https://www.yamareco.com/modules/diary/990-detail-20396 【北国の植物と生活3 マムシグサの「球根」の味(真似しないでくださいね)】 より
シリーズ第3話は、毒草の「マムシグサ」の仲間です。
花の部分を立ち上げた「茎」に相当する部分の表皮に、マムシの体を思わせるまだら模様があり、おまけに花の部分を内部に包む「仏炎苞」(ぶつえんほう)の形が、蛇がかまくびをもたげたような姿をしています。
こんな姿の野草、たとえ美味でも手が出にくい。
姿ばかりでなく、実際に、マムシグサの仲間(テンナンショウ属)は、どこを食べても毒があります。
それを、数十年の前の時期まで、内地の人々はこの塊茎(球茎)を食べ、アイヌの人々も大事なでんぷん源として好んで食べてきました。
本州では、塊茎(球茎)をすりおろし、水でさらして毒を流し、粉をねって団子にして食べたそうです。(「食べられる野草と料理法」福島誠一、1998年)
アイヌは、熱い灰のなかで塊茎を焼いて、中心の黄色の部分は毒なので除いたうえで、食べてきました。(「私の草木漫筆」)
それだけポピュラーに食べられてきた野草ならばと、私も、ちょこっと味見してみました。
まず、指で断面をなでて、その指を舌でなめてみました。無味です。(ほんとは、ここで、10秒待てばよかった )
次に、ちょっと大胆に、舌先で断面をひとなめしました。3秒後、口の中に濃いアク(灰汁)のような味が広がりました。
「ああ、これがマムシグサの生の塊茎の味か」と、想定の範囲の反応ということで、おしまいにしようと口をすすぎにかかりました。
6秒から8秒してから、塊茎の断面に接触した舌の部分、せいぜい1円玉くらいの面積の部分に、強い辛味が現れました。
辛味は、やけどのような熱さと、ついには痛みに。
食べないし、ちょっとなめるだけ、うがいもすぐするし、と油断したのが大失敗。
なんどもうがいをしたけれど、舌のその部分に毒がすり込まれたようで、まったくうがいは効果なし。
猛烈な熱さと焼けるような中ぐらいの痛みが、20分。
舌が渇くと熱い。水を口にずっと含んでいないと、たまらない。
30分たってようやく、痛み、熱い感触がおさまりだしましたが、舌のその部分に何かすり込まれた感じ(麻痺のような感触)は、5時間たってもまだ残りました。
サポニンが毒成分の主役とされています。これは微量でも危険な相当な毒です。
誤ってマムシグサの仲間の赤い実をかじってしまった小学生が、口中を腫らして苦しんだ、というほどの毒。
アイヌは、その麻痺の作用を知っており、毒矢にトリカブトとともに、マムシグサの仲間の塊茎の毒を混ぜ込んで、使ったそうです。
それを毒抜きして食べる、昔の人の知恵、食糧を得ることの厳しさを思いました。
北海道にはテンナンショウ属のうち、コウライテンナンショウ、ヒロハテンナンショウなどが分布しています。直行さんの本では、「エゾテンナンショウ」と書いています。これはコウライテンナンショウと同種とされます。
北海道のマムシグサの仲間は、本州のものにくらべて塊茎もとても大きくなるそうです。
テンナンショウ属は全国に様々なタイプがあり、ほんとに覚えにくい。写真のものは、マムシグサとして分類されるものと思います。
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