積石の意味

石を積む月の光となりにけり 

https://news.livedoor.com/article/detail/18435341/ 【神社などにある積石の意味とは?宗教史研究家に聞いてみた!】 より

神社に行った際、そこかしこに大小の石が積み上げられた「積石」を見たことがあるだろうか。

積石は、いわゆる「パワースポット」と呼ばれる場所や、山道などでも見かける。「教えて!goo」にも「神社などにある積石について」という質問がよせられており、改めて掘り下げてみようと思う。

そこで今回は、日本宗教史研究家である渋谷申博さんに、神社などにある積石について話を伺った。

積石の起源は?目的は?

そもそも石を積み上げる行為は、何が理由ではじまったのだろう。

「積石は、石の信仰の一種です。石の信仰というと磐座(いわくら)のような巨石信仰が注目されますが、石を積み上げて塚を作る行為も古くからみられます」(渋谷さん)

「石」そのものを信仰しはじめたことが「積石」のルーツのようだ。次に、積石の目的が何なのか教えてもらった。

「積石をする目的は『神を祀る』ことと、『死者の追悼(鎮魂)』の2つです。前者には、ムラなどに災厄・悪霊が入り込まないようにする道祖神の意味があります。道祖神は男女の性器を思わせる石であることが多いのですが、積石も見られます。島根県松江市東出雲町揖屋の黄泉比良坂にある塞の神(道祖神)などがその例です。この世とあの世の間にある三途の川の河原を『賽(さい)の河原』と呼びますが、これも元は『塞の河原』で死霊が現世に戻ってこないように防いでいる場所とする説があります。言うまでもなく、河原は小石が一面に広がった場所です」(渋谷さん)

海外でも同じような風潮がみられるという。

「ヨーロッパのケルン(ケアン)にも、類似の習俗があった可能性があり、山岳での死者供養のために積石が作られることがあります。白砂などを円錐形に盛り上げて神の依り代とする、立砂(上賀茂神社など)に通じる信仰といえるでしょう」(渋谷さん)

道祖神の存在は知っていても、その一種に積石があることはあまり知られていないのでは。

<黄泉比良坂の塞の神>

「『死者の追悼(鎮魂)』の例も数多く見られます。霊地の積石(特に賽の河原と呼ばれるところのもの)はこれになります。ちなみに、仏教民俗学者の五来重氏は洞窟に死体を納め、その入口を石で塞いだのが起源と考えているそうです。この習俗が仏教と結びついて、子どもの霊が賽の河原で石を積むという信仰が生まれました。子どもの霊が石を積むのは、早世では親不孝とされたので、その罪をあがなうために石で仏塔を建てている。つまりこの場合は、本来の死者供養のための行為が逆転しているのです」(渋谷さん)

なお、神社境内の積石の中には旅行者などが勝手に積み上げているものもあるそう。みだりに真似をして石を積む行為はよくないこととされており、九州の某神社では、見つけ次第壊しているという。

■積石で有名な場所

最後に、日本各地の有名な積石スポットを紹介してもらった。

「積石の例としては、恐山(青森県)、月山(山形県)9合目の賽の河原、木曽御嶽山(長野県)の賽の河原など、たくさんあります」(渋谷さん)

<恐山>

かの有名な恐山が、積石の習俗が残る代表的な場所だったとは驚きだ。御嶽山も山岳信仰で有名な場所だ。

あまり意識したことがなかった「積石」に、こんなにも深い意味があったことが今回の取材でわかった。その反面、本来の意味とは関係なく一般人が何気なく石を積んだものも存在する。素人には、それが本当の積石かどうかを見分けることは困難だろう。今度、積石を見かけたときには、その場の神職の人にその積石理由を尋ねてみるとよいだろう。

専門家プロフィール:渋谷 申博(しぶや のぶひろ)

1960年、東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒。日本宗教史研究家。『0からわかる神道のすべて』(三笠書房)、『絵図解 よくわかる 日本の神社』(KADOKAWA)、『諸国 一宮・二宮・三宮』(山川出版社)、『歴史さんぽ 東京の神社・お寺めぐり』『神々だけに許された地 秘境神社めぐり』『聖地鉄道めぐり』『一生に一度は参拝したい 全国の神社めぐり』(以上、GB)ほか著書多数。よみうりカルチャーなどで神話をテーマとした講座も開講している。


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