粘菌

https://information-station.xyz/8567.html【粘菌とは何か?菌類と動物の能力をあわせ持つ生物としての粘菌と、多数の核を持った一つの細胞から形成される変形体の構造】 より

「菌類と細菌の違いとは?」の記事で書いたように、広義における菌類には、キノコやカビ、酵母といった狭義における菌類である真菌類のほかに、細菌や粘菌といった生物の種族も含まれることになります。

そして、このうち、粘菌(ねんきん)と呼ばれる種族は、生物学においては変形菌とも呼ばれているように、一言でいうと、アメーバ状の生物体を変形させながら、土の中などに存在する微生物を捕食することによって成長していく菌類のことを指して、こうした言葉が用いられていると考えられることになるのですが、それでは、こうした広義の意味の菌類に含まれている粘菌(ねんきん)と呼ばれる生物の種族は、より具体的にはどのような特徴を持った生物であると考えられることになるのでしょうか?

多数の核を持った一つの細胞から形成される粘菌の変形体の構造

冒頭で述べたように、粘菌あるいは変形菌と呼ばれる生物は、普段は、地中や枯れ木の内部などにおいて、アメーバ状の生物体(変形体)を徐々に変形させていくアメーバ運動を行いながらバクテリアなどの微生物を捕食することによって自らの内に栄養を取り入れていくことになるのですが、そうして自らの細胞内に養分を取り入れた粘菌は、やがて、細胞分裂を伴わない核分裂を繰り返すことによって、地中や枯れ木の内部などで薄く広がっていき、一つの細胞の内に無数の核が存在する多核体の細胞質の塊へと成長していくことになります。

こうした粘菌における変形体の成長は、通常の場合は、全長数センチ~10センチメートル程度にとどまることになるのですが、なかには、直径1メートル以上の巨大な変形体を形成するケースもあり、そのような場合でも、こうした巨大な粘菌の変形体の全体は、基本的には、そうした多数の核を持った一つの細胞のみによって形成されていると考えられることになります。

そして、こうした粘菌における変形体の成長が一定の大きさにまで到達すると、粘菌は地上や木の表面へと移動していき、そこで、次世代の生物体の源となる胞子を形成するために、自らの体の一部分を地表へ表出させたうえで、その部分に小さなキノコのような子実体を形成することによって胞子の形成を行っていくことになるのですが、そのようにして形成された子実体から放出された胞子たちが、新たな場所で発芽することによって、そこから新たな粘菌の変形体の成長が始まっていくことになるのです。

菌類と動物の能力をあわせ持つ生物としての粘菌

以上のように、粘菌(変形菌)とは、地中や枯れ木の内部などにおいて、多数の核を持った一つの細胞から形成される変形体を移動させるアメーバ運動を行いながら微生物を捕食することによって自らの体を成長させ、やがて、成長した自らの体の一部を子実体へと変形させることによって、胞子の形成を行っていく生物であり、それは、胞子によって生殖を行う菌類でありながら、単細胞動物であるアメーバのように自らの体を変形させることによって徐々に移動と捕食を行っていく生物でもあると考えられることになります。

以前に、「菌類と植物の違い」の記事で書いたように、もともと、菌類という生物の種族自体が、動物と植物の性質を半分ずつ持った両者の中間に位置する存在であるとも捉えられることになり、あるいは、逆に言えば、いまから35億年ほど前の太古の昔に、動物も植物も、細菌や菌類のような存在から互いに分化していくことによって、現在の地球上の生態系における動物と植物そして菌類といった生物の諸系統が成立していったとも考えられることになるわけですが、そういう意味では、粘菌とは、胞子によって生殖を行うという菌類の性質と、移動や捕食を行うという動物の性質の両方を兼ね備えた、両者の中間に位置する菌類と動物の能力をあわせ持った生物であるとも考えられることになるのです。


https://information-station.xyz/8573.html  【粘菌(変形菌)とカビやキノコなどの真菌類を区別する三つの特徴の違いとは?】より

前回書いたように、粘菌あるいは変形菌とは、胞子によって生殖を行うという菌類の性質と、自らの体を変形させることによって徐々に移動と捕食を行っていくという動物の性質の両方をあわせ持った生物であると考えられることになります。

そして、こうした粘菌(変形菌)に分類される生物の代表的な種類としては、例えば、ツノホコリカビや、ムラサキホコリカビといった菌類の名が挙げられることになるのですが、このように、粘菌に分類される生物の種類が「~カビ」という名前で呼ばれる場合がある一方で、「菌類と細菌の違いとは?」の記事で書いたように、粘菌と呼ばれる生物の種族自体は、カビやキノコといった狭義における菌類である真菌類とは異なる生物のグループとして分類されることになるのですが、それでは、こうした粘菌(変形菌)とカビやキノコといった真菌類との間には、具体的にどのような特徴の違いがあると考えられることになるのでしょうか?

粘菌と真菌類の違い①運動機能の有無と捕食機能

まず、粘菌(変形菌)とカビやキノコといった真菌類とを区別する両者の間の主要な相違点としては、前回書いたように、粘菌は、自らの体を変形させることによって徐々に移動と捕食を行っていくことができるのに対して、カビやキノコといった通常の菌類には、そうした粘菌におけるような運動機能は存在せず、一度胞子が発芽すると、そこから成長していく生物体は、基本的には、じっとその場にとどまった状態で成長していくことになるという点が挙げられることになります。

ちなみに、真菌類のなかでも、鞭毛菌類(ツボカビ類)に分類される生物の場合は、胞子において鞭毛と呼ばれる運動性を持った細胞小器官が形成されることになるのですが、こうした鞭毛菌類の場合も、そうした運動性を持った器官が形成されるのは生殖細胞である胞子だけであって、一度胞子から発芽してしまうと、本体となる生物体自体はその場にとどまったまま成長していくことになるので、本体となる生物体自体が移動と捕食の機能を持つというのは、他の菌類においては見られない粘菌においてのみ見られる特異的な特徴として挙げることができると考えられることになります。

粘菌と真菌類の違い②細胞壁の有無と原形質流動

そして、こうした粘菌と真菌類との間の相違点は他にも見いだすことができ、例えば、カビやキノコといった真菌類の細胞は、植物と同様に、細胞膜の外に細胞壁を持った構造しているのに対して、粘菌の細胞には、そうした一般的な菌類に見られるような細胞壁の構造は存在せず、動物の細胞と同様に、細胞膜のみから成る柔軟な構造を持つことによって、原形質流動※を利用した自らの生物体の変形と移動が可能となっていると考えられることになります。

※原形質流動とは、生きている細胞の内部で、核と細胞質から成る原形質が流れるように動く現象のことを意味していて、単細胞動物であるアメーバの運動なども、こうした原形質流動と呼ばれる細胞内部の流動現象が原動力となって行われていると考えられることになります。

粘菌と真菌類の違い③栄養摂取のあり方の違い

また、両者の間には、こうした生物体の構造だけではなく、栄養摂取のあり方についても違いがあると考えられ、カビやキノコなどの真菌類が、動植物の遺体や、木々や虫などの生きた生物体に取り付いて寄生または共生することによって養分を得ているのに対して、粘菌の場合は、バクテリアなどの微生物やカビなどの他の菌類を捕食することによって栄養を得ていると考えられることになります。

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以上のように、粘菌(変形菌)とカビやキノコなどの真菌類とを区別する具体的な特徴の違いとしては、

①カビやキノコといった真菌類は運動機能を持たずに胞子が発芽した場所にじっととどまって成長していくのに対して、粘菌の場合は細胞内の原形質流動を原動力として自らの体を変形させていくことによって移動と捕食を行うことができる。

②真菌類の細胞には植物と同様に細胞壁が存在するのに対して、粘菌の細胞には動物の場合と同様に細胞膜があるだけでその外側に細胞壁は存在しない。

③カビやキノコなどの真菌類が動植物の遺体や生きた生物体に寄生または共生することによって養分を得ているのに対して、粘菌の場合はバクテリアやカビなどの微生物を捕食することによって栄養を得ている。

という全部で三つの特徴の違いを挙げることができると考えられることになるのです。

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