https://wired.jp/2009/10/02/%e6%9c%80%e5%8f%a4%e3%81%ae%e3%80%8c%e4%ba%ba%e9%a1%9e%e3%81%ae%e7%a5%96%e5%85%88%e3%80%8d%e3%81%af%e3%83%ab%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%83%bc%e3%81%a7%e3%81%af%e3%81%aa%e3%81%8f%e3%82%a2%e3%83%ab%e3%83%87/
【最古の「人類の祖先」はルーシーではなくアルディ(ラミダス猿人)
440万年前のラミダス猿人の全身骨格などが再現された。これまでの説を覆す画期的研究だ。】より
Science』誌10月2日号、ラミダス猿人の化石人骨『アルディ』――『アルディピテクス・ラミダス』[ラミダス猿人の英語名]から取った愛称――に関する論文を多数取り上げている。
[1992年以降エチオピアで発見された諸化石から全身像などを復元した研究者グループによると、]アルディは、人間という種族に属する最初の猿人だと認められた種の有名な化石人骨『ルーシー』より100万年以上も前に、直立歩行をしていた可能性があるという。
「人類の最初の祖先」という地位は今やルーシーではなくアルディのものとなったわけだが、これは、人類の系図を表面的に書き換えるだけでは済まない。ルーシーの発見以来、人類の起源はサバナ[疎林と潅木を交えた熱帯草原地帯]にあるとされてきたが、アルディは森林地帯に生息していたと見られる。さらに、科学者らはルーシーの骨格から、人類と他の類人猿の最後の共通祖先はチンパンジーに似たものだと判断していたが、アルディの発見で、そうした判断は否定されることになる。
アルディなどのラミダス猿人は、ルーシーなどのアファール猿人(アウストラロピテクス・アファレンシス)より前の時代のものだ。ルーシーの祖先の一部は数百万年前に枝分かれして1つの種族となり、現在はチンパンジーやピグミーチンパンジーとなっている。ラミダス猿人がすべてのヒト科の動物の起源ではないとしても、のちに人間となったヒト科の動物の起源だという可能性はある。
ダーウィン以来、ほとんどの科学者は、人類、チンパンジー、およびゴリラの最後の共通祖先を「チンパンジーに似たもの」と推測していた。チンパンジーのDNAが人間のDNAと99%一致し、チンパンジーがルーシーの骨格的特長の多くを持っていたことが、こうした考え方の裏付けとなっていた。
しかしラミダス猿人は、チンパンジーの典型的な特徴(オスが持つ大きな犬歯など)をほとんど持っていない。これは、チンパンジーに見られる非常に攻撃的な社会的行動を、ラミダス猿人が早い段階で行なわなくなったことを示していると研究者らは言う。[犬歯の縮小は人類の大きな特徴とされる]。こういったことは、チンパンジーや大型霊長類には、ヒトと枝分かれしてからかなりの変異が起こったことを示している。
[ラミダス猿人の化石を最初に発見し、今回の研究にも参加している諏訪元・東京大教授によると、「チンパンジーは、樹上では懸垂運動をし、地上では前肢の中指を地面に付けて歩くが、ラミダスにはそうした特徴の名残はなく、チンパンジーとは相当異なった祖先から進化したようだ」という]
「これまでの研究ではアウストラロピテクスを、サルに似た先祖と初期のヒトをつなぐものと見る傾向が強かったが、ラミダス猿人はこういった推定を覆すものだ」と、ケント州立大学のC. Owen Lovejoy氏は『Science』論文で述べている。
https://www.nhk.or.jp/co-pro/recent/20100710.html 【発見!ラミダス猿人 ~440万年前の“人類”~】より
アメリカの科学雑誌サイエンスが発表した2009年最大のニュース。それは、アフリカ東部エチオピアで発見され、復元された猿人の化石、「アルディピテクス・ラミダス」(ラミダス猿人)だった。 その発見は、人類がどのような足跡をたどってきたのか、これまで謎とされてきた部分に光を当てるものだった。
ラミダス猿人は1992年、エチオピアのアファール低地で、東京大学の諏訪元教授らを中心とする国際調査チームによって発見された。以来、チームによる大規模調査で百数十点の骨の化石が見つけられ、10年という時間をかけて慎重に解析・復元が行われた。この解析作業では、東京大学のマイクロCTスキャンの技術が大きな力を発揮した。地層の分析から、この猿人は約440万年前に生きていたことが判明。性別は女性で「アルディ」と名づけられた。これは「ルーシー」の愛称で有名なアウストラロピテクスから、人類の進化の系統樹をさらに100万年以上さかのぼるとされている。
復元されたアルディは、ルーシーより大きくチンパンジーに近い。しかし、チンパンジーとは違う特徴を持っていた。それは、人類を他の動物と区別するある決定的な特徴、すなわち「直立二足歩行」をしていることだった。番組では、国際調査チームが、この大発見を突き止めるまでのプロセスに密着取材。その経緯を克明に追い、人類史研究の上での位置づけを、諏訪教授へのインタビューも交えてわかりやすく伝える。
https://imidas.jp/hotkeyword/detail/K-00-303-09-10-H003.html 【アルディ/ラミダス猿人 】より
人類の全身骨格としては最古とみられる約440万年前の成年女性骨格の愛称。学名アルディピテクス・ラミダス(ラミダス猿人、あるいはラミドゥス猿人とも)からこの名が付けられた。諏訪元(すわ・げん)東京大学教授らの国際研究チームが、エチオピア北東部アファール地溝帯で発掘した化石から全身骨格を復元。それを基に研究した生態を2009年10月2日付のアメリカ科学誌サイエンスに発表した。それによると、身長120cmで体重は約50kg。脳の容量は300~350ccと、小ぶりなチンパンジー程度で現代人の4分の1くらい。チンパンジーより原始的だが木登りに適した手があり、一方で、二足歩行が可能な足や骨盤の構造を持ち、果実や昆虫も食べるなど雑食性が高いこと、顔も小さいことなどヒトに近い特徴もあった。体格の男女差はあまりなく犬歯も小さいことから、男性の攻撃性は低いとされる。これまでの最古の全身骨格は約320万年前で、それを100万年以上も更新。また、ヒトとチンパンジーはDNAの塩基配列の99%近くが同じで、600万年以上前に共通の祖先から分かれたとされるが、共通の祖先自体は見つかっていない。ラミダス猿人は、共通祖先の特徴を多く保持していると思われ、人類の歴史の大きな手がかりとなる。
https://www.y-history.net/appendix/wh0100-07.html 【アフリカのエチオピアで発見された最古の化石人類のひとつ。約450万年前に存在し、直立歩行していた。学名はアルディピテクス=ラミダス。】より
最古の化石人類の一つ
ラミダス猿人「アルディ」の想像図(朝日新聞 09.10.2)
ラミダス猿人アルディの想像図
(朝日新聞 09.10.2 による) 1994年、アメリカのホワイト(カリフォルニア大学バークリー校)、日本の諏訪元(東大)などがアフリカのエチオピア、アワシュ川中流で発見した、約450万年前の猿人の一種。1990年代にはこれが最古の化石人類とされていたが、2000年代に入り、さらにさかのぼる化石人類の発見が相次いでいる(人類の出現年代の項を参照)。ラミダスとは、現地の言葉で「根(ルーツ)」を意味するという。学名はアルディピテクス=ラミダス。
発掘された歯などから犬歯が退化した(ということは明らかにサルとは違う)ヒトの化石であると判明した。この化石は1994年の英国の科学誌『ネイチャー』に発表され、当時として最古のアウストラロピテクスに先行する化石人類と認定された。ただし腰骨や脚の骨が未報告であるので直立二足歩行には疑問もあるとされている。(下の記事参照) → 人類
Episode 日本人学者が発見したラミダス猿人
化石ハンター諏訪元氏は東大からカリフォルニア大学に留学、ホワイト教授の下で古人類学の研究に従事し、アフリカのエチオピアでの調査団に加わった。1992年12月13日、アワシュ地方の荒野を歩き回っていた。エチオピア人の化石発見の名人アスフォーがサルのあごがあったというところだ。地表を探し回る。探すときはイメージした化石の他は目に入らないそうだ。そのとき歯の根のようなものが目に飛び込んできた。息をのんでよく見ると明らかにヒトの大臼歯だった。留学中の10年以上、あらゆる時代の歯を見続けた諏訪の目には疑いはなかった。現場の地層は500万年から400万年前とわかっていたので、これがその時点での最古の人骨の発見となった。諏訪氏は現在は東大総合研究所博物館助教授。<『われら以外の人類』内村直之 朝日選書 2005年 p.36>
NewS ラミダス猿人の最新情報
ラミダス猿人の全身骨格が復元された。2009年10月、諏訪元教授らのグループは、ラミダス猿人の化石から全身像を復元することに成功したと発表した。約440万年前の個体で、「アルディ」の愛称が付けられた。彼女は、身長120センチ、体重50キロ、脳の大きさは300~350ccでアウストラロピテクス(500cc程度)よりは小さくチンパンジーよりに近い。森で暮らし、木登りする一方で二足歩行も可能だった。これまで全身に近い人類骨格は「ルーシー」の愛称を持つ約320万年前のアウストラロピテクスのものが最古だった。右上はそのラミダス猿人の想像図。朝日新聞 2009年10月2日付朝刊
アルディピテクス=ラミダスの特徴
アルディピテクス=ラミダスの化石は、エチオピアの約440万年前の地層から多数見つかっている。アルディピテクス属に含まれる化石としては、同じくエチオピアで見つかったアルディピテクス=カダッハがある。これらは化石人類の中で、約700万年前に現れたサヘラントロプス=チャデンシスに次ぐもので、約420万年前に現れるアウストラロピテクスに先行している。アルディピテクス=ラミダスはその骨格から直立二足歩行していたと思われるが、次のような特徴がある。
土踏まずがない。土踏まずは現生人類にはあるがチンパンジーにはない。かれらは歩いてはいたが、あまり上手ではなかったと考えられる。
足の親指が大きく、他の4本と向かい合わせにしてものをつかむことができた。足でも枝をつかめた。
腕の長さは脚の長さに較べ、チンパンジーやゴリラより短く、ヒトよりは長い。
骨盤の上部の腸骨はヒトと同じく幅が広いが、下の座骨はチンパンジーと同じく上下に長い。
これらから総合すると、アルディピテクス=ラミダスは直立二足歩行はできたがヒトより下手で、木登りは得意だったがチンパンジーよりは下手だったと考えられる。同時に出土する動物化石を分析すると、彼らが生活していた舞台は、森林と草原の双方が近くにある疎林であったことがわかる。<更科功『絶滅の人類史―なぜ「私たち」は生き延びたか』2018 NHK出版新書 p.45-51>
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