「図」と「地」とその反転

https://awarenesscare.secret.jp/sub06/sub061801.html 【ゲシュタルト療法】より

フレデリック(フリッツ)・パールズはドイツ人です。頭が良く、個性的で、自我がしっかりしていて、気むずかしい人です。だから、私は好きです。アメリカに渡って、ゲシュタルト療法を広めました。ゲシュタルト療法はゲシュタルト心理学に実存主義が加えられています。ゲシュタルト心理学そのものではありません。

ゲシュタルトとは、ドイツ語で、「姿、形」という意味です。しかし、ゲシュタルト療法では、「図」と「地」からできる全体として機能する一つの単位を示します。

左の図は有名な「ルビンの壷」です。「二人が向かい合っているところ」か、「壷」が見えます。 壷と二人が同時に見えることはありません。

壷が見えるときは、壷が「図」になり、周りは「地」です。二人が見えるときは、二人が「図」であり、ほかは「地」です。「図」と「地」が存在するので、壷や顔が見えます。

しかし、壷を「図」として見る時には、顔という「地」は見えません。顔を「図」として見るときには壷という「地」は見えません。

 このように人間は、注意を向けている「図」は感じられますが、その対象を浮き上がらせる「地」は感じられなくなります。

 上に述べたのがゲシュタルト心理学です。

 人間は自分が興味のあるものを「図」と認識して、それ以外を「地」と認識します。「図」以外を「地」と認識してしまうと、「地」を意識しなくなります。

同じことが、社会で生活する中でも起こります。

ゲシュタルト療法は、そこで、この「図と地の関係」を、「人間とその周囲の関係」に援用します。

人間は、現在という環境に生きています。

現在(現に存在するもの)の中で注意を向け「感じた」ものだけが、「現実」として認識されています。これが「図」です。

人は「図」の部分だけを意識して生きています。

しかし「現在」には、自分が注意を向けていないが存在する「地」の部分があります。

「現在」には「地」があるから、「図」を認識して意識できるようになっています。

この図と地が一つになって意識され機能したとき、「ゲシュタルトが完成した」と言います。

右のアニメーションでは、白い地が見えることで、図としての人が見えます。「地」がはっきりすると、図の「境界」がはっきりします。

「地」の色が「図」の色に近づくと、図の「境界」はぼやけます。

「地」をはっきりと「感じない」と、自分という存在の「境界」がわからなくなります。

自分という存在を忘れてしまいます。当然、現実と現在がずれて苦しみます。

パールズはこれが神経症の発生だと言います。

そこで、ゲシュタルト療法では、この「図」と「地」をひっくり返して、「感じ」させてあげます。

ロジャースのように気づくまで待ったりはしません。

気づくように、はっきりと介入していきます。

そうして、その人が「図」と「地」に気づき、ゲシュタルトを作り、「全体としての自分」を受け入れられるようになって、生きやすくなるようにします。「グロリアと3人のセラピスト」のビデオを見るチャンスがあれば、是非見てください。勉強になります。


https://newstyle.link/category38/entry692.html  【「図」と「地」とその反転】より

「図」と「地」とその反転について、解説していきます。

ゲシュタルト療法では、「図」と「地」という独特な言い回しを使います。

「図」とは、注意を向けて、焦点を合わせている物事のことであり、「地」とは、それ以外の背景となる物事のことです。

もし、「図」に不快なことや苦痛なことばかりが存在すると、人生は、不快で苦痛なものに感じるようになりますから、「地」に回してしまうということも、場合によっては必要になります。

たとえば、子育てにおいて、子供の間違いや欠点ばかりに目が行き、「図」にマイナスの感情ばかりが存在すると、いつも不快な感情に支配されて、イライラしてしまうようになります。

そのような場合は、「図」と「地」の転換をおこなって、子供の良い点や、長所、うまくいったことなどに目をやるようにして、子供の間違いや欠点は、「地」の方に回してしまうとよいのです。

そうしますと、いつも楽しく子育てができるようになり、イライラしたり、心の病に

陥ったりしなくなるのです。

また、「地」に存在する物事については、クライエントが普段は注目しておらず、

背景としてしか認識していない物事ですが、実際には、「地」に押しやられた物事や

感情エネルギーが、心の病を癒す糸口となることが多いです。

そこで、ゲシュタルト療法では、「図」と「地」を自由に転換できるように、クライエントの心理的な成長を促していきます。

心の病に陥る人は、「図」と「地」を転換することが苦手です。

逆に、心が健康な人は、「図」と「地」を自由に転換することができます。

したがいまして、心の健康を取り戻すには、「図」と「地」を自由に転換できるようになる

必要がありますので、ゲシュタルト療法家がうまく誘導して、「図」と「地」を自由に転換する能力を引き出してあげる必要があるのです。

特に、ゲシュタルト療法家は、抑圧して目を遠ざけている「地」の部分に隠れたエネルギーを非常に重要視します。

そして、心の病のほとんどが、「地」の部分に隠れたエネルギーを「図」に浮かび上がらせて、心理的な気づきを得ることで、解消するものなのです。