼吸に合わせながら、ゆっくりしたテンポで、柔らかい声の調子を使い、無意識に同調できるようにしていくのです。

こうすることでラポールが築けたら、言葉でさらに強化していきます。

言葉の内容は、相手の世界で感じていることを伝えるだけでいいです。

なぜなら、人は自分の内的体験にあっていれば安心感が得られ、相手の言っていることが正しいと確認できると無意識的に、相手に信頼を寄せるようになるからです。

1)現在のその人のいる感覚的経験を言葉にします。

「今、パソコンの画面が目に入ってきますね。そして、周りからいくつかの音が耳に入ってくるかもしれません。そして、呼吸でわずかに胸が動いていることを体験できるでしょう。」

とその場で見えているもの、聞こえているもの、感じているものを順番に伝えていくと、意識は特に反論もないため静かになり無意識領域に近づいていきます。

2)相手の未来や過去にあった体験を言葉にします。

「あなたはどこかでNLPを知りたい、もしくは学びたいという気持ちがありましたね。その気持ちが今、こうして画面から何かを手に入れることに導いています。そして、それはあなたがまだ気づいていない豊かな未来へをどのように実現しようかという想いを考え始め行動し始めた合図かもしれませんね。どうでしょうか?」

と、相手をよく観察したり洞察することで、生まれてきたことを言葉にしてみることです。

コミュニケーションを行なうといつも自分のペースに相手を合わせようと悪戦苦闘しますが、自分が相手のペースにあわせて言ったほうが効果的であることをエリクソンは教えてくれているのです。